レックト   Wrecked 

放送局: TBS 

プレミア放送日: 6/14/2016 (Tue) 22:00-22:30-23:00 

製作: シプリー&シプリー・プロダクションズ 

製作総指揮: ジェイムズ・グリフィス 

出演: ザック・クレガー (オーウェン)、ブライアン・サッカ (ダニー)、アシフ・アリ (パック)、ブルック・ディルマン (カレン)、ジンジャー・ゴンザガ (エマ)、フィス・ダービー (スティーヴ)、ジェシカ・ロウ (フローレンス)、アリー・マキ (ジェス)、ジェイムズ・スコット (リアム) 

 

物語: 多くの乗客を乗せた旅客機が無人島に墜落する。生き延びた人々はすぐに救援が来るだろうと期待するが、その望みも虚しく、誰もやって来なかった。サヴァイヴァーたちは元英軍人のリアムを中心に結束を図るが、リアムはあっけなく頓死、残りの者たちは途方に暮れる‥‥ 


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Wrecked


レックト  ★★1/2

旅客機が乗客もろとも無人島に墜落する。生き延びた者たちはそこでサヴァイヴァル生活を余儀なくされる‥‥というシチュエイションで人が思い出すのは、当然ABCの「ロスト (Lost)」だろう。しかし「レックト」は、同じ体裁を持っていても「ロスト」のような超常SFスリラーではない。同じシチュエイションをコメディ仕立てにしたのが、「レックト」だ。


「ロスト」を見ていた時も、旅客機が無人島に墜落して生存者がサヴァイヴァル生活を強いられるという設定に、特にリアリティを感じていたわけではない。地上のすべての人間の情報を網羅するという話が現実に取り沙汰され、地上のすべてが衛星から逐一記録されているという時代に、人の視線の及ばない場所がまだ地上に残っているという設定にあまり説得力はないなと思っていた。


そしたら、それにもかかわらず、地表から現実に旅客機が消え失せ、どこに行ったかわからないという事態が今でも現実に起きる。地上のすべては、特に飛行機なんてものは、常にレーダーでどこをどう飛んでいるか把握されているものだとばかり思っていたが、どうやらそうでもないということが明らかになった。結構監視システムというものは穴だらけなのだ。これなら無人島だとばかり思っていた場所に、なんらかの理由で人が住みついており、それが発見されないでいるという事態も、あり得ないことじゃないようにも思える。


「レックト」でも飛行機事故が起き、無人島に墜落、生き延びた人々はサヴァイヴァルを余儀なくされる。最初は生きててよかった、すぐに救援も来るだろうとばかり思っていたものが、甘過ぎた期待だったことが明らかになる。人々は元英軍人のリアムをリーダーとして、傍若無人のキャビン・アテンダントのオーウェン、使えない警官のダニー、スマートフォンなしでは生活できないパックらを中心にサヴァイヴァルを図るしかないが、前途は多難だった‥‥


オーウェンはアテンダントのくせしながら職務に怠慢で、こんな仕事やってられるかとばかりに、勤務中にトイレに籠もり、アラームの回線を外してタバコを吸っている。これで思い出すのは、乗客の態度にキレて非常口を開けてシューターから一人飛び降りて去って行ってニューズ・ネタになったどこかのキャリアのアテンダントで、しかもこのアテンダント、態度が悪かったのはむしろ自分の方で、ゴミ・アテンダントが自分のことを棚に上げて逆ギレしたことが後になって判明、人々から叩かれていた。オーウェンがそのアテンダントをモデルにしているのは間違いないんじゃないかと思う。


リアムは元英軍人のイケメンで、誰が見ても彼は生まれながらのリーダー、島でも彼が皆を引っ張って行くことに疑いを挟まない。そこで彼を筆頭にチームが組まれ、島の内陸部の偵察に向かう。鬱蒼とした森の中で、彼らは「ロスト」同様、木の上に引っかかっている朽ちた軽飛行機を発見する。ここまでパクるか。


しかし確か「ロスト」では、この飛行機を調べようとしてイアン・サマーホルダーが事故に巻き込まれて命を落とさなかったっけ、と、今ではあやふやな記憶を思い出そうとしていると、案の定リアムは落ちてきた機の下敷きになって一巻の終わりとなってしまい、ほとんど主人公ヅラして捨てキャラだったことが判明する。それでも残された者たちは、無事だったアルコールを飲んで乱痴気騒ぎ、そのまま潰れて翌朝浜で二日酔いで目を覚ます。自分らの置かれた状況の厳しさがまったくわかっていない。


「ロスト」だと、これから地下やその他の場所に潜んでいた何者かが徐々に姿を現し、島の持つ神秘的な力が明らかになっていくわけだが、「レックト」にそういったSF的展開を期待するのは無理な気がする。これがココナッツの実がいつでもなっており、飢えや渇きが凌げる南の島でなかったら、こいつら既に全員死んでいる。


出演の主人公格のダニーを演じるブライアン・サッカはザック・ガリフィアナキスにそっくりだし、オーウェンを演じるザック・クレガーはアンドリュウ・ラネルズを思い起こさせるし、インド系のパックに扮するアシフ・アリは、とりも直さずアジス・アンサリだ。とまあ、出てくる役者がすべて「ロスト」ではなく他のコメディに出ている俳優を連想させるところも、「レックト」がコメディである証しでもある。しかしこいつら、本当にこの乗りで最後まで行くんだろうか。このいい加減さ、それはそれで大したものだと思わないでもない。


実は最も気になるのは、果たして視聴者のいったいどれくらいが、まだ「ロスト」を覚えているかということだったりする。「ロスト」が最終回を迎えたのは既に6年前で、現在ロウ・ティーンなら、「ロスト」は知らないだろう。大人だっていったいどれくらいが「ロスト」と聞いて興味を持つか。それとも既にクラシックの必須科目として誰でも知っているのだろうか。










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