Another Me


アナザー・ミー  (2014年9月)

特に見たい映画があるわけではないなと思いながらネットをチェックしていて、見つけた作品がこれだ。マンハッタンまでチェックの範囲を広げるとそこそこ興味を惹かれる作品をやっていたりするのだが、いかんせんニュージャージーでは、マンハッタンでの公開映画の数や質に太刀打ちできない。


とはいっても近年は休みの日に仕事でもないのにわざわざまたマンハッタンまで出る気にならず、しかもマチネーもなく料金も高く、そのくせいつも混んでいるマンハッタンの劇場で映画を見ようという気には、ほとんどならないのだった。


それで今回はいつもより検索範囲を西側に広げてみた。それで引っかかってきたのが、「アナザー・ミー」だ。まったくこれまで見たことも聞いたこともなかったのだが、そのために逆に興味をそそられたというのもある。ハリウッドではないヨーロッパ製のホラーらしく、それがアメリカで人知れずながらも一般公開されているというだけでもなかなか大したものだろう。


話はたぶん英国 (IMDBの撮影ロケーション情報によるとウエールズ地方らしい) のほとんど寂れた地方の高校に通うフェイが、家族間や学校での葛藤やストレスの中で、段々追い詰められていく様を描く、基本的にサスペンス・ホラーだ。


主人公フェイは通学に近くのトンネル通路を使う。孤立する主人公、トンネル、寂れた町の雰囲気やだんだん寒くなってきそうな季節、リアルなホラーに見えて実はかなりオカルティックなストーリーなど、私は見てて何度か「モールス (Let Me In)」を思い出した。


フェイに扮するソフィ・ターナーは、現在アメリカのケーブル界のファンタジーSF路線ではAMCの「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」と人気を二分する、HBOの「ゲーム・オブ・スローンズ (Game of Thrones)」に出演中だ。


とはいえ、私が気になったのは周りを固めている俳優陣で、父ドンを演じているリス・アイファンズは昨シーズンのCBSの「エレメンタリー (Elementary)」でジョニー・リー・ミラー演じるシャーロック・ホームズの兄マイクロフトを演じて印象を残した。ロバート・ダウニーJr.がホームズに扮する映画版「シャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes)」でマイクロフトを演じているスティーヴン・フライが、どちらかというと太りじしで巨漢という印象でかなりはまっていたので、痩せぎすのアイファンズはどうするのかなと思っていたら、それはそれでこちらもなかなかよかった。ついでに言うと、ベネディクト・カンバーパッチがホームズを演じて評判のBBC版「シャーロック (Sherlock)」でマイクロフトを演じているのはマーク・ゲイティスで、こちらはフライとアイファンズの中間くらいの姿形だ。


実は見ている間はまったく気づかなかったのがカイリーに扮するイヴァーナ・バケロで、ギレルモ・デル・トロの「パンズ・ラビリンス (Pan’s Labyrinth)」の主人公を演じた子だった。ついでにレオノール・ワトリングが出ているということも知ったが、彼女は演出のイザベル・コイシュが担当した「パリ・ジュテーム (Paris, Je T'aime)」の一話「バスティーユ (Bastille)」にも出ている。彼女らもコイシュもスペイン人であることからのキャスティングだろう。


そういやワトリングはペドロ・アルモドバルの「トーク・トゥ・ハー (Talk to Her)」に出ていた。最初ジュラルディン・チャップリンが出てきた時は、ほとんどまったく場違いみたいに見えるこんな場所にと驚いたのだが、要するにワトリング繋がりか。アイファンズの妻アンを演じるクレア・フォーラニは「CSI: NY」と「NCIS: LA」という、CBSが誇る2大フランチャイズ・シリーズに出ていたし、その愛人ジョンに扮するジョナサン・リス・マイヤーズは、昨冬NBCの「ドラキュラ (Dracula)」でタイトル・ロールを演じていた。やはりアメリカのTVで金を稼いでおくことは必要なんだろう。


とまあ「アナザー・ミー」は、英西米合作みたいな作品だ。舞台がいかにもヨーロッパのどこかみたいな、英国だろうとは思うがどこか無国籍風という印象になったのは、そういう事情のせいもあろう。そのくせして学校の舞台の出し物はたぶんシェイクスピアだったりもする。


いわゆるジュヴナイル・ホラーとして分類される作品だろうが、ハリウッドが作ると、たとえばCWやABCファミリーでこれでもかと編成されている若者だらけのスプラッタ・ホラーになりそうなものが、大人も単なる脇以上として絡んでくるところが安心できる。ただしもうちょっと欲を言うと、エンディングはもう一捻りか二捻りくらいしてくれてもよかった。










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父のドン (リス・アイファンズ) が脳溢血で倒れて下半身不随となって以降、フェイ (ソフィ・ターナー) の家族は高層団地ビルでつましい生活を送っていた。フェイは高校の演劇の出し物で見事に主役に抜擢される。しかしライヴァルのカイリー (イヴァーナ・バケロ) はなにかとフェイにちょっかいをかけ、フェイを悩ませる。母のアン (クレア・フォーラニ) は日々の鬱屈から逃れるように、よりにもよって学校でフェイの演技の指導をしているジョン (ジョナサン・リス・マイヤーズ) と浮気をしていた。カイリーの嫌がらせは日を追うごとに度を増していき、フェイの振りをして自宅近辺にも姿を現わすようになる。日々の生活にも支障が出てきて、フェイは演技にも身が入らなくなり、精神のバランスを欠いていく‥‥


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