放送局: FOX

プレミア放送日: 9/1/2004 (Wed) 20:00-22:00

製作: ロケット・サイエンス・ラボラトリーズ

製作総指揮: ジャン-ミシェル・ミシュノー、クリス・コーワン、レイ・ジュリアーニ

ホスト: ジェイ・マグロウ


内容: 家屋/人間メイクオーヴァー・ショウ。


_______________________________________________________________


TLCの「トレイディング・スペイスズ」に端を発するメイクオーヴァー系の番組には、現在、人の外見を改造する人間メイクオーヴァー系と、家屋に手を入れる家屋メイクオーヴァー系の、主として2種の潮流が存在する。人間メイクオーヴァー系の代表が「エキストリーム・メイクオーヴァー」とするならば、家屋メイクオーヴァー系を代表する番組が、「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション」だろう。両方共にABCの番組だ。


この種のメイクオーヴァー系の番組は、その改造費用はすべてTV局持ちである。そのため、一昔前ならば、自分の整形手術の一部始終を全米に放送されることになるこの手の番組に出演しようなんて考える人間はほとんどいなかったと思われるが、今では率先して番組に出たがる人間が跡を絶たない。特にただで家をリフォームしてもらえる家屋メイクオーヴァー系の番組の場合は、これに出られるのはほとんど宝くじに当たるのも同然という人気倍率になっている。聞いたところによると、なんであそこの家が選ばれてうちが選ばれないのかと、仲が悪くなってしまった隣り近所同士もいるということだ。


そして今登場したのが、FOXの「リノヴェイト・マイ・ファミリー」だ。この番組、人間メイクオーヴァー系と家屋メイクオーヴァー系を合体させた番組で、FOXがやらなければ遅かれ早かれどこか他のネットワークが手を出しただろうと思われる。FOXは既に「スワン」で人間改造系にも手を出しているのだが、「リノヴェイト」の方は一週間というタイム・リミットが設けられていることもあり、人間メイクオーヴァーの方は、整形手術で手を入れるというよりも、カウンセリングやワーク・アウト、着こなしやメイキャップ等の、手術には頼らないタイプの人間改造が主体だ。


番組ホストはジェイ・マグロウで、この名前を耳にしたことがない者でも、彼がドクター・フィルことフィル・マグロウの息子だと聞けば、少なくともアメリカに住んでいる者ならどこの誰だかぴんと来るだろう。現在シンジケーションで放送中の「ドクター・フィル」は、かの「オプラ」に次いで人気の高い日中トーク・ショウなのだ。人生指南の達人として知られるドクター・フィルの息子も、やっぱり似たような商売をやっている。


その他、「リノヴェイト」には他のメイクオーヴァー番組同様、カーペンターやメイキャップ・アーティスト/ヘア・デザイナー、インテリア・デザイナー等がいるのだが、ここがいかにもFOXだと思わせるのが、カーペンターとして登場するゴージャス・ボディの三つ子のダーム姉妹の存在だ。この姉妹、カーペンターとしての腕よりもボディの方を買われたのは明らかで、こういう建築現場で肌を露出し過ぎるのは危険なはずなのに、ほとんど常に短パン、タンクトップ系の、素肌を出して身体のラインを強調する服ばかり着ている。この辺の人選がFOXなんだよねえ。こういうゴージャスねーちゃんが3人揃って画面に登場すると、それなりに目を奪われるのは確かなんだが、しかしよく見ると、その顔はただ派手なだけで、決して美人とは言い難い。どちらかと言うと、インテリア担当のアジア系のカヒ・リーの方が私の好みだと思うのであった。


「リノヴェイト」は人間改造と家屋の両方のメイクオーヴァーをいっぺんにやってしまおうという番組だから、その人選には、その両方に何か問題を持っているという家庭が選ばれる。その番組第一回に登場した家庭は‥‥あれ、こいつら、ビギンズ家の人間じゃないか。「トレイディング・スパウスズ」でナカムラ家のタミーとその妻の座を交換していたメラを筆頭とするビギンズ家の面々が、またFOXのリアリティ・ショウで堂々と二度目の登場だ。なんでこいつらばかり何度も何度も出てくるんだ?


実はビギンズ家は、元々はこの「リノヴェイト」に登場することが最初に決まっていたらしい。ところが、何かと家族に問題があるビギンズ家を見た番組プロデューサーが、彼らは「スパウスズ」にもいけると判断、急遽両方の番組に出演が決まった (「リノヴェイト」と「スパウスズ」は同じプロデューサーによる番組だ。) その結果、番組撮影が早く終了した「スパウスズ」の方が先に放送になったということだ。いずれにしてもビギンズ家の人間は新築の家を一軒丸々プレゼントされたに等しく、羨ましい限り。


最近のこの種の人間メイクオーヴァー系の番組は、たぶん、番組をよりドラマティックにするためだろうが、たんなる痩せすぎや太りすぎ、あるいはただ単に美人とは言えない出演者を登場させるのではなく、なんらかの形でハンディキャップを背負っている者を選ぶという場合が非常に多くなっている。ビギンズ家の場合だと、ハンディキャップといっても、せいぜいが人よりちょっと金がなく、家族全員が肥満という程度くらいでしかないが、番組第2回のロージャー家の場合は、長男のスティーヴがスノウボードの事故で半身不随となり、車椅子の生活を余儀なくされる。一家の主のゲアリーはストレスから煙草の量が一日3箱と増え、みるみる痩せ細って肺ガン患者みたいになってしまう。


番組はそのロージャー家の家を、スティーヴが一人でどこにでも行き来できるようなバリア・フリーの家に改築し、さらにスティーヴが車椅子生活で運動不足に陥らないように、室内プールまで設置してしまう。広い場所はとれないため、水を循環させ、それに対抗して泳ぐというシステムの、それほど大きくはないプールだが、それでもプールはプールだ。さらに力をなくしたゲアリーに対しては、カウンセリングやワーク・アウトによって煙草を辞めさせ、体力をつけさせるなど、至れり尽くせりだ。


実は、こういうハンディキャップを持った者に援助の手を差し伸べるという傾向が最も顕著に現れているのは、「リノヴェイト」ではなく、ABCの「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション」の方で、最近のこの番組に登場する出演者は、本当に貧乏で金がないとか、片親だとか、聾唖だとか、寝たきりだとか、やたらと大家族だとか、毎回明らかになんらかのハンディキャップを背負っている者を選んでいる。


近年のリアリティ・ショウの流行は、CBSの「サバイバー」、ABCの「ミリオネア」、FOXの「アメリカン・アイドル」等に端を発する、勝ち抜きコンペティション系番組の人気に大きくあやかっている。しかしここへ来て、「リノヴェイト」や「ホーム・エディション」のような、番組に競争の要素を持ち込まない番組が頭角を現し始めた。実はかくいう私も、最近の勝ち抜き系のリアリティ・ショウはあざとすぎる、ちょっとついていけないと思い始めていた。別に番組が競争で成り立っている以上、時に相手を蹴落として勝ち残っていくのは当然であり、それがドラマを生み出して面白いのではあるが、ものには限度というものがあり、あまりにもそれだけだと逆に興醒めだと最近思うようになってきた。


たぶん「リノヴェイト」や「ホーム・エディション」のような癒し系 (そこまで柔らかいわけでもないが) に近い乗りの番組がそれなりに人気を得ているのも、私と同じように感じる視聴者がかなりいるからではないか。CBSの「アメイジング・レース」は、勝ち抜きリアリティとはいえ、あまり裏切りとかは関係のない、かなり前向きの番組であり、この番組の人気は、そういう出演者の姿勢に負うところが大きかった。


FOXの人間メイクオーヴァー番組の「スワン」ですら、この番組に出演してメイクオーヴァーを受けるのは、ハンディキャップを負っていたり、なんらかの不仕合わせな立場にいる者だったりと、最初わざわざメイクオーヴァー・ショウに競争の要素を持ち込んで派手に盛り立てようとして出発した番組のわりには、番組の第2シーズンはソフト化路線を歩んでいる。昨シーズン、「サバイバー」を凌ぐ視聴率を獲得して話題を独占したNBCの「アプレンティス」が、第2シーズンにそれほど大した成績を収めていないのも、今現在、この種の勝ち抜きリアリティとしては最も裏切りや駆け引き、足の引っ張り合いの多い「アプレンティス」に、ついていけないと思う者が増えたためではないか。


「リノヴェイト」は、そういう視聴者の嗜好の変化を微妙にかぎ分けて製作した番組であるように私には思える。もちろん、勝ち抜き系のリアリティ・ショウが今後まったくなくなるとは到底思えないが、時にはそうではない癒し系のリアリティ・ショウがあってもいい。「リノヴェイト」や「ホーム・エディション」のような番組の勃興は、今後、リアリティ・ショウのさらなる多様化を予想させてくれる。もちろん、それこそが一視聴者としての私の希望であることも言うまでもない。







< previous                                    HOME

 

Renovate My Family

リノヴェイト・マイ・ファミリー   ★★1/2

 
inserted by FC2 system