ザ・ワールズ・ベスト (The World’s Best) 

放送局: CBS 

プレミア放送日: 2/3/2019 (Sun) 22:00-23:00 

製作: A. スミス&カンパニー、セヴン・バックス・プロダクションズ 

製作総指揮: マイク・ダーネル、マーク・バーネット 

ホスト: ジェイムズ・コーデン 

ジャッジ: ドリュウ・バリモア、ルポール、フェイス・ヒル 

 

内容: 世界中から集めたコンテスタントによるタレント発掘コンペティション。3人のジャッジがそれぞれ50点満点で採点、その平均点に、さらにステュディオの50人がそれぞれYes/Noで採点、Yesを1点として計算し、計100点満点で採点して勝ち抜きで優勝者を決める。優勝賞金は100万ドル。


_______________________________________________________________

The World’s Best


ザ・ワールズ・ベスト  ★★1/2

タレント発掘勝ち抜きリアリティ・ショウとしては、現在、NBCの「アメリカズ・ガット・タレント (America’s Got Talent: AGT)」があり、かなり人気がある。私たち夫婦も、ジャッジのうるさいお喋りが煩わしく最初は食わず嫌いだったものが、今では会場まで生中継を見に行くほどはまっている。 

 

考えたら、これだけ人気がある番組の二番煎じ的番組がこれまでないのが不思議なくらいだった。子供のタレント・ショウのNBCの「リトル・ビッグ・ショッツ (Little Big Shots)」というのがあることはあったが、それくらいだった。遅まきながらそのことに気づいたCBSが今回投入するのが、「ワールズ・ベスト」だ。 

 

もちろん同様のタレント発掘リアリティ・ショウとはいえ、体裁まで同じわけにはいかない。それで「ワールズ・ベスト」では、国別対抗みたいな構成にして、世界各地からタレントを集めてきましたという印象を強調している。 

 

ただし、AGTでは、特に強調はしていないが、既にコンテスタントは世界中から来ており、わざわざ「ワールド」なんて形容詞を冠するまでもない。日本から登場したエビナ・ケンイチが優勝したシーズンもある。それでも、一見地元アメリカからのコンテスタントが少ない「ワールズ・ベスト」は、確かにインターナショナル色が強いという感触は受ける。 

 

ホストは「ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・ジェイムズ・コーデン (The Late Late Show with James Corden)」のジェイムズ・コーデンで、近年売れっ子だ。ジャッジの3人は、ドリュウ・バリモア、ルポール、フェイス・ヒルが務めている。バリモアは近年Netflixのコメディ・ホラー「サンタクラリータ・ダイエット (Santa Clarita Diet)」でまた注目され、ゲイ・タレントのルポールも、「ルポールズ・ドラグ・レース (RuPauls’s Drag Race)」(ロゴ/VH1) 人気が定着している。それにカントリー・シンガーのヒルという布陣。 

 

採点はコンテンスタントのパフォーマンスに対し、ジャッジの3人がそれぞれ50点満点で採点し、その平均を採る。それに後ろに座っている世界50か国を代表する50人のジャッジが、それぞれYes/Noで採点、Yesを1点として合計100点満点で採点する。75点以上を獲得すると、次のバトル・ラウンドに進む。 

 

バトル・ラウンドでは文字通りコンテスタントが1対1で勝負する。3人のジャッジは第1ラウンド同様50点満点で採点、インターナショナル・ジャッジは、優れていると思うコンテスタントにそれぞれ投票、得票数の多いコンテスタントがチャンピオンス・ラウンドに進み、ソロ、グループ、ミュージック、ヴァラエティの4カテゴリーで勝利を争い、その勝者同士で最終的な優勝者を決める。 

 

さすがに世界中から集めてきたとあって印象的なコンテスタントも多いが、既に発掘済みで知られているというコンテスタントもいる。例えばフィリピンから来た少年3人組のシンギング・グループTNTは、既に上述の「リトル・ビッグ・ショッツ」に出演済みだ。ステュディオ中に琴線を張り巡らせてハープを奏でるウィリアム・クロースは、過去にAGTで見た。ジャッジでも、日本のジャッジの一人であるホクは、かつてFOXの「アメリカン・ダンス・バトル (So You Think You Can Dance)」コンテスタントだった。当時よりお洒落になって、しかも非常に英語がうまくなっているのに驚いた。 

 

個人的に印象に残ったのは、アメリカのアカペラ・グループのナチュラリー7、日本のヴァイオリニストのマナミ・イトー、韓国のダンス・グループのエモーショナル・ライン、英国の腹話術師ニナ・コンティ、カザフスタンの少女シンガー、ダネリア・ツルショヴァといったところ。 

 

ナチュラリー7は単純に素晴らしい。マナミ・イトーは実は右腕がなく、義手でボウを持って弾くという視覚的インパクトが強烈。エモーショナル・ラインは特にバトル・ラウンドでヴィヴァルディの「四季」に合わせて踊ったクラシック・ヒップ・ホップが秀逸。近年、AGTや「ワールド・オブ・ダンス (World of Dance)」(NBC) 等に出てきて印象を残す韓国のダンス・グループが多く、韓国のダンス・レヴェルはかなり高いと思わせる。 

 

コンティは、人形に催眠術をかけるというネタで、つまり、人形に催眠術をかけると、その操り手でもある腹話術師も寝ることになって、ステージ上で二人で寝てしまうというネタや、独特の視点で、まだ腹話術は色々やりようがあると思わせた。AGTでも腹話術師が勝ったり最後まで残ることが多い。ツルショヴァは、単純に可愛さが◎。また、同じくカザフスタン出身で、勝ち進んできたのに若手にチャンスを与えたいと言って棄権したシンガーのディマシュ・クダイバージェンは、6オクターヴというプロのオペラ・シンガーも真っ青という音域の広さで、次は何歌ってくれるのかと期待していたのに残念。 

 

そんなこんなで最後まで残って勝ったのは、インディアンの子供ピアニストのリディアン・ナダスワラム。確かに子供としては高いテクニックだが、やはり大人には負けるだろう。それでも、色々な弾き方や演出でエンタテインメント性が非常に高いことが、ジャッジを唸らせた。個人的には、あと数年後に期待する。 

 

また、「ワールズ・ベスト」に先んじて、1月には大御所AGTも、世界中で放送されている現地版AGTウィナーを含めた過去のコンテスタントを集めて、「アメリカズ・ガット・タレント: ザ・チャンピオンズ (America’s Got Talent: The Champions)」というスペシャル・シーズンを放送した。上述のエビナ・ケンイチも出ていた。ただしエビナは、本人も歳とって体力的にきつくなってきたと言う通り、動きにかつての切れ味がなく、敢えなく最初の段階で落とされた。エビナが勝った時のAGTで最も印象的だったのは、会場を真っ暗にして、ジャンプした瞬間だけ照明がつくというストロボ効果で宙に浮いているように見えるという演出で、体力ではなく、ああいうアイディアこそが持ち味だと思うのに、今回はその辺が生かされてなくて残念だった。 

 

この「チャンピオンズ」で勝ったのはカード・マジシャンのシン・リムで、前第13シーズンの覇者ということで、視聴者の記憶にも新しかったことも有利に働いたのだと思う。ジャッジの採点のみで勝敗が決まる「ワールズ・ベスト」と異なり、AGTは視聴者投票で勝敗が決まる。同様に第2位は一昨年第12シーズンの勝者、腹話術シンガーのダーシ・リン・ファーマーだった。 

 

総じて、これまでの歴史と蓄積もあり、「ワールズ・ベスト」よりAGTの方が僅かながらレヴェルが高いかなという気がした。とはいえ、世界中の知らなかった才能を発掘してきて見せてくれるならば、どっちだろうとこちらは構わない。 











< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system