放送局: ABC

プレミア放送日: 2/15/2004 (Sun) 20:00-21:00

製作: トム・フォーマン・プロダクションズ、エンデモル

製作総指揮: トム・フォーマン

共同製作総指揮: ルイス・バレート、ジャネリ・フィオリト

製作: マーク・レインズ

監督: パトリック・ヒギンズ


内容: 流行りの家屋リフォーム/リニューアル・リアリティ・ショウ。


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昨年、アメリカTV界は「ジョー・ミリオネア」「アメリカン・アイドル」旋風が吹き荒れた。しかし、大ヒットした両番組ほど話題になることはなかったが、実はそれよりも根深いところで、着実に、安定した人気を獲得したリアリティ・ショウの一ジャンルがある。TLCの「トレイディング・スペイシズ (Trading Spaces)」に端を発する、ホーム・リニューアル/リフォーム番組がそれだ。


現在、リフォーム番組のブームは、徐々に他のすべてのチャンネルに飛び火しつつある。昨年始まった、「トレイディング・スペイシズ」の成功にあやかろうとして製作されたこの種の同工異曲のリアリティ・ショウだけでも、ゆうに10本を超えるのだ。因みに、どのチャンネルがなんという番組を始めたかということを記すと:


「モンスター・ハウス (Monster House)」(ディスカバリー)

「クリーン・ハウス (Clean House)」(スタイル)

「デコレイティング・ダービー (Decorating Derby)」(HGTV)

「ラリー・ラウンド・ザ・ハウス (Rally Round the House)」(ディスカバリー)

「アウター・スペイシズ (Outer Spaces)」(HGTV)

「デイト・ウィズ・デザイン (Date with Design)」(HGTV)

「マージ (Merge)」(ライフタイム)

「ハウス・ルールス (House Rules)」(TBS)

「ミックス・イット・アップ (Mix It Up)」(We)

「クリーン・スイープ (Clean Sweep)」(TLC)

「ハウス・ウォーズ (House Wars)」(USA)

「メイク・ルーム・フォー・ベイビー (Make Room for Baby)」(ディスカバリー・ヘルス)

「ノック・ファースト (Knock First)」(ABCファミリー)


とまあ、以上のように、元々この種の番組ばかりを編成していたHGTV (Home & Garden Television) は当然として、女性向け番組専門チャンネルのライフタイムやWeまでもが、リフォーム番組に手を染め始めている。どうもどれも似たり寄ったりの粗製濫造番組のような印象を受けるが、この中のいったいどれくらいが生き残るのか。Weの「ミックス・イット・アップ」なんて、「フレンズ」のコートニー・コックスと旦那のデイヴィッド・アークエットの二人がプロデュースしており、番組が始まる前の注目度という点ではかなり高かったが、既に視聴率が稼げなくてアップアップしているという話が伝わってきている。


とはいえ、現時点で「トレイディング・スペイシズ」の後釜を継ぐ番組の最右翼と思えるのは、ABCが放送している、「エキストリーム・メイクオーヴァー」のスピンオフ番組、「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション」だろう。実はこの番組、ABCが毎週放送の新番組として編成に組み入れたのは2月からのことだが、それに先立つ昨年12月に、特番として一回こっきりではあるが、試しに番組は放送されている。それが好評だったためにシリーズ化したわけだ。「エキストリーム・メイクオーヴァー」自身も、そもそもの発端は一昨年の12月放送の特番で、それが意外に高い視聴率を獲得したのでシリーズ化されたという経緯がある。共に似たような経緯をたどってシリーズ化されたわけだ。


「エキストリーム・メイクオーヴァー」は、顔の整形に始まって、脂肪吸引、歯列矯正、豊胸手術に視力/聴力矯正等、とにかく金で直せるなら自分の身体の気に入らない部分すべてに手を入れてしまい、その人間改造が進む様をとらえたリアリティ・ショウだ。要するに「ホーム・エディション」はそのホーム・リフォーム版で、なんといってもアメリカのTV局で最も豊かな財力を誇るネットワークTVという立場を最大限に利用、他のTV局ではリフォームにせいぜい数千ドルから1万ドルくらいの予算しかかけられないところを、ほとんど金銭面での制約は無視して、徹底的に改装してしまおうというところがポイントだ。


「トレイディング・スペイシズ」の場合、基本的に予算はたったの1,000ドルで、それでキッチンならキッチン、リヴィングならリヴィングの一部屋のみを改装する。それでも、たった一部屋といっても、1,000ドルなんてあっという間になくなってしまう。よくよく気をつけてマネジメントしないと、材料費代すら出ないのだ。そのため「スペイシズ」では、改装を担当する者のアイディアが大きく物を言う。より少ない出費で、よりスマート、快適、ゴージャスにリフォームしなければならず、しかもそれを2日以内で完了しなければならない。どちらかというと「スペイシズ」では、その辺のアイディアこそが改装を担当する者の腕の見せ所となっている。


一方「ホーム・エディション」では、今度は逆に、アイディアを思いつくと、金銭的制約がほとんどないのをいいことに、どんなに大掛かりなアイディアでも、それを実現させてしまう。一応こちらも一週間なら一週間という期限はあるので、人海戦術で何十人もの人手を投入、とにかく最初のアイディア通りにリフォームを完成させてしまうのだ。改装自体も、一部屋ではなく家の外観、内装を全部、さらにそれだけでは飽き足らなく、庭や植木、プールにまで手を入れる。庭にプールを持つような家が人任せでリフォームなんか頼むなよという気もしないではないが、それがアメリカという国なのだ。


リフォームに際しては、大所帯でわっせわっせと事を運ぶから、時に意志の疎通を欠き、あちこちで衝突が起こることにもなる。このような大改造の場合だと、デザイナーだけでも、基本的な設計士の他にインテリア・デザイナーやガーデニング・デザイナーみたいな、デザイナーと肩書きがつく者だけでも数人おり、実はその境界線はそれほどしっかりと引かれているわけではない。そのため、子供みたいな縄張り争いが起きる。あんた、おれの承諾もなしにそこに手を入れるんじゃねえ、私に訊かないで勝手にそこ塗り替えないでよね、みたいな小競り合いがほとんど日常茶飯に起きる。なにもそこまでむきにならないでもと思ったりもするのだが、しかし、リアリティ・ショウというものは、そもそもそういう参加者の生の感情の発露を楽しむものであり、それは番組レギュラーとて例外ではない。


特に「ホーム・エディション」の場合、「スペイシズ」で人気を獲得したイケメン大工のタイ・ペニントンを臆面もなく起用、しかもほとんどホスト的なことまでやらせている。女性に人気のあるペニントン効果をあてにしているのが見てとれる。つまりこの番組、本当に「スペイシズ」のパクりなのだ。しかし、ここまで金をかけて製作すると、やはりそれなりに見応えはあると言わざるを得ない。要するに、インディ映画をハリウッドでリメイクするようなものだ。


「エキストリーム・メイクオーヴァー」では、その醍醐味は、ビフォア&アフターで顔とスタイルがどこまで変わったかを見て驚く楽しみ、そして、その変わったことで自信をつける本人の、整形手術だけでは変わらない部分の変化の発露、そして手術後に対面する家族や友人の反応にある。「ホーム・エディション」も当然そうで、改装前と後で、果たしてどれほど家の外観と内装が変わったかを見るのが楽しみの第一義であることは確かであるが、しかし、何よりも視聴者の本当の興味の焦点は、その様変わりした自宅に帰ってくる住民の反応を見ることにある。


実は「ホーム・エディション」を見たのと相前後して、たまたまうちの女房が日本のレンタル・ヴィデオで「劇的ビフォーアフター」という日本の同様の家屋リフォーム番組のテープを借りてきた。見てみると、この2本の番組の構成自体には、ほとんど差はない。老朽化が進んだり、あるいは住人の数が変化したりして、住みにくくなった家に手を入れるという骨子だけを見ると、ほとんど同一と言っていい内容なんだが、見た後の印象が非常に違う。


要するに、リフォームに対する住人の考え方、およびデザイナーの考え方が、洋の東西でまるで異なるため、でき上がった番組から受ける印象まで、まるで異なるものとなってしまっている。例えば「ホーム・エディション」では、気に入らないものがあると、取り去るか壊してしまい、まるで別の、まったく新しいものをこしらえてしまう。そこには躊躇いなぞない。ところが「ビフォーアフター」では、できるだけ昔からそこにある物を利用したり、あるいは手を入れたりして、古い物の有効利用を図ったりしている。たぶん、そういった物作りの姿勢、ひいては国民性のためだろう、「ビフォーアフター」は、かなり湿り気のある番組になっている。「ホーム・エディション」でももちろん以前からあったものを再利用したりすることもあるが、「ビフォーアフター」のようなさり気ない細やかな心遣いをここに求めるのは、まったくのお門違いだ。


また、「ホーム・エディション」でリフォーム後に家に帰ってきた住人があまりもの変貌に感極まって涙をこぼしたりすることがあっても、それはかなりあっけらかんとしたものであって、「ビフォーアフター」のようなしみじみとしたものにはならない。基本的に、お色直しをした自分の家を見て、声を上げて飛び上がって喜んだり、デザイナーたちを誉め称えたりする、という反応が一般的だ。それは、お年寄りの家、つまり、老朽化している家に手を入れることの多い「ビフォーアフター」と、それよりは若い、子供もいる世帯のリフォームが多い「ホーム・エディション」という点にも関係していると思われる。どちらも結構面白く、どちらが好きかは、単に個人の好みの問題だろう。私としては、両方交互に見るのが面白いかな。






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エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション   ★★1/2

 
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