Law & Order: Los Angeles   ロウ&オーダー: ロサンジェルス

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/29/2010 (Wed) 22:00-23:00

製作: ウルフ・フィルムズ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオズ

製作総指揮: ディック・ウルフ、レネ・ボールサー

出演: スキート・ウーリッチ (レックス・ウィンターズ)、コーリー・ストール (トマス・TJ・ジャルスザルスキ)、レイチェル・ティコティン (アーリーン・ゴンザレス)、ミーガン・ブーン (ローレン・ガードナー)、テレンス・ハワード (ジョナ・デッカー)


物語: ハリウッドでセレブリティの家が連続して強盗されるという事件が起き、負傷者が出る。ついには死者が出るが、それは家に人がいることを知らずに忍び込んだ賊の一人が逆に撃たれて死んだものだった。賊を撃った彼女には売出し中のアイドルの娘がいた。捜査が進行するに連れ、実は死んだ男と撃った彼女の間には関係があったことがわかる‥‥



Law & Order: UK    ロウ&オーダー: UK

放送局: BBCアメリカ

プレミア放送日: 10/3/2010 (Sun) 22:30-23:30 (アメリカでの放送)

製作: クドース・フィルム&テレヴィジョン、ウルフ・フィルムズ、NBCユニヴァーサルTV

製作総指揮: ディック・ウルフ、アンドリュウ・ウッドヘッド

製作: リチャード・ストークス

出演: ブラッドリー・ウォルシュ (ロニー・ブルックス)、ジェイミー・バンバー (マット・デヴリン)、ハリエット・ウォルター (ナタリー・チャンドラー)、ベン・ダニエルズ (ジェイムズ・スティール)、フリーマ・アジェマン (アレシャ・フィリップス)、ビル・パターソン (ジョージ・キャッスル)


物語: 病院の敷地内に不審な鞄が放置されているのが発見される。その中にあったのは爆弾ではなく、生後数か月の赤ん坊の死体だった。聞き込みによって身元が判明する。それはカリブ系黒人で生活の苦しい若い母親が働いている時、ガス中毒によって死亡した赤ん坊の処理に困った挙げ句、病院前に捨てたものだった。しかし母親の罪を追求する段階で、赤ん坊の死が、テナントを追い出そうとした者の故意の行動の結果という線が強くなる‥‥


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Law & Order: Los Angeles

ロウ&オーダー: ロサンジェルス   ★★1/2

Law & Order: UK

ロウ&オーダー: UK   ★★★

NBCの長寿法廷ドラマ「ロウ&オーダー」は20年というアメリカのドラマ・シリーズの長寿記録に並ぶというめったにない偉業を達成していながら、今夏最終回を迎えた。代わって今秋から新しく始まったのが、「ロウ&オーダー: ロサンジェルス (LA)」と、BBCアメリカの「ロウ&オーダー: UK (United Kingdom)」だ。


といっても、正確にはこの言い方は正しくない。英国ロンドンを舞台とする「UK」は昨年から英国での放送は始まっており、今回がアメリカにおける初お目見えというだけに過ぎない。その放送開始日をアメリカでのTV界の新シーズン、特に「LA」の放送開始とほとんど同じ時期にもってきたのは、放送するBBCアメリカの戦略だろう。


別に「ロウ&オーダー (L&O)」に限らず、番組は長く続けば続くほど、製作費は上がる。出演者のギャラも上がればその他もろもろの製作コストも上がる。かといって視聴率は昔ほどではない。「ロウ&オーダー」は製作費と実入りが釣り合わなくなっていた。となれば、ニューヨーク同様に魅力ある舞台でも、いったんは高騰したギャラや製作費をちゃらにして一からやり直せるLAに舞台を移すという案は、魅力的だったに違いない。逆に言えば、LA版製作という企画が進行していたからこそ、NBCはオリジナルの「ロウ&オーダー」に安心して引導をわたすことができた。


それにしても20年も続いたシリーズだ。あと1年だけ続ければTV界の歴史に名を残す最長記録だったのに (アニメーションの「ザ・シンプソンズ (The Simpsons)」を別にして。) しかしジェイ・レノをプライムタイムに持って来て「ザ・ジェイ・レノ・ショウ (The Jay Leno Show)」を編成したり、ダメだと思うとすぐ諦めてコナン・オブライエンの「ザ・トゥナイト・ショウ (The Tonight Show)」をキャンセルしてレノを古巣に復帰させたりと、視聴者や批評家から後ろ指さされ、悪口雑言浴びせられてもなりふり構わず業績悪化の補てんに走ったNBCには、たったそれだけでも頑張れる余裕はなかった。


さて「L&O」といえば、何はともあれ真っ先に思い出すのはあのテーマ・ミュージックと、ダン・ダンという効果音だ。これがなくては番組は始まらない。どちらかというと緊張や興奮させるというよりは弛緩させるテーマは、番組には実はそぐわないと私は本心では思っているのだが、それでも長年聞かされ続けた結果、今ではそれも慣れてしまった。習慣というのは怖ろしい。


このテーマ、数多ある「L&O」のスピンオフ・シリーズのすべてに共通して使われているのだが、それぞれによって微妙にアレンジは異なる。本家「L&O」自体ですら、シーズンによって主旋律を担当する楽器が異なっていたりする。昔はベイス・ギターをチョッパーではじいて弾いていたものが、今はオーボエみたいな木管が担当しているので、なおさら間が抜けているように感じる。最もドラマティックなのは「クリミナル・インテント (Criminal Intent: CI)」で、「スペシャル・ヴィクティムズ・ユニット (Special Victim’s Unit: SVU)」と「L&O」はあまり違いがよくわからなかったりする。番組によるそれらの微妙な差を聴き分ける楽しさみたいなのもあった。


それで今回の「LA」も「UK」もテーマはどうしているのかと興味津々だったのだが、信じられないことに、「LA」では番組タイトル・クレジットが存在しない。完全にないわけではなく、番組タイトル自体は出るのだが、テーマが流れるだけの登場人物や製作者紹介部分はない。番組タイトルが出て、番組クリエイターのディック・ウルフの名が現れ、その後ろにテーマのサビになる前の部分のダ・ダ・ダダッ・ダーが流れ、それで終わりなのだ。正味7秒しかない。思わず、えっ、と耳を疑った。テーマのない「L&O」ってか。


実はこういう傾向は「L&O」だけに限らず、他のすべての番組において現れ始めている。例えば、ABCの人気ドラマ「グレイズ・アナトミー (Grey’s Anatomy)」や、夏に終わった「ロスト (Lost)」も、テーマ音楽はない。一瞬の番組ロゴが現れて、それで終わりだ。その一方で、新しく始まったCBSの「ハワイ・ファイヴ・オー (Hawaii Five-O)」みたいな昔の人気番組のリメイクだと、どうしてもテーマを外すわけにはいかない。その音楽が番組とセットになって人々の記憶に残っているからだ。「ハワイ・ファイヴ・オー」と聞いて、た・た・た・た・たーっ、たー、た・た・た・た・たー、というテーマ音楽が頭の中で鳴り響かない番組ファンはいない。番組ファンでなくても、このテーマを知らないアメリカ人はいない。これを端折るわけにはいかないだろう。


しかし、時代の趨勢としては、番組タイトル・クレジットは短くなる傾向がある。これは、番組そのものがどんどん短くなって、コマーシャルが増えてきたことと関係がある。現在、ネットワークにおいて1時間番組の正味時間は、だいたい42-43分程度しかない。4分の1以上は、視聴者はコマーシャルを見せられているのだ。いくらなんでもこれ以上コマーシャルを増やすわけにもいかない。さすがに視聴者は怒って番組を見なくなる可能性は大いにある。そこで、最も削れる部分、すなわちタイトル・クレジットが短くなり、その分、中身が短くなるのを防いでいるのだ。番組製作者としては、できればキャッチーなテーマ音楽をつけたいのは山々だろうが、そうも言ってられない事情がある。


一方、「UK」には、テーマはある。しかし、それがあの、耳に慣れ親しんだ「L&O」のテーマではなく、オリジナルの新しいテーマなのだ。やたらと勇ましいというか、ドラマティックに盛り上げようとするテーマで、思わず私は、これでは「L&O」ではないと叫んでしまった。本家「ロウ&オーダー」フランチャイズでは、番組間を別の「L&O」出演者がわりと自由に行き来したりするが、たぶん「LA」とNYが舞台の他の姉妹番組では、行き来するのは難しいだろう。そして英国とアメリカでは、基本的にクロスオーヴァー・エピソードを作るのはほとんど無理だと思われる。音楽も違う出演者も違う場所も違う。これではなんで「UK」に「ロウ&オーダー」という番組タイトルが被さっているのかわからない。


話を内容だけに絞ると、「LA」も「UK」も本家同様の手順を踏んで、そこそこ面白い。だいたい「L&O」では、冒頭で事件が起きると、それがどんどん調査の段階で新しい事実が発見され、まったく別の様相を呈してくることがよくある。そういう進行は両番組ともオリジナルの轍を踏んでおり、話がどう展開していくかわからない面白さを提供している。


「LA」のプレミア・エピソードは、特にできがいいというわけではないが、題材と登場人物がハリウッド・セレブリティという、いかにもな点を買われての第1回起用だろう。一方「UK」のプレミア・エピソードでは、貧困家庭の子供がガス中毒で死に、病院の前に捨てられていたという事件を扱っており、「LA」の第1回とはまったく印象が異なる。


もちろんLAとロンドンという背景や英語のイントネーションの差などから来る印象の違いもあるが、両番組において最も歴然とそれが現れるのが、「UK」における裁判シーンだ。英国では裁判になると、判事や検察官、弁護士がかつらを被る。私の第一印象を言うと、この21世紀に、バカみたいというものだ。別に立っている場所ややっていることを見たら、その人物が何者だかわかる。かつらを被って威厳を出すというよりも、旧態依然の過去の遺物に縛られているという印象の方が強く、どちらかというとむしろ滑稽に感じる。


ただし、これは私が特にそう感じるのだろうとは思う。私は日本の時代劇のちょんまげというのが不思議で、とにかく、なんでああいう髪型があるのか、正直言うと生理的に気持ち悪くて嫌いなのだが、それと同じことを「UK」の裁判シーンでも感じる。つまり、あまりにも不自然過ぎて、見ていて居心地悪いのだ。かつら被らないと裁判やれないんですか。間抜けにしか見えない。


という個人的な嗜好を別にすると、今のところ、「LA」も「UK」も頑張っていると言える。太陽燦々と明るい西海岸で起きる陰惨な事件、年中曇って陽の照らない日の多いロンドンで起きるやはり陰惨な事件。どちらも飽きさせないで見せる。これだけ姉妹番組があるんだから、オリジナルの「L&O」がなくてもあんまり気にすることもないか。ただしあのテーマ・ミュージックにだけは一抹の懐かしさを覚えてしまう。せめて「LA」だけででも、テーマが復活する可能性はないものだろうか。










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