Promising Young Woman


プロミシング・ヤング・ウーマン  (2021年4月)

やっと第1回目のモデルナ製のコロナウイルス・ワクチンを射ってきた。私の住むニュージャージーはワクチン接種のスピードがお隣りのニューヨークに若干遅れていて、4月頭に60歳以上は接種可となっていたがもうちょっとで対象年齢に届かず、そんなこんなしているうちにニューヨークは16歳以上なら誰でも接種可の状態になった。 

 

4月中旬からニュージャージーでも接種対象年齢が拡大し、我々夫婦も無事その対象になって接種を受けられるようになったのはよかったが、しかし今度は急激に対象が増えたために、早くワクチンを射ちたい者たちが一斉に近くの医療施設で予約をとろうと殺到した。電話するとどこぞのサイトで予約しろと言われ、アクセスしてみるとそこは予約するための登録をするためのサイトで、しかも連絡は約束できないと但し書きされていて、まったく役に立たない。 

 

それでとにかく近場で他にないかと探して、徒歩15分くらいのところのドラッグ・ストアでもワクチン接種していることを見つけ、登録しておいたところ、すぐに連絡が来て、翌日接種となった。射った時はなんともなかったが、その晩から肩が筋肉痛で、腕が地面から水平に持ち上がらない。なんでも2度目の接種の時の方が症状は重いらしく、既に接種済みの私の知人たちに聞いても、だいたいそう言う。これじゃ次が思いやられる。 

 

一方で、予約なしでほとんどすぐに誰でも接種できる大型会場では、逆に閑古鳥が泣いているらしい。要するにワクチンを信用していない者たちが射ち控えしているために、いきなり今度は一部でワクチンがだぶついており、場所によって需要と供給のバランスがとれていない。 

 

いずれにしても、ニューヨーク近郊では加速度的にワクチン接種済みの者が増えていることは確かで、いきなりあらゆる施設の人数制限やマスク着用義務が解除されつつある。となると今度は、室内大人数でもマスクを着用しない者やそれに対する懸念を持つ者とで人々の反応が二分される。まあ、これまでの道程を考えると、どっちに転んでもスムーズに物事は運びそうにないなと思わされる。 

 

さて、「プロミシング・ヤング・ウーマン」だが、かつてレイプされ自殺した親友のために、世のすべての男どもに復讐を決意した女性を描く。まあ復讐といっても可愛いもんで、酔っ払って人事不省になったふりをし、下心ありありで近づいてくる男どもに土壇場で素面になってしっぺ返しするという、他愛もないといえば他愛もないものだが、それでも、これをやられた男はプライドを痛く傷つけられる。 

 

一つ気になったのは、酔った振りをして男のアパートに入り込むキャシーは、男のプライドを打ち壊して復讐を遂げるのだが、そこで本気でキャシーをレイプしようとする男はこれまでいなかったのかという点だ。男のアパートで二人きりなのだ。男が本気でキャシーに襲いかかり、ヴァイオレンスに訴えても構わないと考えていたら、キャシーがその場を乗り切れる可能性はなさそうに思える。しかしキャシーの復讐ノートには、これまで成功した獲物の数が刻み込まれている。失敗例はなさそうだ。しかしその気になっている手負いの男は、実はかなり怖いんではないか。一方でもし自分が男の立場にいると考えてみると、その気でいたところいきなり相手が素面で見つめ返してきたら、たしかにその気は飛んで行きそうだなと思わないこともない。 

 

主演のキャリー・マリガンは、10年ほど前の「ドライヴ (Drive)」で世界一可愛い女性を演じ、その数年後には「遥か群衆を離れて (Far from the Madding Crowd)」でいきなり成熟した女性になっていて、それが今や両親と同居している行き遅れの、親が将来を心配するとうが立ち始めた娘という役どころだ。今でもやはり美貌であるのは間違いないのに、そりゃクラブでべろんべろんになっていたら男はほっておかないとは思うが、そうじゃなくたって男は寄ってくるだろうと、なんか思わずやり場のない憤りを感じる。 

 

マリガン扮するキャシーに本気で惚れるのがかつて医学校で級友だったブライアンで、しかし、彼には本当に下心はないのか。演じるのは「エイス・グレード (Eighth Grade)」脚本演出のボー・バーナムで、ああいう発想の男がキャシーに惚れるのはわからんではないと思わせといて、もう一捻りある。 

 

脚本・監督のエメラルド・フェネルは、BBCドラマの「コール・ザ・ミッドワイフ (Call the Midwife)」に出ていたが、やはり彼女の名をメインストリームに押し上げたのは、製作サイドに回ったBBCアメリカの「キリング・イヴ (Killing Eve)」だろう。今後は演じる方ではなくて演出する方に重点を置くものと思われる。名前通りに、このアウォーズ・シーズンで目にした時はいつもエメラルドの色を配したドレスを着ており、実際よく似合っていた。 

 

ところで「遥か群衆を離れて」監督のトマス・ヴィンターバーグは、今年のオスカーで「アナザー・ラウンド (Another Round)」で国際長編映画賞を受賞している。ヴィンターバーグは授賞式にも来ていたから、同じく「プロミシング・ヤング・ウーマン」で主演女優賞にノミネートされていたマリガンと久闊を叙したに違いない。 


 










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キャシー (キャリー・マリガン) は、30歳で今でも両親と同居している医学校のドロップアウトだ。昼は近くのコーヒー・ショップで働いているが、週末は夜な夜なクラブで泥酔するまで飲み、そしてチャンスと見た見知らぬ男が介抱するように見せかけて部屋に連れ込み、一発やってしまおうとベッドに押し倒そうとしたところでいきなり素面に戻り、男に思い切り恥をかかせるということを日常としていた。実は彼女の医学校時代に、男に回された挙げ句に自殺した親友のニーナがおり、キャシーは世の男どもに代わって復讐を果たしていたのだった。そのキャシーでも、本気で近寄ってきたブライアン (ボー・バーナム) には、思わず心が動く。そんな時、かつてニーナをレイプしたアルが町に戻ってきて結婚する予定があることを知る。キャシーはアルに復讐を果たすべく計画を練る‥‥ 


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