ジェシカ・シェパード (アシュリー・ジャッド) はサンフランシスコ警察署で、女性として初めて殺人課の刑事に抜擢される。やはり刑事だったジェシカの父は、昔、母を射殺して自殺していた。そのせいかジェシカは捜査に関して行き過ぎて容疑者に過度の暴行を加える嫌いがあり、また、寂しい気持ちを慰めるため、ちょくちょくバーで男を引っかけては一度限りの情事を持っていた。ジェシカは新しい職場で、デルマルコ (アンディ・ガルシア) とパートナーを組まされる。折しも連続殺人事件が起きるが、被害者は皆、かつてジェシカが一夜を共にした男たちばかりで、しかも事件のあった夜はいずれも、ジェシカは飲み過ぎで倒れ、記憶をなくしていた‥‥


__________________________________________________________________


本当はこの映画、見ようか見に行くまいか迷ったのだ。いくら私のひいき女優の一人であるアシュリー・ジャッドが主演しているとはいえ、最近の彼女のスリラー系の主演作はどれも大同小異で、はっきり言って、新作だからといって特に惹かれる要素があるわけではない。つまり、彼女の主演作で、いつもと同じことをやっているということが、そのままコアのファンにはアピールもするが、同時に普通の映画ファンにとっては、見なくても別に構わないという、両方の印象を与えてしまう結果になっている。


今回もまさにその延長線上で、これだけ似たような作品に連続して出られると、さすがに多少なりとも飽きが来る。それがいいと思うファンのために似たような役をやり続けるか、あるいはここらで、同系統の女優でありながら「モンスター」に出て話題をさらったシャーリーズ・セロンのように、世間をあっと言わせる役で心機一転を図るか、今後のキャリアという点で重要なポイントにさしかかっているということは言えるだろう。


ニューヨーク・タイムズは最近のジャッドのスリラー系主演作の近似点を表にしてまとめていたが、それによるとジャッド作品は、だいたい、プロフェッショナルの女性が主人公 (ジャッド) で、必ず彼女をサポートする年上の男がおり、追いつめられる彼女を手助けするということになっているそうだ。なるほど、99年の「氷の接吻 (Eye fo the Beholder)」を別にすると、97年の「コレクター (Kiss the Girls)」から、確かにこの系統は綿々と続いている。しかもその役は、モーガン・フリーマン (2回) やトミー・リー・ジョーンズ、そして今回のサミュエル・L・ジャクソンと、わりと実力派の俳優が多い。特にフリーマンとジャクソンという手だれの黒人俳優を起用している点が、また、いかにもという感じがする。


以上のような理由から、「ツイステッド」の評はすこぶる悪い。別に批評家の評なんか気にせず、自分の見たい映画だから見るというスタンスで映画を見ている私ですら、そこまで面白くないなら見るのよそうかと思うくらい貶されている。そういうことを考えると、セロンが「モンスター」という異質の役に挑戦したのは、結果としてやはりいい方に転んだんだろうなと思える。オスカーもとったし、少なくとも、次セロンがどんな役をやろうとも、観客は、また同じものかなどとは考えないだろう。


で、ほとんど見ない方向で傾きかけていた「ツイステッド」を結局見てきたのは、久し振りのフィリップ・カウフマンの新作ということでもあったからだ。今年から2月はオスカー月間ということもあって、ケーブルのTCMでは過去のオスカー受賞作を連続で放送しているのだが、こないだたまたまチャンネルを合わせたら「ライト・スタッフ」をやっていて、思わずまた夢中になって見てしまった。やっぱり傑作だ。というわけで、カウフマンの新作か、やっぱり見てみようかなと思ったわけだ。


で、見た後の印象で言うと、少なくとも見ている間は面白かったとは言える。冒頭の霧に煙るサンフランシスコの出だしは雰囲気たっぷりだし、それに続くジャッドのアップなんかもわりとよかった。その後に続くアクションは、実はジャッドは本当はアクションができるわけじゃないということを露呈してしまっていたが、とにかく速いテンポでどんどん話が進むので、少なくともサイコ・スリラーものが好きな観客なら退屈はしないだろう。


昔からのジャッド・ファンである私にとっては、ちょっと目尻のあたりに小じわが出てきたところも、逆に年輪を感じさせて好感を持つ理由になってしまったりする。実際の話、ジャッドがワン・パターンものと批判されようともこのような映画に続けて出演できるのも、それなりにそういう役をうまく演じることができるからだ。まだまだおきゃんのセロンのような溌剌さはなくなったとはいえ、昔から切った張ったの演技の後に必ず見せる内向的な心情の吐露なんていうシーンはジャッドの十八番と言えるものであり、やはり本人も周りも、その辺の見せ場は心得ているという感じがする。昔のように胸を露出することがなくなってきたことが残念といえば残念であるが、やはり彼女をスクリーンの上で見ることができるのは、それなりの楽しみの一つではある。


カウフマンの演出がもっとも映えるのは、昔から自分が脚本にもタッチしている場合で、それは「ライト・スタッフ」も「存在の耐えられない軽さ」も例外ではない。たぶん、頭の中でどのように演出するかを思い浮かべながら書くタイプなんだろう。とはいえ別に「クイルズ (Quills)」は悪くなかったが、今回はどちらかというと、ギャラ稼ぎの仕事と割り切って演出に徹したような印象を受ける。これが最初からカウフマンがタッチした企画だったら、もっとジャッドの夜の生活がクロース・アップされて、エロティシズムが増したであろうということはまず間違いあるまい。ジャッドも、昔より肌を露出する機会は減ってきているのに、逆に色っぽさは要求されて、なかなかたいへんだ。


ジャッド以外では、ジャクソンはともかく、ジャッドのパートナーに扮するアンディ・ガルシアは実はそれほど活躍する機会もない。最近、「オーシャンズ・イレブン」「コンフィデンス」と、どちらかというと剽軽な雰囲気をまとう役が増えてきたという印象があり、こちらがそういった気分で見ているからか、今回はわりと真面目な役なのに、なんとなく二枚目半の印象が拭えない。この人、わりとコミカル系の作品に合っているんではないだろうか。







< previous                                      HOME

Twisted   ツイステッド  (2004年2月)

 
inserted by FC2 system