Today  トゥデイ

放送局: NBC

アン・カリーがホストのラスト・エピソード放送日: 6/28/2012 (Thu) 7:00-9:00

サヴァンナ・ガスリーがホストのファースト・エピソード放送日: 7/9/2012 (Mon) 7:00-9:00

共同ホスト: マット・ラウアー

天気予報: アル・ローカー


内容: ホストが代わった朝のニューズ/トーク・ショウ。



Good Afternoon America   グッド・アフタヌーン・アメリカ

放送局: ABC

プレミア放送日: 7/9/2012 (Mon) 14:00-15:00

ホスト: ジョシュ・エリオット、ララ・スペンサー 


内容: 午後のトーク・ショウ。


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今春、CBSの「ディス・モーニング (This Morning)」の項でNBCの「トゥデイ」とABCの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」について書いた時、両者間の視聴率の差はほとんどなくなってきたと書いたが、その項を書いた翌週には、ついに17年ぶりに「GMA」が「トゥデイ」を逆転、今では「GMA」優位で展開している。


当然慌てたのはNBC首脳陣だ。この流れをなんとか食い止めなければならない。ということで6月下旬、昨年ホストに就いたばかりのアン・カリーを退任させ、代わりにサヴァンナ・ガスリーを就任させることで収拾を図ろうとした。「トゥナイト (Tonight)」ホスト交代劇の時も派手にごたごたしたが、なんか近年のNBCって、いつもやることなすこと後手後手というか泥縄という感じがする。


こういうヴェテラン番組のホストが代わるというのはアメリカTV界においては大きな出来事で、だいたい数週間から数か月前から人選がやいのやいのと外野が騒ぎ立てるものだが、今回はたぶん第一報のニューヨーク・タイムズが、カリーは番組を降ろされる可能性があると報じたその週のうちに、カリーがホストを担当する最後の回が放送された。NBCは電光石火で人選を進めたものと思われる。


カリーがホストの最後の回となったその6月28日のエピソードでは、カリーが涙ながらに、一生懸命やったけどダメでしたと最後のお別れを述べた。カリーは父親が元米軍人、母親が日本人で、父が日本駐留時に母と知り合い、結婚した。幼い時は日本で暮らすなど日本と関係が深く、昨年の東日本震災の時も米ネットワークから真っ先に日本に飛んで現地取材した報道陣の中の一人だった。


私事になるが、私の伯母も米軍人と結婚してアメリカに来た。当時は簡単に日米を行き来できる時代ではなく、わりと決死の覚悟だったようで、夫と同じプロテスタントのキリスト教に入信し、3人の男の子を育てた。アメリカの生活に溶け込もうと一生懸命だったからだろう、子供たちには特に日本語を教えるということをしなかった。そのため私とほぼ同年代の従兄弟たちは、母は生っ粋の日本人であるにもかかわらず、ほとんど日本語を解さない。


そしてそれはカリーも同じだったようで、たぶん母がアメリカ人として生きるという決心をしたためだろう、うちの伯母同様、キリスト教に入信し、娘に日本語を教えるという教育はほとんどしなかったようだ。そのためカリーも片言の日本語を話しこそすれ、ほとんどしゃべれない。うちの従兄弟たちとほとんど同様の環境で育てられたんだと思う。英語と日本語とのバイリンガルであることがメリットになるとは思われなかった、そう遠くもない時代の話だ。


とにかくそんなわけで、私は個人的にカリーに親近感を多く感じていた。前任のメレディス・ヴィエイラが持っていた、誰とでもすぐ友だちになれるようなフレンドリネス、その前のケイティ・コーリックが持っていたポジティヴな明るさとは対照的な、落ち着いた、クールでありながら暖かみのあるホスティングは、私個人としては非常に好感を持っていたが、しかし、それが視聴率至上主義のネットワークのモーニング・ショウと相容れるかどうかは別問題で、カリーがホストに就任した当初から、一抹の危惧はないこともなかった。


結局、カリーの「トゥデイ」は上り調子の「GMA」に楔を打ち込むことはできず、NBCはカリー更迭を決めた。現在ではカリーは古巣に戻ったという感じで、「トゥデイ」に限らず広くNBCのニューズ番組全般でレポーターを務めている。


カリーに代わって登板したサヴァンナ・ガスリーは、それまでは朝7時から4時間ある「トゥデイ」の3時間目のホストを担当していた。しかし基本的に芸能ニューズに近くなる9時台、完全に女性向けおしゃべりタイムとなる10時台の「トゥデイ」は、「トゥデイ」という冠こそ被ってはいるが、ニューズ番組としての影響力はほとんどなく、ガスリーの知名度も大したことはなかった。


その後しばらくしてガスリーがジェイ・レノがホストの「トゥナイト」にゲストとして招かれた時、NBCのメイン・アンカーであるブライアン・ウィリアムズが、彼女のことをサヴァンナではなくサマンサと呼んでいたと不満気に話していた。同じ仕事仲間ですら名前を覚えていなかったくらいだから、一般視聴者がどれだけ事前に彼女のことを知っていたかは推して知るべしだろう。かくいう私も、実はサマンサだとばかり思っていた。タイプとしては近年のホストで最も印象の近いのはコーリックで、NBCがその路線復活を目論んでいることが窺える。


さらに「トゥデイ」は、11月からはMSNBCの「モーニング・ジョー (Morning Joe)」ホストのウィリー・ガイストを、「トゥデイ」の9時台の共同ホストとして起用すると発表した。しかしこないだ、朝なんとなく「トゥデイ」を見ていたら、11月から就任するはずのガイストが10月中旬の段階で既に登場していた。時間が許す限り前倒しで視聴者に顔を覚えてもらおうという算段か。しかしこうなってくると、現在の「トゥデイ」の本当の顔であるマット・ラウアーもうかうかしてはいられない。


一方、17年ぶりに雪辱を果たして朝の時間帯の視聴率1位に着いた「GMA」が好調なのは、よりソフト路線に比重を移したからだと言われている。特に今夏、番組ホストのロビン・ロバーツが稀な病気で骨髄移植の必要があり、一時的に番組から去って入院したのだが、それをわざわざ病院の中まで追っていって一部始終を中継した。はっきり言ってやり過ぎとあちこちから言われたが、そういうソープ的なネタが視聴者の興味を惹いたのは否定できない。


これまでにもダイアン・ソウヤーとチャーリー・ギブソンがホストしていたやや硬めの時代に既に番組は上向きになっていたから、必ずしもソフト路線が奏功したとは言えないだろうが、それでも最近の躍進が番組のヴァラエティ化にあるのは、ほぼ間違いないように思われる。私としては、ギブソンがホストを務めている時代だったらこんなネタ採り上げなかっただろうにと思える内容もあったりしてやや不満なのだが、これが時代の趨勢というものだろう。


そして今夏、期間限定で午後に編成される「GMA」スピンオフの「グッド・アフタヌーン・アメリカ」が放送された。最初、番組タイトルは「GMA・イン・ジ・アフタヌーン (GMA in the Afternoon)」と言っていたが、考えたら当然「グッド・アフタヌーン・アメリカ (GAA)」になって然るべきだ。プレミア放送日は「トゥデイ」でガスリーが正式ホストに就任したのと同じ7月9日で、要するに「トゥデイ」がカリー退任を急いだのも、とっとと「GMA」、「GAA」対策をとる必要があったためだろう。


「GAA」ホストは「GMA」のジョシュ・エリオットとララ・スペンサーで、番組はほとんど「トゥデイ」の9時-10時台と同じく芸能ヴァラエティ化しており、私は最初のエピソードを見ただけでうんざりした。完全に視聴者のターゲットを奥様方に絞っており、ま、時間帯から言っても当然そうなるしかないのだろうが、正直言って少なくとも男性視聴者にとっては見る価値はないと断言せざるを得ない。エリオットは非常に人当たりのいい、万人受けするタイプで、最近の「GMA」人気にも一役買っていると思うが、それでも「GAA」を見たいという男性視聴者はまずいないだろう。


一つ印象的だったのがプレミア・エピソードの最後に登場してお約束の「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌ったライザ・ミネリで、最近見なかったとはいえ、いきなりだいぶ歳とった感じになった。ニューヨークで何か祭事があると、いつも必ずミネリが登場して「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌うという印象がある。いつぞやのトーク・ショウ「ザ・トニー・ダンザ・ショウ (The Tony Danza Show)」でも、やはりプレミアに招かれて「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌っていた。


ただし今回は自分の十八番とも言える歌なのに、歌えてないという感じがありありとした。練習してないのをなんとかテクニックでごまかしているという感じで、ああ、たとえライザ・レヴェルのシンガーでも、練習しないとうまく歌えないものなのだなと改めて思った。ただでさえ歳をとってきているからなおさらなのだろう。かつてホイットニー・ヒューストンが「ワールド・ミュージック・アウォーズ (World Music Awards)」で、自分の歌の「アイ・オールウェイズ・ラヴ・ユー (I Always Love You)」を歌えず、サビの部分で1オクターヴ下げて歌ったのを思い出した。ライザ、あんたは節制して適度に練習するだけでまだまだやれるはず。


番組は現在、当初予定された放送を終え、「GAA」が放送されていた午後2時台にはABCで唯一残っている長寿ソープの「ジェネラル・ホスピタル (General Hospital)」が3時から移動、その3時台にはコーリックがホストの新トーク・ショウ「ケイティ (Katie)」が始まっている。私はABCは近々「ジェネラル・ホスピタル」には引導を渡し、「GAA」を定時番組に据える気だろうと思っていたが、「GAA」を見た後だと、別にソープでも「GAA」でもどっちでもいいやというのが正直なところだ。


ところで、上述した、新体制で出直したCBSの「ディス・モーニング」も、実は既に体制にマイナー・チェンジが施されている。チャーリー・ローズ、ゲイル・キングと共にメイン・ホストの一人だったエリカ・ヒルが7月いっぱいで辞め、代わりにノラ・オドネルが着任している。オドネルは元々はMSNBCや「トゥデイ」のレポーターだった。で、辞めたヒルがどこに行ったかというと、先頃、実は「トゥデイ」のウィークエンド・エディションでレスター・ホルトと共同アンカーを務めることがすっぱ抜かれた。


すっぱ抜かれた、というのは、まだ正式発表があったわけではなく、業界ニューズになっただけでNBCが事実関係を認めていないからだが、しかしこうやってニューズ・ネタになっているところを見ると、正式発表も間近だろう。それでそのヒルの前任だったエイミー・ローバックは、現在ABCの「GMA」で、休養中のロバーツの代わりに臨時ホストを務めていたりするのだ。これらのネットワーク間の移動は、TVパーソナリティは日常茶飯に行ってはいるが、それでもこれはキャリア・アップなのかそれとも仁義なき戦いなのか、ふと疑問に思ったりする。










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トゥデイ   ★★1/2

Good Afternoon America

グッド・アフタヌーン・アメリカ   ★★

 
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