ザ・ストレイン   The Strain 

放送局: FX 

プレミア放送日: 7/13/2014 (Sun) 22:00-23:30 

製作: カールトン・キュース・プロダクションズ、ダブル・デア・ユー 

製作総指揮: ギレルモ・デル・トロ 

出演: コーリー・ストール (エフ・グッドウェザー)、デイヴィッド・ブラッドリー (エイブラハム・セトラキアン)、ミア・マエストロ (ノラ・マルチネス)、ケヴィン・デュラン (ヴァシリー・フェット)、ジョナサン・ハイド (L度リッチ・パーマー)、ショーン・アスティン (ジム・ケント)、ナタリー・ブラウン (ケリー・グッドウェザー) 

 

物語: ベルリンからニューヨークのJFK国際空港向け飛行中の旅客機が、着陸寸前になって交信を断つ。旅客機自体は無事空港に着陸するが、機からは呼びかけに対 してうんともすんとも返事がなかった。機内で何かが起こったことは確かだが、物音がしないためテロよりも細菌兵器か疾病の疑いが濃く、CDCのエフとノラ が最初に防護スーツを着て機内に足を踏み入れる。乗客および乗組員は全員死亡していた、と最初は思われたが、うち何人かが息を吹き返す。彼らは着陸前後の ことは何も覚えていなかった。エフとノラは 機内の貨物室から線虫を発見、また、降ろされた貨物の中に土壌の詰まった棺桶のような木箱も見つかるが、それらが事件と関係しているかはわからなかった。 一方、ある男がJFKから棺桶をマンハッタンまで運ぶ仕事を依頼される。倉庫で監視カメラに映っていたその棺桶は、一瞬の間に跡形もなく消え去ってい た‥‥


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The Strain


ザ・ストレイン  ★★★

アメリカのCDC (Centers for Disease Control and Prevention: 疾病管理予防センター) という固有名詞は、これまでは特にTVドラマや映画で耳にする機会があるものではなかった。名前が示す如くCDCの主たる役割は疾病・病原菌管理にあるた めで、FBIやCIAのような花形的機構に較べると、今一つピンと来ない。DEA (Drug Enforcement Administration: 麻薬取締局) やATF (Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosive: アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局) もメイジャーとは言えないが、それでもたまさか耳にすることくらいはある。 
 
近年ではテロや侵略に対する水際で動くCBP (Customs and Border Protection: 税関・国境警備局) やUSBP (United States Border Patrol: 国境警備隊) といった名前も聞かれるようになってきたが、それでもまだ市民権を得るまでには至っていない。CDCともなるとさらにマイナーで、これまで特にCDCの誰かが主要登場人物だったTV/映画となると、
「コンテイジョン (Contagion)」くらいしか思いつかない。 
 
それが現在、CDCがあっという間にお茶の間に浸透する一般名詞として定着してしまったのは、もちろんエボラ出血熱のためだ。西アフリカに端を発するエボラは、あろうことかアメリカに上陸してしまい、自国内での感染を食い止めることのできなかったCDCのお偉いさんは、ここんとこ毎日マスコミや政府から非難の矢面にさらされている。おかげで知名度としてはCDCはFBI、CIA並みになったが、正直言ってあまりありがたい知名度の上がり方ではないだろう。 
 
そして今、 「ストレイン」だ。主人公エフはCDCに勤める職員で、ドクターの肩書きを持っている。妻と息子をなおざりにして仕事してきた結果、今や離婚の危機にい る。それなのに妻、子供同席でのカウンセリングには遅刻し、離婚か子の養育権をとられてしまうかのやばいカウンセリングの席にも、緊急の電話、テキストは関係なく飛び込んで来、エフはそれを受けざるを得ない。その一方でちゃんと同僚の女性とは不倫関係にあるのだった。いや、今、責められてばかりのCDC職員としては、お世辞にも好もしいとは言えない設定だ。 
 
その危急を要するエフの仕事とは、ベルリンからニューヨークのJFKに降り立った旅客機から応答がないことで、物理的なごたごたや武器の使用等の気配がないことから、毒ガスや細菌兵器の使用が懸念された。CDCの出番となり、エフと、同僚かつ不倫相手のノラが、防護スーツを着込んで機内に入る。 

 

そこで二人が目にしたのは椅子に座ったまま絶命している乗客および乗組員、紫外線ライトを当てて見た場合のそこら中を覆う謎の痕跡、そして貨物室の線虫だった。さらに全員死んだものと思われた乗員から数人が息を吹き返す。復活しなかった者は解剖に回されるが、そこで死んでいた者が続々とゾンビ化して立ち上がり始め、解剖医に襲いかかる。一方、空港の倉庫に運び込まれた棺桶のような木箱には土壌が詰め込まれており、どうやら機内の貨物室に残されていた土や虫はそれからこぼれ落ちたもののようだった‥‥ 

 

主人公のエフ・グッドウェザーを演じるのはコーリー・ストールで、現在ネットフリックスの「ハウス・オブ・カーズ (House of Cards)」に準主演級で出ている他、今春は「フライト・ゲーム (Non-Stop)」にも出ていたし、さらに「ストレイン」か。「ハウス・オブ・カーズ」は第2シーズンを製作中のはずだし、「ストレイン」も先頃第2シーズン製作が発表されている。本当に全部出れるのか。 
 

番組クリエイター/製作総指揮は虫に対する偏愛で知られるギレルモ・デル・トロで、そのため話はそれこそ細菌・虫ものかと思わせといて、棺桶とかいう舞台装置が出てきたり一見死者が生き返ったりして、実はどうやらヴァンパイア・ゾンビ系であることがゆるゆると明らかになる。しかもこのヴァンパイアと長年対峙してこれまで封じ込めてきたらしい人間の一族もいる。話はどうやらヴァンパイア・ゾンビ・アクションという様相を呈してきた。 

 

私としては、「ヴァンパイア・ダイアリーズ (Vampire Diaries)」等、CWを筆頭とするティーンエイジャー向けヴァンパイアものにはいい加減飽きており、ゾンビものもAMCの「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」が一人勝ちで君臨している現在、他の番組に出番はないものと思われる。それで「ストレイン」には、いかにもデル・トロ的なファンタジー虫ホラーを期待してた。まあ、あのうじうじして人の体内に潜入する線虫はデル・トロ的と言えないこともないし、「ミミック (Mimic)」では巨大ゴキブリをニューヨークに出現せしめ、「クロノス (Cronos)」ではヴァンパイアの亜種を登場させている。とすると、むしろ今回はデル・トロが基本に立ち返ったと言えないこともない。 
 
しかしデル・トロでは
「パンズ・ラビリンス (Pan's Labyrinth)」を最も愛し、漆原友紀の「蟲師」愛読者の私としては、もうヴァンパイアでなくってさー、それはいいから、と思ってしまうのだった。誰か「蟲師」を英訳してデル・トロに読ませてくれないだろうか。喜んで映像化を考えると思うのだが。











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