The Real Housewives of D.C.     ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・D.C.

放送局: ブラヴォー (Bravo)

プレミア放送日:  8/5/2010 (Thu) 21:00-22:00

製作: ハーフ・ヤード・プロダクションズ

製作総指揮: アビー・グリーンスフェルダー

製作: ショーン・ギャラガー、リッチ・カルデロン

出演: メアリ・アモンズ、リンダ・アーキルシャン、ステイシー・ターナー、キャサリン・オマニー、ミケーレ・サラヒ


内容: ブラヴォーの製作放送する、アメリカ各地の有閑マダムに密着する「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ‥‥」シリーズの最新ヴァージョン。今回はワシントンD.C.在住の5人のハウスワイヴズに密着する。


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基本的に私はリアリティ・ショウをよく見るが、リアリティ・ショウといっても色々ある。様々な勝ち抜きリアリティは趣味さえ合えば見るが、だからといってダンス・リアリティを見るように減量リアリティを見ているわけではない。ダンス・リアリティだって、FOXの「アメリカン・ダンスアイドル (So You Think You Can Dance)」は欠かさず見るが、ABCの「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」には興味を惹かれないなど、それぞれだ。


そういう中であまり熱心に見ないというか、積極的に嫌いなジャンルがある。それが今回の「ザ・リアル・ハウスワイヴズ‥‥」を筆頭とする、素人密着ものだ。私の記憶する限りでは、こういう、ある家庭の中にカメラを持ち込んで日常生活を記録する日常密着型のリアリティ・ショウがジャンルとしての人気を勝ち得たのは、MTVが2002年に放送した「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」が人気番組となって以来だ。


実際「オズボーンズ」は面白かったから、そのことにはなんの異議もない。問題は、番組の成功に倣えとばかり、どの放送局も似たり寄ったりの登場人物の日常密着型のリアリティ・ショウを挙って編成し始めたことにある。特にその大元のMTV、およびその姉妹チャンネルのVH1が大挙して編成した同工異曲の番組は玉石混交、いや、はっきりと石の方が多く、私の意見ではジャンルの弊害ばかりが目立った。今でも「マイ・スーパー・スウィート・シックスティーン (My Super Sweet Sixteen)」を筆頭とするいくつかの番組は、ティーンエイジャーに悪影響しか与えなかったと思っている。現在の人気番組「ジャージー・ショア (Jersey Shore)」を見れば、私の意見に賛同してくれる者も多いに違いない。


ブラヴォーの「ザ・リアル・ハウスワイヴズ‥‥」シリーズは、こちらはティーンエイジャーではなく、金のある有閑マダムたちに密着するリアリティ・ショウだ。そもそものシリーズの嚆矢となった2006年の「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・オレンジ・カウンティ (Orange County)」は、番組タイトルからもわかる通り、ABCの「デスパレートな妻たち (Desperate Housewives)」、FOXの「ジ・O.C.」、およびMTVの「ラグナ・ビーチ: ザ・リアル・オレンジ・カウンティ (Laguna Beach: The Real Orange County)」等の、種々の人気番組のごった煮だ。それらの番組が人気番組となった所以のいいとこどりを目指しているのは言うまでもない。つまり、お金を持っていいとこに住んでいる奥様方が、日常どんなことをしているか、どんなとこに住んでいるかを覗き見したい視聴者の好奇心をくすぐった。


「リアル・ハウスワイヴズ・オブ・オレンジ・カウンティ」は最初から人気があったわけではないが、それでも地道に視聴者を獲得、今ではアメリカ中の暇な奥様連中を対象に下記のスピンオフ・シリーズが製作されるほど、フランチャイズとして確立している。一つだけタイトルの異なる「ベセニー・ゲッティング・メアリード?」は、「ニューヨーク・シティ」で一人だけ断トツに人気のあった、ベセニー・フランケルただ一人に密着する特別編だ。因みにフランケルは、「ジ・アプレンティス: マーサ・スチュワート (The Apprentice: Martha Stewart)」にも出ており、優勝こそ逸したものの、最後の二人まで残っている。



番組タイトル/プレミア放送日

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・オレンジ・カウンティ (The Real Housewives of O.C.)  3/21/2006 (Tue)

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ニューヨーク・シティ (The Real Housewives of New York City)  3/4/2008 (Tue)

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・アトランタ (The Real Housewives of Atlanta)  10/7/2008 (Tue)

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ニュージャージー (The Real Housewives of New Jersey)  5/12/2009  (Tue)

・ベセニー・ゲッティング・メアリード? (Bethenny Getting Married)  6/10/2010  (Thu)

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ワシントンD.C. (The Real Housewives of D.C.) 8/5/2010  (Thu)

・ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ビヴァリー・ヒルズ (The Real Housewives of Beverly Hills) 今秋



繰り返すが、私はこの手の番組には露ほども興味は持ってない。まあ金あって暇のある連中を見たい同様に暇のある者たちがそれほどいるなら、別にこちらが止める義理立てもないし、見たらいいんじゃないの、くらいにしか思っていなかった。そういう番組がどんどん肥大化していくのを見るのはあまり気持ちのいいものではないが、人の趣味はそれぞれで、別に特にそれに関与する気はない。そういう風にしか思っていなかった私が、今回、敢えて「D.C.」編を見てみようという気になったのは、そこにミケーレ・サラヒという名があったからに他ならない。


サラヒというなにやらエキゾティックな雰囲気をまとう名字は、アメリカ人には既にお馴染みだ。いったい、昨年末のアメリカTV界は、このサラヒ夫婦、および、タイガー・ウッズのスキャンダルで持ち切りだった。正直言って、この二つの話題以外に何があったかというと、まったく思い出せないくらい、両スキャンダルが世間の話題を独占した。ウッズのスキャンダルはアメリカだけでなく世界中で報道されたから、今さら私がコメントを挟む必要もないだろうが、サラヒ事件はアメリカ以外では特に注目されてもないようだから注釈すると、この夫婦、現実のホワイトハウスのパーティ・クラッシャーなのだ。


呼ばれてもいないパーティに出席して荒らす、パーティ・クラッシャー (Party Crasher) というのはどこにでもいるが、特にここ数年の不景気で、ただで飲み食いすることを目的とするクラッシャーが格段に増えた。とはいえ、さすがに大統領夫妻が主催するホワイトハウスのパーティをクラッシュしようと考える人間は、これまではいなかった。単なるパーティ・クラッシュとはわけも規模も違う。まかり間違えばかなり重い罪で刑務所入りも免れ得ないかもしれないし、第一、警備が違う。二重三重の警備、シークレット・エージェントが目を光らせているホワイトハウスのパーティに、テロ以外を目的にクラッシュしようとする人間がいるとは、ホワイトハウス側ですら考えていなかった。


一方、そういうテロ対策は万全だが、逆にテロとは無関係な人物はホワイトハウスのブラック・リストには上ってこない。穴なのだ。たぶんそのことをいち早く見抜いたサラヒ夫婦は、着飾って、さも正式に招待された振りをして堂々と正面からホワイトハウスに乗り込み、オバマ大統領夫妻と一緒の写真まで撮ってホワイトハウスを後にした。これがスキャンダルになったのは言うまでもない。あんたらの警備は水漏れまくりと、ホワイトハウスは面目丸潰れになった。そのサラヒ夫婦の片割れ、妻のミケーレ・サラヒが、今回の「D.C.」の主要登場人物の一人なのだ。これは私じゃなくても結構気になるだろう。


いずれにしても、ホワイトハウスのパーティに、招待されてもないのに行きたがるその発想がよくわからない。正式に招待されてないなら万が一もぐりこめても本人の格が上がるわけでもなし、第一、ばれたら単に恥の上塗りだ。プランクスター的いたずらというにはそこに稚気が感じられないし、どうも本人たちはマジでホワイトハウスのパーティに出席したという既成事実でもって自己満足したかったようなのだ。誰も認めてないのに。どんなに金を持っていようとも、こういう奴らにこそ貧乏人と囁いてやりたい誘惑に駆られる。


番組に対して元よりこういうネガティヴな先入観を持っていたことは否めないとはいえ、しかしこの番組、やはり最初の3分で見るのが苦痛になった。ただ単に普通の人より稼ぎがちょっといいだけのただの見栄っ張り女性たちが見栄を張り、あれが欲しいこれが欲しいと駄々をこねても、共感できる点はまったくないし、整形手術に失敗したようにしか見えない顔にどんなに化粧しても、私の美的感覚にはまるで訴えてこない。


登場人物の一人は、幼い時からケネディ家に出入りして一緒に遊んでいたと昔を懐かしく述懐するが、だからなんなんだ。あんたらがケネディ家の一員でもなんでもないんだろ。向かいに住んでいるのは元国務長官のコリン・パウエルだそうで、だ・か・ら・あんたがパウエル家の血縁でもなんでもないんだろ。それがいったいなんだっていうの、としか思えない。こういう種類の人間にありがちだが、金以外に自分に自慢できるものが何もないので、近くにいる本当に格上の人間に自分を投射して、さも自分が同等の人間であるかのように錯覚して自分自身で酔うのだ。第三者からすると見苦しい辟易する所作以外の何ものでもないのに。


「ハウスワイヴズ」シリーズの全部がそうであるかは知らないが、少なくとも私が読んだ記事では、「ニュージャージー」に関する限りでは、登場する面々には少なくとも第1シーズンにはギャラはまったく払われていないらしい。皆、ノー・ギャラでいいから出たいという者たちを集めたのだ。それだけではなく、番組に出たおかげで知名度を得たために二次的にどこかから招かれたりTVや映画に出たりコラムの執筆を依頼されたりした場合、その何パーセントかのギャラをブラヴォーにキックバックして支払う契約になっているそうだ。こいつら、そこまでしてTVに出たかったのか。


逆に言うと、ブラヴォーが「リアル・ハウスワイヴズ」シリーズをフランチャイズ化して力を入れているのは、そういう理由がある。番組に出たがる者は後を絶たないし、ギャラが要らないから製作費は安く上がる。後は勝手に出たがりの彼女らが問題起こして話題集めて視聴率が跳ね上がるのを見てるだけでいいのだ。笑いが止まらんだろう。番組を見る気にはまったくならないが、このシステムを考え出したブラヴォーは目のつけどころがよかった。世の中にこんなに暇を持て余して金のある、スポットライト症候群に冒された女性たちがいるとは思ってもみなかった。


とはいえ、問題はやはりサラヒだ。ホワイトハウス事件を見ても彼女が無類の目立ちたがりなのは明らかだが、そのくせして彼女、さもありなんだが仕切りたがりでもある。ホワイトハウスをクラッシュして自分がほぼ主演の番組に登場して有頂天になってんだろう、ブラヴォーが主催する番組のお披露目パーティには勝手に欠席して自分自身で勝手にパーティを開いたりと、単独プレイを連発した。


サラヒはそのくせして、ブラヴォーが私にホワイトハウスのことを話すことを禁じていると、他の番組にゲスト出演しても、ホワイトハウスのことをあまりしゃべりたがらなかった。要するに皆がそのことばかりを訊くので、いい加減うんざりしてしまったんだろう。それまでは自ら率先してホワイトハウスについてあることないことしゃべりまくっていたのにである。


特にこのことがブラヴォーの逆鱗に触れたのは間違いない。なんとなればサラヒがホワイトハウスのことをしゃべるのは番組の宣伝にこそなれ、マイナスにはならない。ブラヴォーはもっともっとサラヒにホワイトハウスのこと、引いては番組のことを口にして欲しかったはずなのだ。ブラヴォーは、我々はサラヒに箝口令を敷いたことなどないと正式に声明を発表してサラヒを糾弾した。


ABCの「ザ・ヴュウ (The View)」にゲストとして出た時には、ホストの一人であるウーピ・ゴールドバーグが、サラヒの腕を引っ張って注意を引いてホワイトハウスの話をさせようとしたところ、それが気に入らなかったサラヒは、ゴールドバーグに殴られたと主張してゴールドバーグを激怒させた。むろんそういう事実がまったくなかったのはTVカメラがすべてとらえていた。ゴールドバーグは番組収録後にサラヒともう一度対峙していたところ、サラヒの夫がブラックベリーでその模様を録画し始めたため、さらに激昂して4文字単語を連発したそうだが、こいつら、夫婦でいけ好かない奴らだ。


「リアル・ハウスワイヴズ」フランチャイズはすべて何シーズンも続いているブラヴォーのドル箱シリーズになりつつあるが、「D.C.」だけは、たぶん第1シーズン限りで終わる最初のシリーズになるだろうと言われている。実際、番組自体は他のすべてのフランチャイズ・シリーズと比較しても、最も成績が悪い。視聴者はサラヒのホワイトハウス事件の詳細は知りたくとも、別に特に彼女の私生活まで知りたいわけではなかったのだ。


私としては別に「D.C.」だけに限らず、他のシリーズ全部キャンセルしてくれても構わないのだが、今秋には最新シリーズの「ビヴァリー・ヒルズ」が始まってしまう。他にもシカゴ、サンフランシスコ、ボストン、フィラデルフィア等、この手の番組の候補として適している都市がいくつも思い浮かぶ。「リアル・ハウスワイヴズ」フランチャイズがまだ今後も拡大していきそうなのを考えると、いささか憂鬱になる。








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