放送局: TLC

プレミア放送日: 3/7/2004 (Sun) 19:00-21:00 (8 weeks)

製作: バニアン・プロダクションズ

製作総指揮: スーザン・コーエン‐ディックラー、イアン・ディックラー、レイ・マーレイ

ホスト: ペイジ・デイヴィス


内容: 家屋リフォーム/エンタテインメント番組の嚆矢である「トレイディング・スペイシズ」が、勝ち抜きリフォームという新ジャンルに挑む。


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「トレイディング・スペイシズ (Trading Spaces)」は、元々は英BBCの人気番組、「チェンジング・ルームス (Changing Rooms)」を、アメリカ風にリメイクしたものだ。ある二組のカップルに1,000ドルの予算と2日間の時間を与え、お互いの部屋をとりかえっこして改装させるという、ごくごくシンプルな体裁のリアリティ・ショウだ。そこには「サバイバー」のような裏切りや駆け引きはまったくない。2000年の秋から始まり、じりじりと人気を獲得、既に翌2001年にはTLCを代表する人気番組に成長している。


昨年、リフォーム予算を普段の100倍の10万ドルに上げて製作した特番は、番組の視聴率どころか、チャンネルの視聴率記録を軽々と更新した。現在では、通常ならカップル同士で行うリフォームを家族全員で担当する、「トレイディング・スペイシズ: ファミリー」いうスピンオフ番組が登場している。一回こっきりの特番かと思われたが、現在でも続いているところを見ると、TLCは「ファミリー」もあわよくば人気番組として定着させる狙いのようだ。


「スペイシズ」はさらに飛び火して、現在、男の子チーム対女の子チームという構図の「トレイディング・スペイシズ: ボーイズ vs ガールズ」というさらなるスピンオフ番組が登場している。これはTLCの姉妹チャンネルのディスカバリー・キッズが放送しているだけでなく、ディスカバリー・ネットワークスがNBCの土曜朝の時間帯を借り受けて、子供向けに自分たちの番組を編成する時間帯でも編成している。その結果、ついに週末の朝という、TVを見ている一般視聴者は極めて少ない時間帯ではあるが、「スペイシズ」シリーズは、ネットワーク進出も果たすことになった (元々ディスカバリー・ネットワークスにはNBCの資本が入っている。)


さらに今年現れた新たなるスピンオフ「トレイディング・スペイシズ: ホーム・フリー」は、これまではほとんど競争とは無縁で、アット・ホームな雰囲気の中で進んできた「トレイディング・スペイシズ」に、ついに「サバイバー」並みの競争を持ち込み、優勝したチームには家を一軒プレゼントする (正確には現在支払っている最中の家のローンを立て替えてあげる) という、勝ち抜き型リアリティ・ショウの形態を踏襲している。元々「スペイシズ」は、そのような、相手の裏をかいて、蹴落とし、勝ち抜いていくタイプのリアリティ・ショウについていけないと思った、中高齢者以上の視聴者にアピールしたからこそここまで人気が出た。それが逆に、ついに勝ち抜き型にも手を染め始めたわけで、番組のこの変節には大いに興味が惹かれるところだ。これまた人気が出たら、シリーズ化を意識しているに違いない。


「トレイディング・スペイシズ」のホストは、最初のシーズンはアレックス・マクレオが担当していた。マクレオは、いい加減こういう毒にも薬にもならないような番組のホストに飽き飽きしたようで、たった1シーズン、ホストを担当しただけで辞めてしまった。その後、次にマクレオの顔を見たのは、昨年、最も話題騒然となった騙し系のリアリティ・ショウ「ジョー・ミリオネア」(FOX) のホストだったから、「スペイシズ」を退屈だと思っていたのは間違いあるまい。次に「スペイシズ」のホストの座に座ったのが、現在まで続いているペイジ・デイヴィスだ。彼女はうまい具合に、ちょうど「スペイシズ」人気が上り調子となった時からホストを務めたことで、「スペイシズ」の顔となった。現在まで続いているだけでなく、「ホーム・フリー」のホストも彼女が担当している。


さて、その「ホーム・フリー」、視聴者から選ばれた8組16人のカップルが、毎回トーナメント方式で凌ぎをけずる。やっていることそのものは「スペイシズ」とほとんど同じで、要するにお互いの家の部屋をとりかえっこして改装しているだけだ。ただし今回は優劣を決め、勝者と敗者を選別しなければならない。その決定は視聴者に任されており、FOXの「アメリカン・アイドル」よろしく、電話投票で得票数の多いカップルが次のラウンドに進む。


とまあ、それはいいんだが、この、「ホーム・フリー」、やっていることは「スペイシズ」とほとんど変わらない。それなのに、「スペイシズ」は30分番組なのに、なんで「ホーム・フリー」のプレミア・エピソードは2時間もかかるんだ。「スペイシズ」を思い切り水増ししたら「ホーム・フリー」になったという印象が濃厚で、30分の「スペイシズ」ですら私にとってはほとんど退屈、よく言って気晴らし程度にしか思えないのに、これを2時間は、はっきり言って苦痛だ。録画でよかったと思いながら、ところどころ早回しで見ていたのであった。


かなり話題になり、人気があるというので時々は私も「スペイシズ」を見ているのだが、残念ながら私は、まだ「スペイシズ」を面白いと思えるほど老けてはいない。たとえそこに流行りの勝ち抜き競争というフォーマットを導入しようとも、それでも、私にとって「スペイシズ」および「ホーム・フリー」は、見ていて「退屈」という印象を拭えない。


実際の話、「スペイシズ」は、いくらアット・ホームな番組といっても、そこは何が起こるかわからないリアリティ・ショウ、時としてリフォームそのものを失敗したり、あるいはたとえ友人知人同士でも、してもらいたいことの読み違いが起きるのは避けられず、稀にではあるが、リフォームに失敗して、参加者がショックを受けて泣き出したりすることも起きる。実は番組で最も人々の話題になるのは、こういう、失敗したリフォームを放送した回だったりする。やはり「スペイシズ」もリアリティ・ショウである限り、こういう、何が起こるかわからない的な展開が、やっぱり最も刺激的なのだ。


「スペイシズ」が毎回毎回そういう展開であれば、私も面白いと思って見ると思う。しかしそうではなく、基本的に、最後にはお互いの健闘を誉め称え合うというのがほとんどわかりきっている「スペイシズ」は、どうしてもできレースを見ているような気分になってしまい、やはり、エキサイトメントを求める若い視聴者にはアピールしないだろう。その上、たかだかたった1,000ドルの予算での一部屋のリフォームなんか、ABCの「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション」を見た後では、ちゃちくさくてかなわない。


その点をなんとかしようと思ってこその勝ち抜きリアリティの体裁を採用した「ホーム・フリー」なのだろうが、確かに、見場は多少派手にはなったろうが、それでもまだまだだ。特にCBSの「サバイバー」やNBCの「アプレンティス」なんて、裏切り復讐二枚舌の世界に慣れきった視聴者に、「スペイシズ」や「ホーム・フリー」の清く正しいリアリティ・ショウは、やはり興趣に乏しく感じてしまう。しかし、とはいえ、時にこういう番組を見るのがなにやら新鮮に感じるのは、私も否定するものではない。あと20年経ったら、私も「スペイシズ」の常連視聴者になっているかもしれない。「スペイシズ」には、それまで頑張っていてもらいたいというのが、今の正直な感想である。





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トレイディング・スペイシズ: ホーム・フリー   ★★

 
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