The Midnight Sky


ミッドナイト・スカイ  (2021年1月)

前回見た「ザ・スクエア (The Square)」の記憶をまだ引きずっており、というか、「ザ・スクエア」視聴と関連して記憶に残った燃えるクルマのイメージをまだ引きずっており、「ミッドナイト・スカイ」主人公のジョージ・クルーニーを見た途端、いきなり「フィクサー (Michael Clayton)」で、クルーニーの乗るメルセデスが爆発炎上したシーンを思い出した。印象的な出来事やイメージというものは、尾を引くものらしい。 

 

さて「ミッドナイト・スカイ」、最近見たSFもの「アイ・アム・マザー (I Am Mother)」も近未来では人類はほとんど滅亡していたが、今回も状況はあまり変わらない。というか、「ミッドナイト・スカイ」では、人類は滅亡を避けるために宇宙へと脱出している最中だ。 

 

温暖化の影響、並びにドナルド・トランプ元大統領就任による人類共倒れへの不安、とどめは新型コロナウイルス蔓延によるパンデミックと、人類滅亡の危機は増しこそすれまったく減じていない。人々がペシミスティックな気分に陥るのもよくわかる。私もうちの中にこもりきりで、これじゃいかんと毎朝夕、散歩くらいはするよう心がけているが、それでも昨年、うちから半径10km以上に遠出したのは数えるくらいしかない。社会には鬱屈した空気が充満している。 

 

おかげで「ミッドナイト・スカイ」では、実は人類が滅びる理由は、どうやらなんかの天変地異のようだが明確な理由づけが与えらえれているわけではないにもかかわらず、それでもああやっぱりそうなのかと納得してしまう。それが現代に生きる人類の気分というものだろう。ウイルスに反乱を起こされ、人類同士でいがみ合っていて、さらに天変地異が起きたら、滅亡も避けられないかなと思う。 

 

「ミッドナイト・スカイ」は、その滅亡が目前となった地球に一人残る老科学者のオーガスティンを描く。地球にはもう人は住めないが、以前、宇宙に旅立って地球に帰還途中の宇宙船乗組員たちがいた。 彼らが地球と交信できるまで待っていられるほどの余裕は地球には残されていなかった。オーガスティンは北極の基地に一人残り、乗組員たちに、地球にはもう人は住めない、帰っても降りるところはないと伝える役目を引き受ける。 

 

基本的に話はオーガスティンと、5人の宇宙船乗組員、そして何故だかオーガスティン以外にもう一人基地に残っていた女の子との間で展開する。宇宙船との交信はなかなかうまく行かず、より無線の出力の大きい基地に移動せざるを得ないが、女の子を一人残していくことはできない。さりとてこのままでは二進も三進も行かず、オーガスティンは意を決して女の子共々雪嵐の吹き荒ぶ中を行軍する決心をする。 

 

この雪嵐の中の行軍が特筆もので、特撮ではなく実際にアイスランドで氷点下40Cという極寒の中で撮影されたそうだ。オーガスティンに扮するクルーニーの髭が、実際に凍っているようにしか見えず、これ、特撮ではなくてもしかして本当に雪嵐の中撮っている? だとすればすげえ、それだけでアカデミー賞のなんかの賞をあげてもいい、と、寒さには滅法弱い私なんかは思うのだった。レオナルド・ディカプリオも「レヴェナント: 蘇えりし者 (The Revenant)」で凍えるような川に身を浸してオスカー獲ったわけだし。 

 

印象としては、「ミッドナイト・スカイ」から受けるのは、「ゼロ・グラビティ (Gravity)」の変奏というものだ。あれも登場人物の少ないSFもので、まったく似たような宇宙での船外シーンとかがあり、極めつけはヒーローとしてのジョージ・クルーニーの存在がある。「ゼロ・グラビティ」で裏主人公にはなっても途中退場を余儀なくされたクルーニーが、今回は主人公として人類滅亡になんとか楔を打ち込もうと奮闘するのが、「ミッドナイト・スカイ」だ。 

 

かつて未来SFが描くものは、なんとか人類滅亡の危機を回避するというものが多かったが、近年では人類が滅亡した後を描くものが多い。滅亡とまで行かなくても、だいたい貧富の格差が増して、住みよい地球とは言えなくなっているものがほとんどだ。近年の世界の大国の指導者を見ていると、そうならざるを得ないような気になってくる。かつてスティーヴン・ホウキングは、人類は滅亡を避けるためには宇宙に出るしかないと言っていた。その言葉にますます説得力が増している。 


 











< previous                                      HOME

近未来。天変地異が地球を襲い、もはや人類は地球に住むことは叶わず、宇宙を目指して脱出していた。高齢の科学者であるオーガスティン (ジョージ・クルーニー) は今さら地球を脱出する気はなく、一人北極の基地に残る。地球が滅亡することを知らずに遠く宇宙を旅していたロケットが地球に戻ってくるが、もう地球に人は住めないことを教えてやる必要があった。ロケットにはアデウォル船長 (デイヴィッド・オイエロヲ) を筆頭に、サリー (フェリシティ・ジョーンズ)、ミッチェル (カイル・チャンドラー)、サンチェス (デミアン・ビチル)、マヤ (ティファニー・ブーン) の乗組員がいたが、彼らもまたそれぞれ悩みや問題を抱えていた。基地にたった一人残ったオーガスティンは、しかし、一人の幼い女の子が取り残されているのを発見する‥‥                    


___________________________________________________________

 
inserted by FC2 system