ジ・オナラブル・ウーマン   The Honorable Woman

放送局: サンダンス

プレミア放送日: 7/31/2014 (Thu) 22:00-23:15

製作: ドラマ・リパブリック、エイト・ルックス・プロダクションズ

製作総指揮: グレッグ・ブレンマン、ポーリー・ヒル

製作/監督/脚本: ヒューゴ・ブリック

出演: マギー・ジレンホール (ネッサ・スタイン)、アンドリュウ・ブキャン (エフラ・スタイン)、スティーヴン・レイ (ヒュー・ハイデン-ホイル)、ルブナ・アザバル (アティカ・ハリビ)、ジャネット・マクティア (ジュリア・ウォルシュ)、キャサリン・パーキンソン (レイチェル・スタイン)、トビアス・メンジーズ (ナサニエル・ブルーム)、イガル・ナオール (シュロモ・ザハリー)、ジュヌヴィエーヴ・オライリー (フランシス・パーシグ)、リンジー・ダンカン (アンジェリカ)


物語: ネッサ・スタインは裕福なユダヤ人武器商人の娘で、幼い時、父はネッサと弟のエフラの目の前で暗殺された。30年後、ネッサはイスラエルとパレスチナを友好的に結び付けようとする慈善基金に力を入れていた。ネッサはパレスチナ人ビジネスマンのメシャルと取り引きをしようとしていたが、スタイン家の家ぐるみの友人であるシュロモは、自分がないがしろにされたようでそれを快く思っていなかった。CIAやMI6も取り引きの内容に興味を持っており、引退前のMI6のハイデン-ホイルは持ち前の嗅覚と粘り強さでネッサを調査する。しかしメシャルが死体となって発見され、状況から自殺と判断されたが、ネッサもハイデン-ホイルも納得行かないものを感じていた。そしてエフラの子の面倒を見ているナニーのアティカの息子カシムが誘拐される‥‥


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The Honorable Woman


ジ・オナラブル・ウーマン  ★★★1/2

「ジ・オナラブル・ウーマン」はアメリカではサンダンス・チャンネルのオリジナル・ミニシリーズということで紹介されているが、英BBCとの共同製作であり、実はプレミア放送はBBCが7月上旬、サンダンスが7月末と、BBCによる放送の方が一と月ほど早い。たぶんBBCのリーダーシップの元に製作されたんだろう。つまり、厳密に言えば英国製番組であり、アメリカの番組ではない。


ちょっとクレジットを調べようと思ってIMDBをチェックしてみたら、サンダンスによる番組名の「The Honorable Woman」ではなくて、英国語表記の「The Honourable Woman」で記されていた。やはり英国製番組なのだ。因みにこの観賞記はマイクロソフトのワードを使って書いているのだが、それだと、Honourableという単語には誤表記を示す赤い波線が下に引かれる。試しにスペル・チェックかけてみたら、Honorableが修正候補に出た。こちらの方はアメリカが優勢なのだった。ワード自体は日本語版なのだけれども。


いずれにしても、面白そうだなと思っていた番組ではあるが、なにぶんとにかく目を通しておかなければならない番組、あるいは目を通しておきたい番組の録画が山積みになっており、たとえ共同製作であろうとも、実質外国産番組を見る時間の余裕はあまりない。それで最初はパスしようかと思っていたのだが、でも面白そうだよなあ、ちょっとだけ、と思って冒頭部分を見始めたら、つかまれてしまった。


ショウタイムの「ホームランド (Homeland)」や今年公開の「ベツレヘム (Bethlehem)」を例に挙げるまでもなく、イスラエルやパレスチナを舞台にする映画やTVは、非常にポリティカル、かつサスペンスフルなドラマになる。実際にそこで生きて生活している者がそういう体験をしているのだから、それも当然と言える。現実のそういう体験の幾つかを提示するだけで、戦争とは無縁の生活に慣れた我々の目からは想像もできないドラマになる。


「オナラブル・ウーマン」は、スタイリッシュなポリティカル・サスペンス・ドラマで、ミニシリーズといえどもTV番組でこれだけ凝った映像を見ることはあまりない。「誰よりも狙われた男 (A Most Wanted Man)」のアントン・コービンが撮ったミニシリーズを見せられているみたいだ。製作/脚本/監督はヒューゴ・ブリックで、長い間準備していたに違いない。この名は覚えておこうと頭に刻む。


ユダヤ系武器財閥を引き継いだ女性社長ネッサと弟のエフラは、幼い時、レストランでパレスチナの息のかかった暗殺者の手によって、父親を目の前で殺される。しかし成長したネッサはパレスチナに反感を持つのではなく、両国が仲よく共存していく方法がないものかと考え、基金を立ち上げ、両国のためになる慈善事業に力を入れていた。


しかしネッサのそういう活動を喜ばない者もおり、彼女自身も常に暗殺の危機にさらされていた。ボディ・ガードに元MI6のブルームを雇って身辺を警護させ、夜寝る時は完全に外界から遮断された巨大金庫のようなベッドルームで、胎児のように丸くなって眠る。実はネッサは数年前にパレスチナ人によって拉致され、長期間にわたって監禁されていたことがあった。その時の記憶が身体に染み込んで抜けないのだ。そして新しい事業計画は、さらなる危険を身辺に迫らせていた。


ネッサに扮するのがマギー・ジレンホールで、最初、叙勲されて育ちのいい金持ち階級という感じを強く出しといて、回が進むに連れ、体当たりの熱演という感じになってくる。しかし、あっと思わされたのがエフラの子のナニー、アティカを演じるルブナ・アザバルだ。最初、彼女、もしかして「灼熱の魂 (Incendies)」の彼女じゃないかと思って、調べてみるとやっぱりそうだった。


「灼熱の魂」の印象がいまだに強烈に残っている身としては、今回は金持ちの家のナニーか、ちょっと彼女にはたるい役かもと思わせといて、中盤 以降、彼女こそ今回の事件の大きな鍵を持つ人物ということがわかってくる。さらに曲者のスティーヴン・レイらが絡み、事態はますます混迷の度を深めて行く。うーん、面白い。こう言っちゃなんだが、イスラエル-パレスチナって、ドラマの舞台としては申し分ない。考えたら「ノア 約束の舟 (Noah)」の昔からあの辺ってそうだったわけだ し。










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