Smash  スマッシュ

放送局: NBC

プレミア放送日: 2/6/2012 (Mon) 22:00-23:00

製作: マッドウーマン・イン・ジ・アティック、ドリームワークス、ユニヴァーサルTV

製作総指揮: スティーヴン・スピルバーグ、ニール・メロン、クレイグ・ゼイダン

クリエイター: テレサ・レベック

出演: キャサリン・マクフィー (カレン)、ミーガン・ヒルティ (アイヴィ)、デブラ・メッシング (ジュリア)、クリスチャン・ボーレ (トム)、ジャック・ダヴェンポート (デレク)、アンジェリカ・ヒューストン (アイリーン)、ジェイミ・カペロ (エリス)、ラザ・ジェフリー (デヴ)、ブライアン・ダーシー・ジェイムズ (フランク)


物語: ジュリアとトムはブロードウェイのプロデューサーで、マリリン・モンローの半生を描くミュージカルの企画を進めていた。オーディションも佳境で、最終候補の二人カレンとアイヴィは、カレンがまだキャリアは浅いが溌溂として将来性を感じさせる美人なら、一方のアイヴィは既にブロードウェイのヴェテランで、キャリアと実力は折り紙つきと、どちらかには決めかねた。新しいプロデューサーのアイリーン、辣腕だがエゴイストの監督デレク、新人のアシスタントのエリスら、製作サイドも次々と人選が固まっていくのに、マリリンを演じる主人公だけが決まらない‥‥


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Smash


スマッシュ   ★★★

近年音楽関係番組に力を入れているNBC、これまでは「ザ・シング-オフ (The Sing-Off)」「ザ・ヴォイス (The Voice)」とリアリティ・ショウ主体だったが、FOXの「グリー (Glee)」に想を得たかそれとも単に時流に乗り遅れまいと思ったか、今回、リアリティ・ショウではなく、ミュージカル・ドラマに挑戦してきた。それが「スマッシュ」だ。


2シーズン目を迎える「ヴォイス」は既にNBCの中核番組としての地位を築きつつあるが、その「ヴォイス」が編成されている月曜8時台の直後、10時から始まるのが「スマッシュ」だ。これでNBCの月曜プライムタイムのラインナップは、すべて音楽関係番組が並ぶことになる。


それにしてもマリリン・モンローだ。モンローはもちろん、アメリカだけでなく世界のセックス・アピールのシンボルと言える存在だが、死して今なおその名の神通力は衰えない。というか、さらに尾ひれがついて、ますます伝説に磨きがかかってきたという感じだ。先頃もミシェル・ウィリアムズがモンローに扮した「マリリン 7日間の恋 (My Week with Marilyn)」が公開されたばかりだ。


そのモンローを題材にしたブロードウェイ・ミュージカルの舞台裏を描くのが、「スマッシュ」だ。番組はモンローという主役を射とめようと凌ぎを削る二人の女優、そして周囲の駆け引き謀略、愛憎を描く。そしてもちろん、セールス・ポイントが登場人物が歌って踊るミュージカル・シーンにあるのは、改めて言うまでもない。


二人の主人公、カレンとアイヴィに扮するのはキャサリン・マクフィーとミーガン・ヒルティだ。マクフィーはFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」2006年の第5シーズンのファイナリスツの一人で、当時から既に歌声よりも美人であることで知られていた。一方のヒルティは既に現実にブロードウェイのヴェテランだそうだが、この辺は得意ではないので、実はよく知らない。一見しての印象は、マクフィーの方が綺麗、しかし肉付きのいい体型ではどちらかというとヒルティの方がモンローの印象に似ている。むろん歌は二人ともうまいが、こちらもやはり業界で既に多くの経験があるヒルティの方に一日の長がある。


マクフィーは、「アイドル」時代から一貫してそうだったが、まったくがつがつしたところがない。本当に性格がいいんだろうなと思う。だからモンロー役をどうしてもとりたいという執念めいた点が見えない。そりゃもちろんモンローをやりたいだろうし、落とされたらがっかりするだろうが、だからといって策略を企んだり、誰かを陥れてまで主役をとろうなんて考えは微塵もない。


というわけで、実際に誰もが受けるこういった印象をストーリーに絡めている。つまりヒルティ演じるアイヴィの方が経験と知識に長けており、彼女の方に分があるように見える。アイヴィは舞台監督のデレクと寝ることで主役の座をつかむが、しかし、ほとんど真っ白で天真爛漫、伸び盛りのカレンの才能を疑うことは誰にもできない。アイヴィの受けるストレスは並み大抵のものではなく、主役とはいってもアンダースタディについているカレンにいつその座を奪われるかわからない。練習ではデレクは厳しく、容赦ない。一方、プロデューサーのジュリアも舞台俳優の一人とできてしまう‥‥などなど、いかにもといった舞台裏ストーリーを絡め、話は進行していく。


「アイドル」時代のマクフィーのパフォーマンスで特に記憶に残っているのは、これはたぶんすべての者がそうだと思うが、やはり「オーヴァー・ザ・レインボウ (Over the Rainbow)」だ。ジャッジのサイモン・コーウェルの選曲によって歌ったのだが、歴代の「アイドル」パフォーマンスでも10本の指に入るかと思えるくらい印象的なパフォーマンスだった。録画しておいて後で何度も見たくらいよかった。その後マクフィーの顔を見る度にどこでもこの曲を歌わせられていたから、誰もが感銘を受けたものと思う。彼女にこの歌を歌わせることを思いついたコーウェルは、さすがとその時は思ったものだが、今では「ジ・Xファクター (The X Factor)」でチョンボばかりだ。


そして実は、パフォーマーとしてのマクフィーよりも、より強烈に記憶に残っているのが、マクフィーの父だ。父は毎回会場に現れて娘のキャサリンのパフォーマンスを見ていたのだが、この父、キャサリンが歌うと毎回感極まって泣く。声をあげて泣くというのではなく、娘の晴れ姿を見ながら自然に涙が頬を伝わって流れる。毎回必ずこれをやるのだ。おかげでずんぐりむっくり禿げかけという親父が、毎回棒立ちになって声も出さず涙を流す姿が、いまだに目に焼き付いて離れない。キャサリンがああいう素直な性格なのは、ちゃんと愛情と共に育てられたからだろう。


さらに今シーズンの「アメリカン・アイドル」を見ていたら、舞台がLAに移って参加者にヴォーカル・コーチがアドヴァイスする段になって出てきたコーチの一人がxxx・マクフィーという女性で、ホストのライアン・シークレストが、キャサリンのママと紹介していた。キャサリン同様人の好さそうな感じだった。しかし、だったら、キャサリンがコンテスタントとして「アイドル」に出ていた時、母はヴォーカル・コーチとしてキャサリンもコーチしていたのだろうかと、ふと思った。人からやっかまれそうだ。いずれにしても、母がそういう職業なんだから、娘が歌がうまいのも当然だ。


とまあ、マクフィーの話ばかり書いているが、一方のヒルティは本当に何も知らないので、書きようがない。せめてなんかTVでゲスト出演でもしている時に見てないかと思ったが、調べてもやはり見たものがない。いずれにしても、今回で知名度は全国区になったろう。


番組としての見所は、実際のブロードウェイの舞台ばりのミュージカル・シークエンスにあるのは論を俟たない。正直言って私が見たいのはほとんどそこにある。「グリー」も実は、今では放送中の番組を見るというよりも、DVRで録っといて、作り手の皆さん全部見ないでごめんなさいと思いながら、後でパフォーマンスの部分だけを見る場合が多い。結局、既に「スマッシュ」もそういう見方になりつつある。


ドラマの部分だってそれなりに見どころはあり、デブラ・メッシングやジャック・ダヴェンポート、アンジェリカ・ヒューストンといったヴェテラン、曲者、大御所が脇を固めている。これだけの面々に囲まれて一番弱いのは少なくとも演技の面ではマクフィーだと思うが、演技ではない自然なチャーミングさがそれを補っており、対するヒルティと共に頑張っている。しかしやはり、この二人によるミュージカル・シークエンスこそが番組の華であり、ドラマ部分は端折っても、その部分だけはどうしても見たいと思うのだった。









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