Live with Kelly and Michael   ライヴ・ウィズ・ケリー・アンド・マイケル 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 9/4/2012 (Tue) 9:00-10:00 

製作: WABC 

製作総指揮: マイケル・ゲルマン 

ホスト: ケリー・リパ、マイケル・ストレイハン 

 

内容: 新ホストを任命した朝のトーク・ショウ。


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Live! with Kelly and Michael


ライヴ! ウィズ・ケリー・アンド・マイケル   ★★1/2

昨年末、アメリカTV界の名物男であり、長年ABCの朝の人気トーク・ショウ「ライヴ・ウィズ・リージス・アンド・ケリー (Live with Regis and Kelly)」で、ケリー・リパと共に共同ホストを担当していたリージス・フィルビンが番組を辞めた。 

 

その後番組はフィルビンの後を継ぎ、ケリーと共に番組を支える共同ホストを、じっくりと腰を据えて探し始めた。それでも、私は年明け、遅くとも春くらいには次のホストが決まるだろうと思っていた。2004年に深夜トークの「レイト・レイト・ショウ (Late Late Show)」ホストのクレイグ・キルボーンが辞めた後、次のクレイグ・ファーガソンが決まるまで3か月ちょっとくらいかかったから、今度もまあそれくらい、いくら長くても半年はかからないだろうと思っていた。 

 

そしたら「ライヴ」、人選を引っ張る引っ張る。年が明けても候補を絞り込むといった噂すら聞こえて来ず、春になってもまだとっかえひっかえ臨時ホストがリパと共にホストを担当している。本当に決める気があるのか。決まらなければ決まらないで、ずっと臨時ホストで続いてもかまないと思っているとか。 

 

以前、2000年に「ライヴ」でフィルビンと共に共同ホストを担当していたキャシー・リー・ギフォードが辞めた時も、後任のリパが決まるまで1年くらい臨時ホストをとっかえひっかえしながらフィルビン一人が正ホストでやっていたらしいから、伝統的に「ライヴ」はホストが決まらない、というか、ホストの人選に念を入れ過ぎるくらい時間をかけるのが定番のようだ。 

 

結局、総勢59人に上る臨時ホストの後、リパの相方として新ホストのマイケル・ストレイハンの名前が決まったのは夏も本格的になってからで、しかもABC発表ではなく、内部情報が漏れた形でマスコミにすっぱ抜かれた。 

 

最初ストレイハンが新共同ホストに決まったというニューズがあった時は、もしかしたらガセネタの可能性も、と思ったりもしたが、それにしてはABCは否定の発表をしない。これはたぶんストレイハンに決まったというのは事実だろう。そうこうしているうちに、ストレイハン就任はもうほとんど既定の事実みたいになってしまった。 

 

ある時あれはABCの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America)」だったか「グッド・アフタヌーン・アメリカ (Good Afternoon America)」だったかを見ていたら、番組ホストの一人のジョシュ・エリオットが、ストレイハンに期待するみたいなことを堂々と言っていたので、ああ、これはもうABCは隠し通す気力なくしたなと思った。 

 

その後ABCは新ホストを9月4日の番組内で発表するとしたのだが、あまりにもとってつけたような対応で、番組内発表も何も、ストレイハンっていうのはアメリカ中が既にもう知ってんですけど。もしかしたら本当にストレイハンではなく、誰か別人が当日リパの相方として出てくるとか? 

 

ということはもちろんなく、新「ライヴ」は、「ライヴ・ウィズ・ケリー・アンド・マイケル」として、ちゃんとリパとストレイハンを新ホストとして始まった。あんまりABCがなんにも言わないから、逆にそれこそなんかあるかもと期待してみたりもしたのだが、まあ、そんなのあり得ないか。 

 

ストレイハンは、日本人視聴者にはまったく馴染みのない名前だと思うが、それもそのはずで、ストレイハンの前身は、NFLのニューヨーク・ジャイアンツのディフェンシヴ・エンド、つまり、プロのアスリートだ。アメフトはまったく得意なスポーツではないので、実はディフェンシヴ・エンドといってもどのポジションだか私はよくは知らないのだが、それでも、よく笑って人好きがし、TVレポーターからも好かれてよく試合後にインタヴュウされていた (つまりよく自分からインタヴュウに答えていた) ストレイハンは、スポーツ・ニューズで何度も顔は目にしており、よく覚えている。 

 

ジャイアンツを引退後は、ストレイハンはもっぱらNFL解説等をしてたのだが、2009年にはFOXでシットコムの「ブラザーズ (Brothers)」にダリル・ミッチェルと共に主演、共演にはCCHパウンダーらがいた。ストレイハンは引退したNFLプレイヤーという役どころで、まんまであり、結局「ブラザーズ」は数回放送されただけでキャンセルされた。それでも、プロのアスリートがネットワークのスクリプト番組に主演するということだけでも、なかなかのキャラクターであることを証明している。このネットワーク番組出演経験済みという経歴が、今回の「ライヴ」抜擢においても大きなファクターになっていることは確かだろう。 

 

ストレイハンは当然ながら大きなガタイで一見強面なのだが、すぐに顔が崩れて笑うと愛嬌があり、人懐こいところを見せる。その辺のミス・マッチ的な面も魅力として機能している。上の前歯の間が開いているという特徴があり、笑うとそれが目立つ。これは黒人によくある特徴の一つなのだが、実はうちの女房が言うには、黒人間においては前歯の間が開いているというのはチャーム・ポイントの一つなのだそうだ。わざわざ手術して前歯の間を開けることもよくあると力説する。本当か? 

 

しかし考えたらこういう美意識の違いというものはよくあり、例えば日本人だと八重歯はむしろチャーム・ポイントとして機能するが、アメリカではドラキュラみたいと言われ、歯医者に行くとかなりの確率で削るか抜くかを勧められる。要するに美意識っていうのは個人の感覚もそうだが、かなりの部分育ちにも影響されるのだった。 

 

さて、その新「ライヴ」の第1回、改装して新しくなったステュディオに登場したリパは、冒頭、ついに今日、新共同ホストを発表しますと、さも誰も何も知らないように番組を進める。要するに、そういう風に進めるしかなかったようだ。そしてリパがストレイハンの名前を謳い上げると、マンハッタンのアッパー・ウエストのスデュディオの外に停まった、あれはキャデラック? のSUVから降り立ったストレイハンが、そのまま開け放されたドアからステュディオ入りするという段取りだ。 

 

ステュディオに入ってきたストレイハンは、リパを軽々と抱き抱える。リパは日本人としても小柄の部類に入ると思うが、それでもストレイハンは優にリパの3倍の体重がありそうだ。それまでは「Live with Kelly」と表示されていた電光掲示板が、いつの間にか「Live with Kelly and Michael」になっている。 

 

ストレイハンは、友人知人からホスト就任おめでとうと言われても、サンキューと返せないで困ったと言っており、リパも同様の経験をしたと言っていた。要するに、本当に当日まではストレイハン就任は一応部外秘ということになっていたようだ。みんな知っているのに知らないことを前提に話を進めなければいけないのもヘンな話だ。 

 

番組の最初のゲストは、ショウタイムの「ホームランド (Homeland)」でエミー賞を受賞したばかりのクレア・デインズ。音楽ゲストは今シーズンのFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」の覇者フィリップ・フィリップスで、デビュー曲の「ホーム (Home)」を歌う。「アイドル」ではシーズン・フィナーレになると最後に残った者がデビュー曲を歌うのだが、最初「アイドル」で「ホーム」を聴いた時は、実は私たち夫婦はお互い口を揃えて、つまんない曲、もっといい曲を提供できなかったものかね、とくさしていた。 

 

実際、シングル化されてもしばらくは鳴かず飛ばずだったのだが、8月にNBCがロンドン五輪中継のエンディング・テーマとして使用、毎日これでもかというくらい流し続けたおかげで、いきなりチャートを急上昇し始めた。実はロンドン五輪で最も恩恵を受けたのがフィリップスだ。あれがなければ「ホーム」はまず売れなかった。しかも毎晩毎晩聴かされていると、いやでもメロディが頭の中に残る。いきなりウーウウーウウウウなんてサビのメロディがふと口をついて出たりする。フィリップスはツキも持っているから、業界でずっとやっていけるだろう。今んとこあと10年後に「アイドル」出身で歌えているのは、ケリー・クラークソンとキャリー・アンダーウッド、それにフィリップスの3人が当確という気がする。 

 

最後のゲストはそのロンドン五輪で女子体操で団体優勝したUSAのメンバーから、アリー・レイズマンとジョーディン・ウィーバーが登場する。女子体操団体優勝は水泳と並んで今回の五輪の前半の華で、優勝した5人のメンバーは五輪直後はそれぞれ引っ張りだこで、2、3人ずつありとあらゆる番組にゲストとして招かれていた。五輪の練習より、その後のメディアの露出の方が寝る暇もないくらい忙しかったろう。 

 

ところで、「ライヴ」を辞めたフィルビンがその後どうしているかというと、結局、色んなところでやはり臨時ホストをやっていたりする。こないだは朝のトーク・ショウ「レイチェル・レイ (Rachael Ray)」で、レイと共に一週間ばかし臨時共同ホストを担当していた。シンジケーション番組の「レイチェル・レイ」は、同じくABCで、「ライヴ」の直後の10時枠に編成されている。自分が辞めた番組の直後に編成されている別の番組でホストを担当するのは、意趣返しかなんかの意図でもあるのかと一瞬思った。しかしフィルビンは自分から辞めると言ったのだから、別に恨みを買ったり買われたりということもないだろう。結局、三つ子の魂百までというか、フィルビンはTV番組ホストというのが天職なんだろうなと思わせられたのだった。









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