Bad Boys for Life


バッド・ボーイズ・フォー・ライフ  (2020年3月)

これが現時点で私が映画館で見た最後の作品だ。コロナウイルス危機はアメリカを蹂躙し、特にニューヨークやLAの大都市部を直撃、あっという間に感染者数は中国のみならずイタリアやスペインを抜いて世界最大に躍り出た。ドナルド・トランプは、最初は心配ない、アメリカは大丈夫だと言っていたくせに、今では終わりの見えないコロナウイルス蔓延に、日々前言撤回を繰り返しながら事態の収拾を図っている‥‥というよりは責任転嫁を繰り返しているようにしか見えない。 

 

私が「バッド・ボーイズ・フォー・ライフ」を見たのは、ついにニューヨークに感染者が現れ、すわニューヨークもついに、という雰囲気が濃厚に醸成され始めていた頃だ。それでも映画館チェーンは、我々は消毒を徹底して安全に努めていますという声明を出し、上映を続ける気であるのは明らかだった。既に「フォー・ライフ」は公開一と月以上経っており、場内は人もまばらで、その点では私も特にコロナを気にかけることもなく、気楽に観賞した。 

 

しかしそれから数日も経たないうちに、ニュージャージーで新たなクラスター源が現れ、すべては頓挫する。それからはほとんどつるべ落としというか倍々ゲームのように感染者数が膨れ上がり、ついにはニュージャージー州知事のフィル・マーフィは、今現在の生活に必須でないビジネスを停止させ、基本的に従業員はリモートで自宅勤務、レストラン等もすべて持ち帰りのみで家から出ないようにとのお達しを出した。日中の散歩や必需品の買い物とかは認められているが、他者と6フィートのソーシャル・ディスタンスは維持するようにという強い要請で、精神的逼塞感からは免れようがない。当然、ニューヨーク/ニュージャージーのすべての映画館は封鎖された。 

 

おかげで今後数か月に及ぶと思われる映画館封鎖の直前に見た最後の映画が「バッド・ボーイズ・フォー・ライフ」になったというのは、ここでわりと能天気なハリウッド・アクションを見といてよかったと言えるかどうか。 

 

ところで、「バッド・ボーイズ」の舞台はフロリダだが、そのフロリダだってコロナウイルスと無縁ではない。大都市圏で自宅待機を嫌ったわりと金を持っている富裕層は、どうせオフィスも閉まっているしと、ここを先途に郊外や避寒地に脱出した。もちろんその一部にフロリダも含まれているのは言うまでもない。 

 

おかげでフロリダでもコロナウイルス感染者が急増し始め、慌てたフロリダ州知事は、フロリダ州民を自宅待機させるどころか、フロリダに他州からの入州を禁じるという都市封鎖宣言を出した。つい先頃、フロリダの知人がニュージャージーに住む私たちのことを心配して連絡してきたが、その数日後にはまた電話がかかってきて、オレたちもロックアウトだってよー、へへへーっと能天気なことを言っていた。私が「フォー・ライフ」を見て束の間の開放感を味わったと思ったら、その数日後にはフロリダも都市閉鎖だ。ますます閉塞感が高まっていく。 

 

さて、その「バッド・ボーイズ・フォー・ライフ」は、言わずもがなの「バッド・ボーイズ」シリーズの最新第3作に当たるが、前作「バッド・ボーイズ2 (Bad Boys II)」が公開されたのは、実はもう17年も前の2003年だ。第1作「バッド・ボーイズ (Bad Boys)」はその8年前1995年製作であり、それから数えると既に25年経つ。 

 

と、前作からかなり時間が経っていることで、困ったことが起きた。私は「バッド・ボーイズ」の「1」も「2」も見ているのだが、記憶は既に曖昧だ。それで記憶を改めようと自分のページを確認していて、はたと困った。ないのだ。どこにも「バッド・ボーイズ」について書いたページがない。「1」が公開された時はまだこのサイトを立ち上げてなかったのでないのは当たり前だが、しかし2003年公開の「2」についても書いてない。 

 

そんなのあるか、見た作品については漏れなく書いてきたつもりではあるが、書きそびれていたってことがあるだろうか。それとも、もしかした見たというのは記憶違いで実は見てないとか。と思うが、細部は忘れているが、助手席で叫ぶマーティンを尻目にフロリダの貧民街をハマーで爆走したシーンとか、アクションは結構覚えている。これは「2」のはずだ。 

 

一つの可能性としてはTVで見ている場合だが、しかし、私はまず気になる映画は映画館で見ており、よほどのことがない限り、TVで映画を見るってのはない。そういうTVで最初に見た映画というのは変則的で逆に記憶に残るので、これはTVで見た映画と覚えていて忘れない。第一、記憶の中の「バッド・ボーイズ」は大きなスクリーンなのだ。これが記憶違いというのは、いくら近年覚えがよくなくなってきているということを考えても、俄かには信じ難い。それともやっぱり記憶の捏造か? 

 

いずれにしても「フォー・ライフ」、十何年という歳月を経ても、そのわりには主演のウィル・スミスもマーティン・ロウレンスもあまり変わった印象はないなと思いながら、そもそものオリジナルの予告編をYouTubeで見てみて、全然今と違って若いじゃんと思った。人間変わってなさそうでも変わってるもんだ。ロウレンス扮するマーカスなんて、一足飛びに父親どころか祖父になっちゃってるし。 

 

そういえばマーカスは、前作でもマイクに引きずられてもう辞めたいみたいなことを言っていたと思うんだが、そのまま17年間ずるずるとやってきていたのか。同じくレギュラーのジョー・パントリアーノやテレサ・ランドールらも、やっぱり歳とった。考えたら新メンバーのヴァネッサ・ハジェンズなんて、「1」の時はまだ小学生になるかどうかの年齢でしかない。みんな歳をとる。 

 

都市がロックアウトされ、自宅待機令が出され、人々が外に出れなくなり、今ではマイクやマーカスがやっているような市街地でのカー・チェイスなんてできなくなった。それよりも今撮れるのは、スミスが何年か前に撮った「アイ・アム・レジェンド (I Am Legend)」だ。これが今、街に人がいないマンハッタンで、ほとんど人払いの必要なく撮れる。トム・クルーズが「バニラ・スカイ (Vanilla Sky)」であんなに苦労して撮った無人のタイムズ・スクエアを、今なら難なく撮ることができる (無論撮影許可が降りるならの話だが。) 一方で、ブロードウェイに人がいる必要のある「バードマン (Birdman)」「スマッシュ (Smash)」は、今は撮れない。あるいは、「ブラインドスポット (Blindspot)」のそもそもの発端であるタイムズ・スクエアのオープニング・ショットは、今撮るとどうなるだろうか、ああ今撮影したい、と、色々妄想を膨らませている映像関係者は、家の中で悶々としているに違いない。 











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バッド・ボーイズも歳をとり、特に初孫ができたマーカス (マーティン・ロウレンス) は、そろそろ引退を考えていた。一方、メキシコの刑務所に収監されていたドラッグ・カルテルの未亡人イザベル (ケイト・デル・カスティーヨ) が脱走し、息子のアルマンド (ジェイコブ・シピオ) に命じてバッド・ボーイズに報復させる。中でも最も恨みの募るマイク (ウィル・スミス) は最後に痛みつけた上で殺そうと考えていたものの、アルマンドは先走って最初にマイクを狙い、大怪我をさせて病院送りにする。マイクは昏睡状態を経てなんとか回復するが、イザベルとアルマンドによる報復は留まるところを知らなかった‥‥ 


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