放送局: ABC

プレミア放送日: 6/1/2005 (Wed) 21:00-22:00

第4シーズン・プレミア放送日: 3/19/2007 (Mon) 20:00-22:00

製作: BBCワールドワイド・プロダクションズ

製作総指揮: コンラッド・グリーン、リチャード・ホプキンス

ホスト: トム・バージェロン、サマンサ・ハリス

ジャッジ: キャリー・アン・イナバ、レン・グッドマン、ブルーノ・トリオリ


ダンサー:

ライラ・アリ/マクシム・チメコフスキー

ビリー・レイ・サイラス/カリーナ・スマーノフ

クライド・ドレクスラー/エレーナ・グリネンコ

ジョーイ・ファトン/キム・ジョンソン

シャンディ・フィネシー/ブライアン・フォーチュナ

リーザ・ギボンズ/トニー・ドヴォラニ

ヘザー・ミルズ/ジョナサン・ロバーツ

アポロ・アントン・オーノ/ジュリアン・ハグ

ポーリーナ・ポリツコワ/アレック・マッツォ

ジョン・ラツェンバーガー/エディタ・スリウィンスカ

イアン・ジーリング/シェリル・バーク


内容: セレブリティとプロのダンサーにペアを組ませ、勝ち抜きでボールルーム・ダンスの勝負を決めるリアリティ・ショウの第4シーズン。


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「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」は、英国産の人気番組をアメリカ風にリメイクしたボールルーム・ダンスの勝ち抜きリアリティ・ショウである。第1シーズンは一昨年夏に放送され、すぐさま人気を獲得、今ではABCで最も高い人気を持つ番組へと成長した。とはいえ、私にとってはこの人気はまったく腑に落ちるものではなかった。その理由はこの番組の二番煎じであるFOXの「スケーティング・ウィズ・セレブリティーズ」で述べたので、ここで重複することは控える。


いずれにしても、私はこの番組が好きではなかった。FOXの扇情系リアリティ・ショウがよくやるように、積極的に嫌いになれる理由があるならまだ番組としては価値があるとすら思えるが、「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」の場合、単に見るだけ時間のムダとしか思えず、単純に無視していたのだが、しかし、それにしては人気が落ちない。なぜこんな番組を人は見るのだろうか。


ダンシング・ウィズ・「スターズ」といっても、はっきり言って本当のA級スターはこんな番組になぞ出ない。当然だろう。忙しいスターがわざわざその合間を縫ってボールルーム・ダンスの練習に割く時間なんかあるわけがない。当然、出てくるのはこの種の番組にありがちだが、B級C級のスター、いや、スターやセレブリティとかいうのは名ばかりの、かつて何度か名前くらいは聞いたことがあるような気がするというのがせいぜいの、限りなく一般人に近い者が大勢を占める。正しくタイトルをつけるなら、「ダンシング・ウィズ・スターもどき」となるのが真実に近い。CBSの深夜トーク・ショウ「レイト・ショウ」のホストのデイヴィッド・レターマンが一時期よく、で、スターはどこにいるのと「ダンシング・ウィズ・スターズ」をサカナにしていたが、それが普通の人々の反応というものだろう。


公平を期すと、もちろん、特にスポーツ界から選ばれて出演している者には、実際、大物はいたりする。第1シーズンに出ていたスポーツ界出身のメンツには、ボクシング元世界へヴィ級チャンピオンのエヴァンダー・ホリフィールドなんてのがいたし、最新第4シーズンに出ているライラ・アリは、かのモハメド・アリの娘、現役の女子ボクシング世界チャンピオンである。冬季五輪ショート・トラックの500mディフェンディング・チャンプのアポロ・アントン・オーノもいる。彼らは文句なしに現時点で世界一強いか世界一速い。彼らをスターとかセレブリティとか呼ぶ分にはこちらも文句はない。NBAファンならホール・オブ・フェイマーのクライド・ドレクスラーも当然知っているだろう。


しかし目を芸能界に転じると、今シーズンから11チームに増えたペアの中で、私が最初から知って誰だか名を言えた者は、元イン・シンクのジョーイ・ファトンと、カントリー・シンガーのビリー・レイ・サイラス、タレントのリーザ・ギボンズの3人だけだった。「チアーズ」のジョン・ラツェンバーガーは、顔は知っていても名がわからなかったし、モデル上がりのポーリーナ・ポリツコワとシャンディ・フィネシーはまったく初耳、ほとんど真面目に見たことがない「90210」出身のイアン・ジーリングも当然知らなかった。


本人の所業によってではなく、ほとんど老域にさしかかっているポール・マッカートニーと結婚してすぐに離婚騒ぎで話題を醸したヘザー・ミルズに至っては、「客寄せ」という言葉しか思い浮かばない。実際、ミルズは数年前に事故で片足を切断している。当然義足で踊るわけだが、踊っていて突然足が外れたりしなくていいわけとあらぬ妄想を抱かせてしまうミルズの起用は、パラリンピック的スポーツ精神の発露というよりは、奇人変人が集うサーカスのサイド・ショウの方を当然連想する。要するに、やっぱり私は本気でこの番組を見てみたいという気にはまったくなれない。


それでも、たとえB級C級の看板に偽りだらけのセレブリティでも、人はやはり名目だけでもセレブリティとついている人間が膝や腕に青タン作って、できないものに努力するという姿を見るのが好きらしい。もちろんそれだって、努力とはいっても本業じゃないし、本当に精魂込めて練習しているわけなんかじゃもちろんない。そりゃ一日何時間というのは一般人から見ればたいそうな練習量かもしれないが、出演者は他に仕事が入るとそちらの方を優先して、それで今週はあまり練習する時間がなかったからと、逆に不調だった理由にしていたりする。視聴者をなめるのもいい加減にしろ。


結局、そんな似非セレブリティが付け焼刃で踊っても、正直言って面白くもなんともない。もちろん誰だって練習すればそれなりに少しは踊れるようになるし、見れるようにはなる。しかし、それだってちょっとうまい素人の域を出るものではなく、やはりそんなの、人に見せて評価させるようなレヴェルではまったくない。これも何度も言うが、こんな番組なんかよりFOXの「ソー・ユー・シンク・ユー・キャン・ダンス (アメリカン・ダンスアイドル)」の方がダンス番組として一万倍は面白いのは保証する。少なくともこちらは、元々玄人はだしの面々がさらに練習してもっとレヴェルの高いダンスに挑むので、見ていて飽きないし、実際に感心する。それなのに「ユー・キャン・ダンス」より「ダンシング・ウィズ・スターズ」の方が視聴率が高いのを見るのは、アメリカの民度の低さを露呈しているようで、多少ならずともがっかりする。


そんなにコケにしている「ダンシング」を今回見てみたのは、今回の参加者の中に、アポロ・アントン・オーノとジョーイ・ファトンという名をうちの女房が見つけたからである。数年前に一世を風靡したイン・シンクのメンバーの一人であるジョーイと、前回の冬季五輪で活躍したアポロは、実はうちの女房がかなり入れ込んでいたのであった。私は、ほっておくとすぐ溜まって山のようになるヴィデオやDVDソフトはできるだけ買ったり録ったり集めたりしないようにしているのだが、例外とも言えるのが昔HBOが放送したイン・シンクのコンサート中継と前回の冬季五輪のダイジェストで、特に後者の方は五輪ダイジェストというよりもアポロ・ダイジェストと言った方が的を得ていて、女房一人の意向により永久保存版になった。これだけ一時期追っかけた人間が出ているとなると、やはり見てみようかという気になるのだった。しかし、他の一般視聴者もうちの女房みたいに、特に見たい人間が出ているから見ているとは到底思えないのだが。


いずれにしても、それで、私もそれならと、女房と一緒に新シーズンを何度か見てみたわけだが、やはり、何度も何度も、声を大にして言うが、この番組は面白くない。要するに、みんな下手くそだ。なんでわざわざ貴重な時間を割いてまで、こんな下手くそどものダンスを見なくちゃいけないのかと悲しくなってくるくらいで、アポロとジョーイ見たさにチャンネルを合わせていた女房も、彼らが出ている部分だけは食い入るように見ているくせに、その他の部分になると、つまらないわねえとTV画面なんか見ないでマンガ読んでたりしている。ま、それが正常な反応というものだろうと私も思う。


これまでの段階で、一応は見る価値のあるペアはアポロとライラ、それにジョーイくらいだというのは、誰の目にも一目瞭然だろう。特にアポロとライラの二人はさすがに現役のスポーツ選手ということもあって、呑み込みが早く、一応は見られるダンスを踊る。アポロはこないだ見た回では、番組史上初の3人のジャッジの全員から10点満点をもらう合計30点満点を獲得していた。


実際の話、彼が踊ると思わずつい拍手したくなってしまうし、うちの女房は立ち上がってTV相手にスタンディング・オヴェイションを送っていた。アポロはショート・トラックを引退しても、次のキャリアの道が開かれたかもしれない。もしかしたらこの番組に出て最も得したのはアポロかも。彼とライラが他のメンツから頭一つ抜け出ているのは明らかだ。元NBAのドレクスラーは、さすがに昔のようには動けないのと、相手との身長差がありすぎるのがネックとなって今一つ冴えず、ついに脱落した。身長差がありすぎて相手が誰だろうとうまく踊れないのは最初からわかりきっているNBA選手を起用するというのも、番組が単に話題集めだけに走っている証拠だろう。


一方、まったくどこから見てもリズムに乗れず、最初の方ではあまりにも下手くそなため、相手方のダンサーが途方に暮れて仕舞いには泣いていたビリー・レイ・サイラスがまだ残っているのは納得しがたい。ま、納得はできないが理由はわかる。実はアメリカではスーパー超売れっ子のカントリー・シンガーのサイラスは、これまた売れっ子の娘のマイリー・サイラスと共演しているディズニーの「ハナ・モンタナ (Hannah Montana)」もあるため、現在どの年代層にも満遍なく人気があるのだ。


どんなに失敗しても残るサイラスは、これまた今シーズン、歌よりもそのキャラクターでどんなに失敗しようと支持を得て最後の方まで残っていた「アメリカン・アイドル」の サンジャヤ・マラカを彷彿とさせる。ジョーイがまだ残っているのはうれしい驚きだが、考えたら、彼はイン・シンクのメンバーとしてかなり激しいダンス・ナンバーを踊っていたのだった。むしろ彼が一番呑み込みが早くて当然だろう。ただ、イン・シンクを解散してからちょっと贅肉がついたようで、まだ踊れるかどうか一抹の不安があったのであった。


結局、最後まで残るのはたぶんアポロ、ライラ、ジョーイあたりというのはかなり早くから予想されていたことで、その予想通りになった。私も当然つまらないなりにまだうまいやつのダンスを見たいとは思うが、しかし、それでも時間のムダと思うのは如何ともしがたい。最初の回の方で裏番組のFOXの「プリズン・ブレイク」を犠牲にしてまで見たのに、不満の方が募る。5月からはこれまた小休止していた裏番組のNBCの「ヒーローズ」も放送を再開した。若い視聴者は、やはりこちらの方を見るだろう。翌火曜の結果発表はFOXの「ハウス」と重なるが、これも若い者が「ハウス」でなく「ダンシング」を見ているとは到底思えないから、「ダンシング」はジジババに受けているのは明らかである。とはいえ、そのジジババのほとんどが大挙して見ていないとここまでの成績にはならないだろう。ジジババ畏るべし。


それでも、なんでこの番組が最初は2時間、今ですら90分枠なのか。実際にダンスしているのは正味15分くらいしかないのに、見たくもない練習風景やインタヴュウや採点評など、よけいな部分が多すぎる。だいたい「ダンシング」は、第1シーズンには結果発表のエピソードなぞなく、登場ペアも6チームで、6エピソードでシーズンが終わった。ついでに言うと、その時に既に八百長デキレースと物議を醸したが、逆にそのことが人気を高めてしまったというのが情けない。そんな番組が今では、出場チームは2倍、エピソード数は4倍だ。ジジババよ目を覚ませ。世の中にはこんなのより面白い番組はごまんとあるぞ。あ、それでもついでにヤケでやっぱり結果を予測すると、優勝アポロ、準優勝ライラ、次点ジョーイということで。さすがに見るかはわからんが。



追記 (2007年5月)

結局私の予想通りの3人が残った最終回、ダンスだけを見て翌日の結果発表はパスし、結果はそのまた翌日の新聞を見て知ったわけだが、優勝は確信した通りアポロ。しかし2位と3位は予想とは逆で、2位がジョーイ、3位がライラだった。ま、こんなもんでしょう。







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Dancing with the Stars

ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ   ★1/2

 
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