チーム・ニンジャ・ウォリアー   Team Ninja Warrior

放送局: エスクワイア

プレミア放送日: 1/19/2016 (Tue) 20:00-21:00

製作: A. スミス&カンパニー・プロダクションズ、東京放送

ホスト: マット・アイズマン、アクバー・バジャ-ビアミラ

フィールド・レポーター: アレックス・カリー


内容: アメリカ版「SASUKE」こと「ニンジャ・ウォリアー」を、各チーム3人ずつから成るチーム対抗戦として製作。


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Team Ninja Warrior


チーム・ニンジャ・ウォリアー  ★★★

私は東京放送の「サスケ」のファンで、当然の如くアメリカではエスクワイア-NBCが製作放送しているアメリカ版「サスケ」こと「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー (American Ninja Warrior: ANW)」のファンでもある。


しかも「ニンジャ・ウォリアー」は私が思っていたよりもずっとアメリカ人にアピールしたようで、いつの間にやら全米予選からラス・ヴェガスでの決勝までをとらえるシリーズ番組としての「ニンジャ・ウォリアー」は、毎夏の風物詩となってしまった。


それだけでは飽き足らず、今では毎冬、日本のサスケ・オールスターズ、およびヨーロッパ選抜を加えた世界戦「USA vs ザ・ワールド (USA vs the World)」まで主催している。特に勝ち負けやタイムにこだわったところが、なんにでも競争原理を持ち込むアメリカ人気質に合致したようだ。海外のTV番組のリメイク権を買って現地版を製作する時は、その場所のテイストに合わせたローカライズのさじ加減が番組が成功するか失敗するかの大きな勘どころになるが、それがぴたりと決まった数少ない例の一つだ。


そして驚いたことにエスクワイア-NBCはそれだけでは飽き足らず、さらに新しいスピンオフを製作した。それが「チーム・ニンジャ・ウォリアー」だ。


「チーム・ニンジャ・ウォリアー」は読んで字の如く、これまでは個人競技だった「ニンジャ・ウォリアー」を団体戦にしたものだ。考えたら既に「USA vs ザ・ワールド」で国別対抗戦にしていたわけだから、国内でも団体戦にしても不思議はない。既にいくつもチームを作れるくらいのプレイヤーの人脈はできている。


そしてさらにもう一つ加えた捻りが、単に勝負をタイム争いにしただけではなく、各チームから一人ずつ出して同時に競技させる、パラレル・レースにしたことだ。


これは特に冬季エキストリーム・スポーツの進化と類似している。元々は個人でタイムや技の優劣を競う競技、例えばスキーやスノウボードは、今では多人数参加のクロスや、二者を同時にスタートさせるパラレルが新しく加わって競技に華を添えている。モーグルの様にタイムが関係してもどちらかというと技重視だった競技までがパラレルになったことで、競技者にプレッシャーがかかり、競る面白さが加わったことは確かだ。


そして「ニンジャ・ウォリアー」も、団体戦かつパラレル仕様になった。LAの、周囲をコンテナに囲まれた港にパラレル仕様特設ステージを設置、各チーム3人ずつ、計24チームを勝ち抜きで対戦させる。各チームは男二人、女一人の3人で構成され、毎回4チームが出場して回毎の優勝チームを決め、総合優勝を決めるファイナルに進む。基本的にコースは、「ANW」の予選第1ステージとほぼ同じものだ。


勝負は三つのヒートから構成され、最初の二つのヒートに勝利すると1ポイントずつ、アンカーの3人目が出る第3ヒートが2ポイントを獲得する。そのため最初の二人が負けてもアンカーが勝てば同点となり、両チームから代表を一人ずつ出してのタイ・ブレイカーになる。


予選と本戦があり、予選で勝った2チームは、今度は本戦で、予選で負けた方のチームと対戦し、これに勝った2チームが、この回の優勝を決める、コースを延長しての決勝リレーに進む。だから最初の勝負に負けたからといってそれで終わりではなく、逆転優勝の可能性は残っている。一方、予選に勝ったからといって次も楽勝とは限らない。実際の話、力の差は歴然としているわけではなく、本命と見られるチームだってちょっとしたミスが命とりになる。


実際、勝負が始まる前は、誰の目から見てもヴェテランもヴェテランのブレント・ステッフェンセンと、昨シーズン話題をさらった女性ニンジャ・ウォリアーの第一人者、ケイシー・カタンザロのカップルがいる、チーム・アルファが優勝候補の本命だったが、敢えなく敗退した。


また、これまでで最も印象的だった勝負として、これまたヴェテランのフリップ・ロドリゲスがキャプテンのチーム・ロウニン (浪人) が登場した、ファイナル第1戦がある。この勝負、ロウニンは序盤から対戦相手を圧倒し、最初の予選で3戦全勝、女子プレイヤーのティアナ・ウェバリーも、身長150cmとカタンザロと同じしかないのに、そり立つ壁をクリアした。本選でも楽勝で決勝リレーに駒を進めるかに見えたが、2勝した後の最後のヒートで、アンカーのJ. J. ウッズが焦ってダンシング・ストーンから落ち、2ポインツ同士の同点となってタイ・ブレイカーとなり、再度登場したロドリゲスが、スピン・サイクルでタイミングを狂わせて移動にもたつきまさかの敗退、一瞬のミスが命とりになるパラレルの難しさ、および面白さを証明した。ロドリゲスはその前のヒートでは、そり立つ壁の途中まで追う立場にいながら、ほとんど壁を駆け上ってコンマ何秒差で逆転勝ちするなんて勝負を見せていたのだが、それでもいつも必ず勝てるとは限らない。


結局最後の最後の優勝チームを決める決勝に残ったのは、ブライアン・アーノルド率いるパーティ・タイムと、トラヴィス・ローゼン率いるチームTNT。そして勝ったのはパーティ・タイム。アンカーのローゼンは、スピン・サイクルの着地で大きくコース・アウトし、その時のタイム・ロスを挽回できなかった。


それにしてもやはり特筆すべきは登場してくるアスリートのレヴェルの高さで、今では女性でもそり立つ壁はクリアしないと話にならない。つい数年前にカタンザロが女性で初めて反り立つ壁をクリアして話題になったが、今では例えばチーム・ミドリヤマのメーガン・マーティンは、走った3つのヒートすべてで一発でそり立つ壁をクリア、女子もスピードの時代に入ったことを証明した。因みにマーティンは、「ANW」で女性として初めてジャンピング・スパイダーもクリアしたことでも知られている。


「SASUKE」は、スポーツではあっても最終的に戦う相手は自分自身、みたいな自己克己的雰囲気を持っていた。しかし「ANW」は、あくまでも身体能力の高さでそういう壁を乗り越えて行ってしまう。力と技で障害物を捻じ伏せ、圧倒し、速さを競い、タイムを縮める。これはもう、日本のサスケ・オールスターズが出る幕はないなと思ってしまう。










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