ピープル・オブ・アース (People of Earth)

放送局: TBS

プレミア放送日: 10/31/2016 (Mon) 21:00-21:30

製作: コナコ、ディードル-ディー・プロダクションズ

製作総指揮: デイヴィッド・ジェンキンス、コナン・オブライエン、グレッグ・ダニエルス

出演: ワイアット・セナック (オジー・グレアム)、アナ・ギャステヤー (ジーナ・モリソン)、ルカ・ジョーンズ (ジェリー・ジョンソン)、ブライアン・ハスキー (リチャード・シュルツ)、アリス・ウェッターランド (ケリー・グレイディ)、マイケル・キャシディ (ジョナサン・ウォルシュ)


物語: フリーのライターのオジーは、ニューヨーク郊外のビーコンを訪れ、エイリアンにアブダクトされた経験がある者たちによる自助グループ、スタークロスドを取材する。しかもその道中でクルマを運転しながら、オジー自身シカを撥ね、以来記憶が途切れたような嫌な夢を頻繁に見るようになる。果たしてオジーもエイリアンにアブダクトされて記憶を操作されたのか‥‥


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People of Earth


ピープル・オブ・アース  ★★1/2

登場人物の一人ジェリーによると、ニューヨーク郊外の町ビーコンは、アメリカで最もエイリアン遭遇頻度が高い町だそうだ。もし本当に高い知能を持つエイリアンが地球に既に入り込んでいるとして、当然活動拠点はあるだろうから、エイリアンに拉致・アブダクトされたり目撃したりする遭遇頻度が高い地域というのは、同様にあると思われる。


ビーコンはニューヨーク・シティから北にハドソン・リヴァー沿いに70マイル (100 km) ほど上ったところにある。アメリカ最大の都市に近からず遠からずという位置にあり、そばを川が流れ、一方でアパラチア山脈の東側をかすり、近くには近郊で最も高い山ベア・マウンテンが聳える。空気も澄み遠くまで見渡せ、UFOが隠れて飛来するのにも適しているように思われる。


ニューヨーク・シティまでの道すがらには、あまりにも都市に近過ぎるためテロの標的になりやすく、しかも老朽化している原発、インディアン・ポイントがある。今さらニューヨーク州知事のアンドリュウ・クオモが廃炉にしようと躍起になっているが、いざという時にはここを攻め落とせば、ニューヨークは簡単に死の街になるだろう。


ディア・ビーコンという現代美術館は町の名所でもあり、MOMAでは展示不可能みたいなけったいな展示物が多く、それがまたなんとなくエイリアンという雰囲気とマッチする。基本的にアメリカの美術館は模写、写真撮影はOKだが、ディア・ビーコンはあまりにも意表を突く展示物が多く、真似されたくないのか、面白くて写真撮ってたら、撮影はダメだと言われた。要するにそういう美術館だ。


近くのストーム・キング・アート・センターは箱根の森彫刻美術館を100倍にしたような規模で、現代彫刻に触って遊べる。実はそのうちの一つがエイリアンの秘密交信用のオブジェだったとしても、私は驚かない。観光客の一大メッカ、ウッドベリー・コモンズ・アウトレット・モールもすぐ近くだ (これは関係ないか)。だいたい、ビーコンという町の名からしていかにもそれらしい。等々、ここにエイリアンが多く潜んでいると聞くと、なんとなく、ああ、そうだったかと納得しそうな場所が、ビーコンなのだ。


そのビーコンに、スタークロスドというエイリアンにアブダクトされた者たちの自助グループがあるという。エイリアン、というだけでごく真っ当に生きている市井の者にとってはいきなり眉唾ものの話題だろうに、その上そのエイリアンにアブダクトされた経験があるという者たちの集まりというと、これはもうエイリアンを信じていようが信じていまいが、胡散臭さ100%だ。まともな大人はそういうグループとは距離を置くだろう。


番組の主人公オジーも当然そうだった。フリーのライターで時間はあるが金はないという状況でさえなければ、当然断っていたに違いない取材だったが、知人の編集者のジョナサンに頼まれ、嫌々ながら引き受けた。


その道すがら、オジーは一頭のシカを撥ねた‥‥かもしれない。というのも、どうもその辺の記憶があやふやで、しかもシカが助手席から話しかけるヘンな夢を何度も見る。自助グループの面々は、それこそオジーがエイリアンにアブダクトされた証拠といい、オジーも強くは否定できない自分を発見する。


さらに、当然匿名であるはずのその記事が、ジョナサンの一存で実名のまま発表されてしまう。面目丸潰れのオジーは再度ビーコンを訪れ、そして彼らの言い分に真面目に耳を傾けないといけないのではと思い始める。実はオジーに記事執筆を依頼し、実名を暴露したジョナサンこそエイリアンの一人だったことが、番組第一回の最後に判明する。いったいビーコンで何が起こっているのか。エイリアンにとってはたぶん表に出ずに隠れているはずの方が何かと都合がいいに違いないはずなのに、わざと体験者の実名を暴露してスキャンダル騒ぎにしたジョナサンの狙いは何か。


主人公オジーに扮するのはワイアット・セナック。ジョン・スチュワート時代のコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」で知られている。レイドバックな雰囲気が、FXの「アトランタ (Atlanta)」のドナルド・グローヴァーを連想させる。スタークロスドの主宰者的人物のジーナに扮しているのは、NBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」出身のアナ・ギャステヤー。怖いおばさんが真面目にコメディする的な持ち味は、ここでも健在。他にも癖のありそうな面々が顔を揃える。


「メッセージ (Arrival)」では、わざわざ宇宙の彼方からタコ型エイリアンがやってきて人類に警鐘? をもたらしていた。しかし「ピープル・オブ・アース」ではエイリアンは既に人類社会内部に入り込んでおり、その状態がコメディになる。エイリアンエイリアンしたエイリアンだけではなく、人間の振りした、見かけ上は人類のエイリアンもそこここにいる。番組第2回以降はエイリアンの秘密基地? 内部も徐々に登場する。人類をアブダクトして色々情報を集めようとしているところを見ると、「メッセージ」のエイリアンよりどうやらこちらの方が危険っぽい。果たして彼らはいったい何を企んでいるのか。










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