Live! with Regis and Kelly   ライヴ!・ウィズ・リージス・アンド・ケリー

放送局:  ABC

放送日: 11/18/2011 (Fri) 9:00-10:00 (フィルビンの最後のエピソード)

製作: WABC

製作総指揮: マイケル・ゲルマン

ナレーター: トニー・ピッグ

ホスト: リージス・フィルビン、ケリー・リパ


内容: 朝の長寿トーク・ショウ「ライヴ・ウィズ・リージス・アンド・ケリー」で、長らくホストを務めてきたリージス・フィルビンがホストを担当する最後のエピソード。


_______________________________________________________________

Live! with Regis and Kelly


ライヴ!・ウィズ・リージス・アンド・ケリー   ★★1/2

リージス・フィルビンは朝のトーク・ショウ・ホストの顔として、アメリカでは知らぬ者はないという存在だ。キャリアという点では、フィルビンに匹敵するTVパーソナリティというのはほとんど存在しない。ジャンルは違うが、深夜トーク・ショウ・ホストのデイヴィッド・レターマンは、現実にフィルビンの盟友ということもあり、知名度やキャリアという点では最も近いものを持っている気がするが、しかし、日中の奥様方対象のトーク・ショウと深夜トークでは、やっていること自体はまったく別物で、比較するのが憚られる。


とはいえ私がフィルビンの存在を知ったのは、そのレターマンのCBSの「レイト・ショウ・ウィズ・デイヴィッド・レターマン (Late Show with David Letterman)」で、何度もゲストとして呼ばれていたフィルビンを見たからだ。あるいは、もしかしたらそれは「レイト・ショウ」ではなく、前身の1990年代前半まで続いたNBCでの「レイト・ナイト (Late Night)」時代のことだったかもしれない。


とにかく、彼らのキャリアはそれくらい長い。レターマンがNBCと揉めてCBSに移ってきたのはそれほど前のことのような気もしないのに、数えるともう19年も前の話になる。NBCでのキャリアを合わせると、深夜トーク・ホストとしてのキャリアは今年都合30年を数え、ついにあのジョニー・カーソンと並んだ。ニューヨーク・タイムズによると、レターマンは番組の続行にやる気を見せているため、レターマンがカーソンの記録を抜くのはほぼ確実だそうだ。


しかし一方のフィルビンは、この11月に、ついに長年のキャリアに終止符を打った。‥‥というのとはちょっと違うか。フィルビンは「ライヴ!」のホストを降りるだけで、今後もTV界で単発の仕事は続けると、何度も釘を刺していた。引退扱いされたらたまらんだろう。


そのフィルビンの「ライヴ」のそもそもの番組の発端は、1975年、LAで始まった「AMロサンゼルス (AM Los Angeles)にまで遡る。当時はローカルの朝のトーク・ショウで、それは1983年にNYに移ってきて「ザ・モーニング・ショウ (The Morning Show)」という番組名になっても変わらなかった。


1985年、フィルビンの新しい相方として、キャシー・リー・ギフォードが抜擢される。ギフォードは1988年に正式にフィルビンとの共同ホストに昇格、ここに「ライヴ・ウィズ・リージス・アンド・キャシー・リー (Live with Regis and Kathie Lee)」が誕生する。同時に番組はNYから全米ネットで放送されるシンジケーション番組となった。


その後2000年にギフォードがホストを降り、2001年からは現在のケリー・リパが共同ホストとなって、「ライヴ・ウィズ・リージス・アンド・ケリー」が始まり、現在まで続いている。因みに前共同ホストのギフォードは、シンガーとしてのキャリアを目指すということでホストを降りたのだが夢かなわず、今ではNBCの朝のトーク・ショウ「トゥデイ (Today)」で、後半の1時間に姿を現して、ホーダ・コッブ共々芸能セレブリティ・ネタを中心にしゃべっている。


リパは元々はABCで、長寿ソープの「オール・マイ・チルドレン (All My Children: AMC)」に10年以上にわたって出演していた。番組を辞め、「ライヴ」専属になってからも、一時ABCのシットコム「ホープ&フェイス (Hope & Faith)」で、タイトル・ロールの片割れのフェイスを演じている。因みに「AMC」は先頃ついにキャンセルされ、41年の長きにわたる放送に終止符を打ったばかりだ。その「AMC」後に編成されたのが、これまたトークの「ザ・チュウ (The Chew)」である。蛇足ついでに言うと、「AMC」後の2時から編成されていた、1年半年長 (つまり42年間放送されていた) 同様に長寿ソープの「ワン・ライフ・トゥ・リヴ (One Life to Live)」もこのほど最終回を迎え、その後釜にはやはりトーク・ショウの「ザ・レヴォリューション (The Revolution)」が編成されている。


トーク・ヴァラエティ・ショウとしての「ライヴ!」の最大の特徴は、タイトル通り、全米ネットの生番組ということにある。もちろんこの時間、NBCは「トゥデイ」を生放送中だし、FOXの「グッド・デイ・ニューヨーク (Good Day New York)」も放送中だ。「ライヴ!」の直前にも、「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America)」はやはり生放送しているし、その時間帯ならCBSの「アーリー・ショウ (Early Show)」もある。


ただし、これらの番組は基本的に観客をステュディオを入れないニューズ中継スタイルをとっている。「トゥデイ」なんかは、外からステュディオを覗き込むファンの姿がお馴染みだったりもするが、いずれにしても、それらはすべて観客を必要としない。


一方、「ライヴ」だけはステュディオ内に観客を入れたヴァラエティ・ショウだ。したがってこの番組の観衆としてステュディオで椅子に座って楽しみたいならば、番組が生中継される午前9時にはステュディオに入って待機していなければならない。番組では、観客には午前8時のスデュディオ入りを勧めている。こんな朝っぱらから、しかも冬季なんて、寒いNYの零下の中、ストリートで凍えながらキャンセル待ちでステュディオに入ろうとする客もいるそうだ。私なら到底想像もできない。


話は戻ってフィルビンだが、彼はアメリカTV界の生き字引みたいな存在で、「ライヴ!」は彼のキャリアを代表する番組だが、もう一本、フィルビンの名を広く世に知らしめた番組がある。それがクイズ・ショウの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire?)」だ。1999年にABCがほぼ毎夜連続のミニシリーズとして特別編成した「ミリオネア」は、ほとんど一夜にしてヒット番組の仲間入りした、というか、断トツの人気を獲得し、その後しばらくの間、各ネットワークがあれこれ知恵を絞ってクイズ・ショウを編成する先駆けとなった。


この番組でホストのフィルビンの果たした功績は小さくないものがある。元々番組自体は英国のクイズ・ショウのリメイクなのだが、フィルビンはそこに独自のホスティング技術、パーソナリティを持ち込んだ。時には解答者寄りに、時には観客と一体となって番組を盛り上げ、彼が解答者に訊く「これがあなたの最終の答えですか? -- イズ・ディス・ユア・ファイナル・アンサー? (Is this your final answer?)」という問いかけは、この年の最大の流行語になった。この当時、ABCは編成する番組がほぼ全部なす術もなく失敗するという絶不調の時期だったから、番組、およびフィルビンはほとんどABCの救世主的な存在だった。ただし番組はその後、急速に人気を落としてキャンセルされ、場所をシンジケーションに移し、メレディス・ヴィエイラをホストに迎えて現在も続いている。


フィルビンのホスティングの最大の特徴は、若々しい、というか子供じみているとすら言える好奇心旺盛なパーソナリティにある。ほとんどハイパー気味のリアクションで、フィルビンのキャッチ・フレイズとも言える「もう止まらないよ! (I'm out of control!)」という叫びは、実は最初にそれをやったのはフィルビン本人ではなく、NBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live: SNL)」でフィルビンの物真似をしたデイナ・カービーだったらしいのだが、あまりにもよくフィルビンの特徴をつかんでいるので、今では誰もそれを始めたのがフィルビン自身であることを疑わない。


一方でむろん、黙っている方が有効である時は、ちゃんと黙る。「ミリオネア」でじっと黙って緊張感を盛り上げたように、ツボは外さない。要するに、こういう緩急のつけ方がうまい。


とはいえ、いったい80歳のおっさんが自分で自分を指す時に、「私が‥‥」ではなく、自分の名を呼んで、「リージスが‥‥」なんて言わないだろう。「私は知らないよ」ではなく、「リージスは知らないよ」なんて、自分のファースト・ネイムを平気で主語にして話す。普通なら幼稚園児以上ならもう卒業している使い方だ。主体と客体が未分化である幼年時代をまだ引きずっているのかという気にさせる。そういう子供っぽさもまた身上であり、彼のパーソナリティを形作っている。


さて、フィルビンがホストを担当する最後の「ライヴ!」収録のためにステュディオに集まったのは、一般観客というよりはほぼ全員関係者で、男性は皆スーツを着用して、スタンディング・オヴェイションでステュディオ入りするフィルビンとリパを迎える。最初のゲストはニューヨーク市長のマイク・ブルーンバーグで、フィルビンはニューヨークを代表するパーソナリティということで、ニューヨーク・シティの鍵をプレゼントされていたが、あれはいったい具体的にはどこの鍵ということなんだろう。


この回はフィルビンへのトリビュートで占められたが、最も印象に残ったのは、ミュージカル「レント (Rent)」のキャスト・メンバーによる、「レント」を代表するナンバー「シーズンズ・オブ・ラヴ (Seasons of Love)」の替え歌。フィルビンのこれまでのエア・タイムは通算して995,600分になるそうで、「シーズンズ・オブ・ラヴ」の冒頭の「Five Hundred Twenty-Five Thousand Six Hundred Minutes…」というところを、「Nine Hundred Ninety-Five Thousand Sixty Hundred Minutes…」と替えて歌った。最後の回とはいえ終始冷静でクールさを失わなかったフィルビンの眼元が、思わず揺らいだ唯一のシーンだった。


番組はその後、ABCエグゼクティヴのボブ・アイガーが出てきて、フィルビンの顔が刻まれた銅製の銘板を、リンカーン・センターにあるABCビルの入り口に飾ることになったと伝えた。そしてコマーシャルの後、フィルビンは皆に別れの挨拶を述べ、「ライヴ!」のキャリアに幕を引いた。


さて、番組は年が変わった2012年初頭も、フィルビンの後釜に座るホストを気長に探しながら、リパと、とっかえひっかえの臨時ホストが番組を続けている。こないだなんて冬季五輪ショート・トラック・ゴールド・メダリストのアポロ・アントン・オーノまで出てきて共同ホストを務めていた。時間をかけてじっくりと適任ホストを見極めようとしている姿勢が窺える。因みに現在の番組名は、一時的に「ライヴ! ウィズ・ケリー (Live! With Kelly)」と、「リージス」なしになっている。


巷での下馬評では、次期ホスト最右翼と見なされているのが、誰あろうリパの現実の旦那さんである俳優のマーク・コンスエロスで、彼はNBCの「エイジ・オブ・ラヴ (Age of Love)」で、ネットワークの番組ホストを経験している実績もある。ただし、あまり近い人間同士の共同ホストは、長い目で見ればあまりうまくないという意見もある。


あとはブラヴォーが放送していた「クイア・アイ・フォー・ザ・ストレート・ガイ (Queer Eye for the Straight Guy)」のカーソン・クレスリー、MTVの「アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー (America’s Best Dance Crew)」のマリオ・ロペス等が有力候補に挙げられているらしい。ま、こちらも気長に待つことにする。









< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system