London Has Fallen


エンド・オブ・キングダム  (2016年3月)

3年前に「エンド・オブ・ホワイトハウス (Olympus Has Fallen)」が公開された時は、ほぼ同時期に「ホワイトハウス・ダウン (White House Down)」や「G.I. ジョー: バック2リベンジ (G.I. Joe: Retaliation)」が公開されたこともあって、ホワイトハウスが襲撃されるプチ・ブームになった感があった。今回はまた似たことが起こらないようにと考えたか、主要なメンツは一緒でも、舞台はホワイトハウスではなく、ロンドンだ。


しかもロンドンはロンドンでも宮殿や官邸だけではなく、ほぼロンドン市街全域がテロの対象となり、ビルや橋が崩れ落ちる。かなりの部分をロンドンに見立てたブルガリアで撮影し、CGは前回にも増して多用しているだろうが、しかし、人の国をここまでやるかと思うくらい、派手にロンドンを破壊する。ロンドンに恨みでもあるのか。


さらに首相の国葬のために世界中から集まった各国首脳も軒並みやられる。皆、大した出番もなく、ほとんど冗談みたいにテロの餌食となる。「エンド・オブ・ホワイトハウス」では韓国大統領を殺害していたし、今回はそれ以上が求められたというのはあるかもしれないが、しかしいとも簡単に皆、テロリストの手によって倒れる。


数年前にロンドンに行った時に、当然バッキンガム宮殿にも行って衛兵を見物したのだが、あの中の誰かが実はテロリストで、女王暗殺を企てていたとしたら‥‥なんて想像は誰でもすると見えて、「エンド・オブ・キングダム」でもいきなり衛兵が銃をドイツ首相や民衆に向けて発砲する。しかも一人二人ではなく、見たところかなりの数の衛兵がテロリストの手先となっている。正直言って2、3年の仕込みじゃまったく足りない、これだけ用意するには10年20年のスパンで準備しないと無理だろう、それだってかなり実現の見込みは薄いと思わざるを得ないが、しかし、それを絵として撮りたかったのはわかる。


前回と変わらないのは、大統領がまたしても敵の捕虜になることだ。他の国の元首は皆命を落としており、アメリカ大統領も乗っているヘリに向かってミサイルをぶっ放されたところを見ると、最初はテロリストは大統領を捕虜にすることなど考えずに命を奪おうと考えていたようだ。しかし、なまじ助かって逃げのびていたのを捕らえたために、人質、もしくは見せしめとして有効に利用しようと考えを改めたようだ。おかげでマイクは大統領奪還に向けて獅子奮迅の働きを強いられる。


前作の「エンド・オブ・ホワイトハウス」の面白さは、かなりの部分「ダイ・ハード (Die Hard)」と共通するものがあった。つまり、一匹オオカミが神出鬼没で敵の裏をかいて現れ、一人二人と敵を倒してはまた姿をくらましながら段々敵の首領に近づいていく。


しかし今回は右も左もわからないロンドン -- MI6のセイフハウスをすぐに探し当てたところを見ると、まったくロンドンを知らないわけでもなさそうだが、しかしやはりホワイトハウスのように隅から隅まで知り尽くしているというわけでもあるまい。それなのにそこでテロリスト一味を倒して人質を奪還する。前作もある意味荒唐無稽だったが、今回はさらにそれに輪をかける。なんでマイクは他人の国で敵のアジトに潜入するなんて単独行動が許されるんだ。いくら指揮官と顔見知りでも、それを許すはずがない。


等々の突っ込みどころは今回も満載だ。普通こういうアクションは、見ている時はそれなりに興奮して楽しんでいるが、後でそういえばなんでああなるの、あれはおかしいこれもおかしいという風になるものだが、今回は見ている最中から、えっ、こういう展開になるの、ふうん各国首脳皆殺しちゃうんだ、で、アメリカ大統領だけ助かると。等々、強引過ぎる展開が結構目につく。マイクは今回も八面六臂の活躍で、まあ主人公だからいいけど、しかし少しくらいは怪我して然るべきなんじゃないのか、と思ってしまう。


しかし、まあ、今回はとにかくロンドン市街でドンパチすることに主眼があったようだから、それを言っても始まらないか (たとえ多くを他の街で代用し、CGを多用していようとも)。007シリーズといい、「ミッション・インポッシブル (Mission Impossible)」シリーズといい、以前はあまり見られなかったロンドン市街でのガン・アクションやカー・アクションを、近年よく目にするようになった。思うに、観光に力を入れるロンドンが、これまでは許可しなかった市街地での大掛かりな撮影を許可し始めたからじゃなかろうか。映画の舞台となることは、大きな観光のセールス・ポイントになる。007がロンドンでアクションすることは当然としても、おかげでアメリカ人のイーサン・ハントやマイク・バニングまでもがロンドンでアクションを展開する。


近年、トーキョーもわりとハリウッド映画に出てくる機会が多くなってきたと思うのだが、やはりポイントは歌舞伎町で銃撃戦することにある。コマ劇場を潰す時に、テロリストの手によって爆破されるなんてシーンが撮れたのになと思うのだった。演出はシネマックスの「バンシー (Banshee)」を撮っているババク・ナジャフィ。










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英首相が他界し、弔意を表するために全世界から各国の首脳がロンドンに集まってくる。急な事態でセキュリティが万全ではなく不安な点もあったが、そう言ってもいられない事態だった。米大統領のベンジャミン・アッシャー (アーロン・エッカート) も参列、信頼を置くシークレット・サーヴィスのマイク (ジェラルド・バトラー) も同道を要請される。実はマイクは妻のリア (ラーダ・ミッチェル) が身重で近々出産予定のため、危険な任務であるシークレット・サーヴィスを辞めるつもりでいた。ロンドンに各国首脳が集結し始め、そして懸念が現実のものとなる。これは数年前にアメリカの手によって家族の多くを殺された武器商人バーカウイが、時間をかけて練った要人のテロ殺害計画の一部だった。一人また一人と各国首脳が殺され、ベンとマイクにもテロの手が迫る‥‥


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