Confidence


コンフィデンス  (2003年4月)

先週の「ザ・グッド・シーフ」に続いて、今週もまた同様のコン・ゲーム・ドラマを見に行くことにしてしまった。他にも話題作はあるんだが、どうしてもこの手の作品に食指が動いてしまう。毎週毎週この手の作品が公開されたら、本当にそういうのだけを見てしまいそうだが、それはそれで望むところでもある。どうしてもメイン・ストリームには乗りきれない性格だと自分でも思う。


根っからの詐欺師ジェイク (エドワード・バーンズ) は、仲間と共にカモを引っかけて小金をせしめるが、それはその筋では知られるキング (ダスティン・ホフマン) の金だった。キングは激昂し、仲間の一人は殺される。ジェイクはキングと直談判に赴き、もっと大きな儲け話を持ちかける。それは外国の銀行を通すマネー・ローンダリングで、新しく紅一点のリリィ (レイチェル・ワイズ) を率いれ、話が軌道に乗り出した矢先、ジェイクの天敵とも言えるFBIのガンター (アンディ・ガルシア) がジェイクの前に現れる‥‥


作品は、冒頭で既に撃たれて死亡したジェイクが、なぜこういうことになってしまったのかを回顧するという倒叙法で始まる。要するに彼はどこかで失敗してしまったのだが、なぜ、どこで、どうして失敗したのかを時間を遡って見せる。監督はジェイムズ・フォーリーで、「摩天楼を夢見て (Grengarry Glen Ross)」や、「悪魔の恋人 (Fear)」みたいに、興行的にはともかく、批評家からはそれなりの評価をもらった作品もあれば、その合間に撮った「天国の約束 (Two Bits)」や「チェンバー (The Chamber)」等、ほとんど無視された作品もある。いずれにしても、彼のこれまでの最高傑作は「摩天楼を夢見て」であることは疑いを入れる余地のないところであり、わりと似たような心理戦やどんでん返し、さらには紅一点が含まれていようとも男のドラマっぽい「コンフィデンス」は、また何かやってくれたような期待がある。評もなかなかだし。


主演のバーンズは、なぜだか本人が自作自演する作品は、デビュー作の「マクミラン兄弟」をはじめとして、コメディ・タッチの恋愛ものばっかりである。実際、わりと甘いマスクしているし、女性ファンも多いだろうとは思うが、彼がきりりと顔を締めると、アクション系の方でも映えそうだなと思っていた。そしたらそう考えていたハリウッドの人間も多かったと見えて、彼が自分の映画以外の作品で起用される時は、だいたいがアクション系だ。「プライベート・ライアン」でスティーヴン・スピルバーグがあの二枚目顔を泥で汚して兵士として起用したのを見た時は、さすがスピルバーグ、わかっていると思ったもんだ。


もちろん彼は恋愛ものでも悪くはないが、それよりもアクション向きだと思う理由は、特にあの声にある。彼の声はハスキーで、まったく甘くない。そのため、甘い恋愛映画だと、いくぶん違和感がある。もしかしたらそれこそがいいという女性も、これまた少なくないような気もするが、今回のようなコン・マンだと、どんぴしゃりである。まったく彼のためにあるような作品だ。


紅一点のリリィに扮するワイズは、これまた媚びるような雰囲気が役柄に合っている。やはりどうしても最も印象に残っているのは「ハムナプトラ」シリーズだが、その「ハムナプトラ」で主演のブレンダン・フレイザーがシリアスものでもなかなかいいところを見ると、コメディをやれる役者はなんでもやれるという昔から言われていることを二人できっちり証明しているようだ。


ダスティン・ホフマンとアンディ・ガルシアというヴェテランは、二人とも力を抜いて好きなように演技している。フォーリーはこういうヴェテランに演技させるのが非常にうまい。なぜなんだろう。「摩天楼を夢見て」でも、出てくる全員が非常に印象に残る演技をしていたが、今回もホフマンとガルシアのよれ具合、キレ具合がとても楽しい。ホフマンのギャングのボス役は、もう少しでギャグになりそうなところで、うまく本当にいそうだな、こんな奴、と思わせることに成功しているし、ガルシアのよれ具合も悪くない。


しかし、こういう二転三転するコン・ゲームを見ると毎回思うんだが、必ず、どこかで100%理解できないところが残る。今回も、話の大きなポイントであるマネー・ローンダリングの方法が、本当に私が理解したようなのでいいのか、ちょっと不安になった。ただ海外の銀行を通しただけにしか見えないのだが、実際にマネー・ローンダリングというものは、基本的にそういうものだというのはわかっているのだが、あまりにも簡単過ぎて、こんなんじゃ足がつくんではと思ってしまう。もしかしたら私は他の大きなプロットを見逃してんじゃあるまいなとも思ったが、小説と違って後戻りできない映画では、自分で理解できる範囲内で次に進んでいくしかない。それでも、やっぱりまたこういう映画を見たいと思ってしまうのだから、我ながら本当にこの手のやつが好きだ。いずれにしても、先週「グッド・シーフ」を見た時にも思ったんだが、作品の最後に登場人物が格好よければ、結局それだけで満足だったりする。







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