White House Down


ホワイトハウス・ダウン  (2013年7月)

つい最近ホワイトハウスが敵の手に落ちる「エンド・オブ・ホワイトハウス (Olympus Has Fallen)」を見たばかりだと思ったら、間髪を入れずに同様にホワイトハウスがターゲットになる「G.I. ジョー: バック2リベンジ (G.I. Joe: Retaliation)」が公開、それで打ち止めではなく、さらに今回「ホワイトハウス・ダウン」が公開されるにおよび、ここまでホワイトハウスが敵視されるのは何か理由があるのかと思ってしまう。 

  

しかも「G.I. ジョー」、「ホワイトハウス・ダウン」と連続してこれらの作品に主演しているチャニング・テイタムは、いったい何者か。「エージェント・マロリー (Haywire)」「サイド・エフェクト (Side Effects)」と、スティーヴン・ソダーバーグ作品に出ている時はどちらかというとまだ使えない新人という印象の方が強いチャニングが、別の作品に出ると世界を救う八面六臂の活躍を見せる。ま、ガタイがいいのは確かだ。 

  

「エンド・オブ・ホワイトハウス」の悪役は北朝鮮で、「G.I. ジョー」は見てないからよくわからないが、あれだけ変テコなニンジャ紛いのアクションの予告編ではあっても、日本を悪役にするのはアメリカべったりの現状から見てあまり説得力はなさそうで、やはりその辺は北朝鮮を中心にぼかしてあると踏んだのだが、どうだろうか。 

  

「ホワイトハウス・ダウン」では悪役は獅子身中の虫ということで、れっきとしたアメリカ人、それも本来なら大統領の護衛の最前線であるホワイトハウス付けのセキュリティを束ねている責任者で、勇退目前のウォーカーが謀反の首謀者だ。国のために戦い、中東で憤死した息子のために、国に対して報復を目論んでいるのだった。 

  

とはいえ、個人で強固なホワイトハウスの警護網を突破できるわけがないことは、責任者たるウォーカー自身が一番よく知っている。それでウォーカーは、同様に国に対して恨みを持っていたり、腹に一物を抱える者たちを一人一人ヘッド・ハントする。その結果、決して横の繋がりがばれることのない、プロのテロ集団ができ上がったのだった‥‥。なるほど、ホワイトハウスを攻め落とそうと考えるのは、なにも北朝鮮や中東の国々ばかりではないのだなと納得する。 

  

一方、シチュエイションは異なるが、「エンド・オブ・ホワイトハウス」と「ホワイトハウス・ダウン」では、敵の手に落ちそうになったホワイトハウスを奪還すべく、一人のヒーローが獅子奮迅の働きをするという骨子は一緒だ。「エンド」では、それは元大統領のシークレット・サーヴィスだった男であり、元々ホワイ トハウス内部を熟知している。 

 

「ダウン」では主人公のジョンはホワイトハウスに求職中であり、内部のことをよく知っているわけではない。しかし知人のキャロル (マギー・ジレンホール) が勤務しており、彼女が逐一携帯でどこに行けばいいかを教えてくれる。また、娘のエミリーはホワイトハウスおタクであり、彼女からの情報も役に立つ。という、両者共にホワイトハウスを舞台にした「ダイ・ハード (Die Hard)」ものであるという点は共通している。 

 

一方で敵のあり方や「ダウン」における娘エミリーの存在等、違いも多々ある中で最も大きな違いは、大統領だ。「エンド」では大統領を演じるのは白人のアーロン・エッカートで、「ダウン」では黒人のジェイミ・フォックスが大統領に扮して いる。エッカートは敵の手によって囚われの身となるが、フォックスはチャニングと行動を共にしながら、時には小銃をぶっ放したりしている。エッカートはシリアスだがフォックスはコメディが入っている。 

 

といった差が、両作品の印象をかなり異なったものにしている。特にシリアスとコメディによる印象の違いは大きく、主人公や敵の造型よりも大統領のキャラクターの違いの方が、作品に印象の差をもたらしている。むろん主人公は主人公だし、ヒーロー役がいてこそのアクションものなのだが、他にも「ダウン」における娘エミリーや、「エンド」における女性議員ルース等のサブ・キャラの方が、主人公並みに印象に残る。 

 

そして両作品の本当の主役は、大統領を守る主人公でも大統領でもなく、ホワイトハウスそのものだ。なんてったってアメリカの象徴であり、数々のいわれや由来や都市伝説がある。もしホワイトハウスの地下深くに建設されている、核が落とされても大丈夫というバンカーに入ることが許されるなら、見学してみたくない者なんていないだろうし、ジョン・F・ケネディがマリリン・モンローと密会した時に使用したという外部との秘密の通路が本当に存在しているなら、そこを通ってみたくない者なんていないだろう。大統領執務室から他の部屋に繋がる隠し通路や隠し部屋など、現代建築の粋というよりはまるで忍者屋敷であり、「G.I. ジョー」でホワイトハウスを襲う一味が忍者装束であるのも納得してしまう。ホワイトハウスはアメリカ人にとって大統領が住んでいる場所という以上に、謎と秘密に満ちているワンダーランドなのだ。 

 

演出はローランド・エメリッヒで、そういえば「インデペンデンス・デイ (Independence Day)」とか「2012」 とか、とにかく大災害やエイリアン襲来で、これまでに何度もホワイトハウスのみならず、アメリカ、引いては世界中の主要都市をことごとく壊滅的被害に遭わせてきた。次はどんな理由づけでどこを攻め落とすのだろうか。そろそろ地球規模では飽き足らず、太陽系が崩壊して、人類は新しい故郷を構築するために、人の住める惑星を目指して銀河系を脱出するような気がする。 










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ジョン・ケイル (チャニング・テイタム) は国会のスピーカー、ラフェルソン (リチャード・ジェンキンス) の警護の職に就いていたが、ソウヤー大統領 (ジェイミ・フォックス) を警護するシークレット・サーヴィスになりたいと思っていた。別居中の妻メラニー (レイチェル・ルファーヴル) と暮らしている娘のエミリー (ジョーイ・キング) は ホワイトハウスおタクで、ちょうどいい機会でもあり、ホワイトハウスでの仕事の面接のついでに見学もさせようと一緒に連れて行く。しかしちょうどその時、 ホワイトハウスを占拠する計画が着々と進んでいた。しかもその首謀者は長年先頭に立ってホワイトハウスを警備してきて、勇退寸前のウォーカー (ジェイムズ・ウッズ) だった‥‥


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