近年、コメディはネットワーク番組よりもケーブルの方が頑張っているという印象がある。特にその印象が強いのが、FXとTBSだ。
FXは、既にカルト化しているとさえ言える「フィラデルフィアは今日も晴れ (It's Always Sunny in Philadelphia)」以外に、「ファーゴ (Fargo)」、「ユーアー・ザ・ワースト (You’re the Worst)」、「ルイ (Louie)」、「バスケッツ (Baskets)」、「アトランタ (Atlanta)」、アニメーションの「アーチャー (Archer)」等、なかなかユニークな番組が揃っている。
一方TBSはTNTの姉妹チャンネルで、TNTが基幹チャンネルとしてドラマに力を入れ、TBSはコメディを担当している。「アンジー・トライベッカ (Angie Tribeca)」、「レックト (Wrecked)」、 「ピープル・オブ・アース (People of Earth)」等の番組があり、近年ではネットフリックスに対抗すべく、「アンジー・トライベッカ」の第1シーズンの全エピソードを一晩で放送するなどして話題になった。ただ基本的にすべての番組をオリジナル・コメディで埋めることはできず、過去のネットワーク・コメディの再放送が編成の半分くらいを占めているため、FXほど尖った印象はない。
「サーチ・パーティ」は、そのTBSにしてはかなり冒険の印象を受ける番組だ。主人公のドリーは自分に自信がなく、就職はうまくいかず、現在やっていることといえば金持ちの女性のアシスタント的なポジションで、正直言って誰だってできるようなことだ。ボーイフレンドのドリュウはかなり自己中で、自分では何もせずに、腹減ったと言ってはドリーにメシの支度をせがむ。
そのドリーが、街中で人探しの貼り紙を目に止める。消息の知れないその女性は、かつてドリーと同じ大学に通った女の子だった。特に親しくしていたわけでもなく、二言三言口を交わしたことがあるくらいの仲でしかなかったが、心の弱っていたドリーは、行方不明となったその子を探し出すことに自己存在の意義を見出す。
ドリーの回りにいる人々は、誰も彼もが皆自分のことしか考えてないように見える。ボーイフレンドのドリュウは、就職に失敗して落ち込んでいるドリーが頼むから黙っていてくれと言っているのにそれが役目とばかりに話しかけ続け、普段はおとなしいドリーを切れさせる。友人のゲイのエリオットはコントロール・フリークで、ポーシャは自分が一番と思っている女優志望だ。最近の若いのって皆こんなに自己中かと思わせる。とすると、世界の将来は暗い。
なかなか際どいセックス描写やセリフが出てくるのも興味深い。検閲が生きているベイシックのケーブル・チャンネルで、裸は見せられないし四文字言葉は使えない。それを逆手にとってここまでできるのかと思わせたのがFXの「ユーアー・ザ・ワースト」だったわけだが、「サーチ・パーティ」もかなり来ている。
ドリュウはドリーがそばで寝ているのにそれだけでは勃起できないのか、自分で自分自身を刺激してやっと臨戦状態になり、準備はいいかとドリーに覆い被さったかと思った次の瞬間に果てている。自己中もこれに極まれりで、これはもうセックスとは言えまい。
ゲイのエリオットは過去ベッドを共にした男から、あんたのザーメンを飲んだのにこんな扱いかと詰め寄られる。結構ぎょっとする発言だが、今ではこれくらいなんでもないのか。ただし「ユーアー・ザ・ワースト」と違って「サーチ・パーティ」はセックス・コメディというわけではないので、毎回こういう展開があるわけではない。
主人公のドリーに扮するのはアリア・ショウカットで、FOXの「ブルース一家は大暴走 (Arrested Development)」では、彼女も人のことは考えない自己中の少女を演じていたのだった。それが成長して、今では逆に自己中族に振り回される方になった。そばかす顔の可愛い子で、こんなに可愛いのに男も就職先も恵まれず自己憐憫気味という設定にやや説得力がないところが、番組としては数少ない欠点の一つと言える。