ミリオン・ダラー・マイル  (Million Dollar Mile) 

放送局: CBS 

プレミア放送日: 3/27/2019 (Wed) 21:00-22:00 

製作: フライ・オン・ザ・ウォール・エンタテインメント、スプリングヒル・エンタテインメント 

製作総指揮: レブロン・ジェイムズ、マヴェリック・カーター 

ホスト: ティム・ティーボウ 

  

内容: 挑戦者をプロのアスリートと勝負させる障害物競走。6つの種目で競い勝った場合の賞金は100万ドル。 


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Million Dollar Mile


ミリオン・ダラー・マイル  ★★

このサイトでは、アメリカの体力勝負勝ち抜き系リアリティ・ショウについて結構書いている。私自身、これらの番組の筆頭であるNBCの「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー (American Ninja Warrior)」のファンでもあり、この種の番組はほとんど目を通している。 

 

年明け早々には、NBCは今度は体力勝負は体力勝負でも、筋肉系に特化した「ザ・タイタン・ゲームズ (The Titan Games)」を編成した。そして今回CBSが投入するのが、「ミリオン・ダラー・マイル」だ。 

 

「ミリオン・ダラー・マイル」は、LAという街を一つの障害物に見立て、街なかに設えられた6つの障害物をクリアするコンペティション・レースだ。ディフェンダーと称するプロのコンペティターと一緒に走り、障害物をディフェンダーより早くクリアする毎に、賞金を獲得する、最初の障害物に勝てば1万ドル、全6つの障害物に勝って先にゴールした場合の賞金は100万ドルだ。要するに、だいたい1マイルを走って相手に勝てば100万ドルということから番組名がついている。 

 

参加者と一緒に走るディフェンダーは、スパルタン・レースやタフ・マッダー・レース等、この種の耐久レースで実績のある、いわばプロだ。それを相手に対等に勝負してはいくらなんでも勝ち目がないので、挑戦者には2分のアドヴァンテージが与えられている。 

 

「タイタン・ゲームズ」もそうだったし、アメリカでこの種の番組を製作すると、だいたい2者、もしくは2ティームが競争するコンペティション・タイプのレースになる。「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー」みたいな、一人ずつタイムを競うという風にならないところが、いかにもアメリカ的だ。「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー」だって、結局は「ニンジャ vs ニンジャ (Ninja vs Ninja)」や「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー・ジュニア (American Ninja Warrior Junior)」というティーム戦で、2者が同時に勝負するというヴァージョンが生まれているし、新シーズンの「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー」では、予選の上位2名を勝負させて勝った方を予選決勝をパスしてマウント・ミドリヤマでの決勝までスルーさせるという、一対一の勝負が組み込まれた。 

 

さて「ミリオン・ダラー・マイル」は、LAの市街地で勝負が行われるのがミソだ。街なかのビルの合間の空間に障害物を作り、あるいはビルの外壁をよじ登るなど、ビルそのものを障害物に見立てる場合もある。一般道を走るため、日中開催は無理だ。そのため競技が行われるのは、日も暮れてオフィス街から人がいなくなった夜だ。しかし、確かに降ろしたロープを伝ってビルの外壁をよじ登るというのは、都市部でしかできないもので、視覚的効果は高い。こういういかにも都市部における障害物競走というのを演出したかったのだろう。 

 

ホストはティム・ティーボウで、NFLの人気クオーターバックだったこともある。解雇後は今度はMLBに移籍して、現在NYメッツのマイナー・リーグに在籍している。思わずお前、メッツもクビになったのかと思ったが、考えれば現在はオフ・シーズンだ。しかしここまでベイスボールと無縁のTVにまで出張ってきているのは、乞われたからというよりも、ベイスボールもダメだった時の布石を打っておこうという考えではなかろうか。 

 

ティーボウに限らずこの種の体力系勝ち抜きリアリティは、スポーツ経験者が関係していることが多い。「ミリオン・ダラー・マイル」の場合、エグゼクティヴ・プロデューサーはNBAのスーパースター、レブロン・ジェイムズだ。「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー」のホストの一人アクバー・バジャ-ビアミラはNFL出身で、「タイタン・ゲームズ」はプロレス出身の現在ではハリウッド・スターのロックことドウェイン・ジョンソン製作・ホストで、同じくプロレス出身のジョン・シナはFOXで「アメリカン・グリット (American Grit)」製作・ホストを担当している。NBCの 「ストロング (Strong)」ホストのゲイブリエル・リースは元バレーボールのアメリカ代表だ。因みに「ストロング」製作のシルヴェスタ・スタローンは、本職のアスリートでこそないが、人が彼を見て思い出すのは、ボクサーのロッキー以外の何者でもあるまい。 

 

実は「ミリオン・ダラー・マイル」は、既に成績不振で棚上げされている。私も、LAのビルを背景に使うなど視覚的に見るべきものがないではないが、番組としては今イチと思わざるを得なかった。その最たる理由が、挑戦者の相手となるディフェンダーの選択の指針にある。むろん男性、女性、元アスリート、等の経験に合わせて選んでいるのだろうが、そもそも、なぜディフェンダーがいるのかという理由からして不透明だ。 

 

これが「アメリカン・グラディエイターズ (American Gladiators)」や「TKO: トータル・ノック・アウト (TKO: Total Knock Out)」等のような番組なら、一人といわず何人もディフェンダーがいて、挑戦者の邪魔をするし、そうする意味がある。しかし「ミリオン・ダラー・マイル」の場合、挑戦者の力に合わせてディフェンダーが選ばれるという、そこからして首を傾げざるを得ない。 

 

つまり、常に挑戦者よりは少し力があるに違いない者をディフェンダーに選べば、挑戦者が勝つ可能性はほとんどない。勝負がアマチュアとプロになる場合、結果は自ずから明らかだろう。たかだか2分のハンディキャップに大きな意味があるとも思えない。実際、最初の2回を見た限りでは、挑戦者がかなりディフェンダーに肉薄したという勝負もあったが、本気で勝てそうな気はしなかった。あるいは、挑戦者に力が近いディフェンダーを選べば、勝負が競るということであり、エキサイトメントを提供できる可能性もある。さらに、ディフェンダーがわざと手を抜いて勝負を面白くしているという見方も、完全には捨てきれない。 

 

いずれにしても、ディフェンダーの選定が任意である場合、勝負に公平性は求めるべくもなく、その中でも最も強いディフェンダーが出てきた場合、挑戦者が勝てる見込みはまずないだろう。こういう、番組の不完全さ、胡散臭さに視聴者は敏感だ。これでは視聴者の興味を引っ張れまい。 

 


 










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