ワールド・オブ・ダンス   World of Dance 

放送局: NBC 
プレミア放送日: 5/30/2017 (Tue) 22:00-23:00 
製作: ニュヨリカン・プロダクションズ、ワールド・オブ・ダンス・プロダクション 
製作総指揮: ジェニファー・ロペス、エレイン・ゴールドスミス-トマス、ベニー・メディナ 

ホスト: ジェナ・デワン・テイタム 
ジャッジ: ジェニファー・ロペス、デレク・ハフ、ニ-ヨ 
 
内容: 勝ち抜きダンス・コンペティション。優勝賞金は100万ドル。


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World of Dance


ワールド・オブ・ダンス  ★★1/2

ダンスや歌系のパフォーマンスものは好きでよく見ている。特に勝ち抜き系はだいたい網羅していると思う。とはいえむろん100%漏れなく見ているというわけではない。「ワールド・オブ・ダンス: WOD」とほぼ同時期に始まったABCの「ザ・ゴング・ショウ (The Gong Show)」の場合、パフォーマンス・ショウではあるが、水準が低い。単に素人芸の域を出るものではなく、しかもほとんどが受け狙い、コメントするジャッジの方もお笑い優先とあって、すぐに飽きた。 

 

それに較べるとWODは名称に偽りなく、世界最高峰のダンスを見せてくれる。非常に楽しませてくれるのだ。元々同名のダンス・コンペティションがあったらしく、今回ジェニファー・ロペス、デレク・ハフ、ニ-ヨというセレブリティ・ジャッジを加え、勝ち抜きのTVシリーズとして構成している。 

 

番組進行は、18歳以上の成人が4人以内で踊る「アッパー」、子供の「ジュニア」、5人以上のグループの「ティーム」の3部門に分かれ、ジャッジの3人がそれぞれ得点をつける。パフォーマンス、テクニック、コレオグラフィ、クリエイティヴィティ、プレゼンテイションの5種目にそれぞれ20点ずつで、合計100点満点。第一次の予選ラウンドは3人の平均80点が足切りラインで、それを超えると予選通過で次のラウンドに進む。 

 

2次ラウンドは「ザ・デュエルズ」と称し、2人 (2組) の出場者同士がそれぞれ直接対戦し、得点の高い方が勝者となって3次ラウンドに進む。3次ラウンドは「ザ・カット」で、ここまで残った者が全員順繰りに踊り、上位の2人 (2組) が部門別決勝に進む。そして部門別に勝った者同士のダンス・オフで最終的なワールド・チャンピオンを決める。 

 

見ていると出場者の半分くらいは既に知っている。グループのスーパークルーやキンジャズ、ジャバウォッキーズはMTVの「アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー (America's Best Dance Crew: ABDC)」出身だし、アッパーのフィク-シャンはFOXの「アメリカン・ダンス・アイドル (So You Think You Can Dance: SYTYCD)」出身だ。スーパークルーには両番組に出ている猛者も何人もいる。双子のレ・ツインズは、ビヨンセのツアーやSYTYCDのゲスト・パフォーマンス等で、ダンス好きなら知らぬ者はないという存在だ。 

 

他方ほとんど知らないのがジュニアだ。正直言うと、NBCの「アメリカズ・ガット・タレント (America's Got Talent: AGT)」、および先シーズンのSYTYCDのジュニア・ヴァージョンを見た経験から、私はジュニア・ダンサーをほとんど買ってない。 

 

ジュニアだ。テクニックや力強さ、美しさがシニア・レヴェルに達してないのはありありで、そりゃあ素質を感じさせる者はいるが、別に今青田買いをしないといけない理由がよくわからない。あと数年待てばいいだけの話ではないか。特にイラッとさせるのがガキのボールルームおよびラテンのダンサーで、そういう風にしろと教えられているんだろう、表情の作り方や所作、化粧や衣装がただただ過剰で、可愛らしいというよりは小賢しいという感じで、嫌悪感の方が先に立つ。顔面に蹴り入れたくなるような奴ばかりだ。元々ガキが好きじゃないのだ。 

 

とはいえ発見があったのも事実で、イーヴァ・アイゴなんかはアッパー・レヴェルでも充分通用する。しかしそのことは、ジュニア部門を作る意味なんかさらさらないことを意味してもいる。うちの女房なんかは寛容で、子供たちに踊る目的ができていいんじゃないと言うが、しかし私が見たいのは今現在レヴェルの高いダンスなのだ。 

 

あと、もう一つ文句を言いたいのが、パフォーマンス中のカメラの切り換えだ。これは、もう声を大にして文句を言いたい。パフォーマンス中にジャッジのリアクション・ショットなんか挟み込むな!  

 

この手のオーディション/コンペティション番組は、どうしてもパフォーマンスの最中にジャッジのリアクションが挿入される。上記番組も皆そうだ。とはいえ本分は参加者のパフォーマンス部分にあるからして、ジャッジのリアクション・ショットは必要最小限に抑えられる。また、AGTにおけるマジックのパフォーマンスのように、わざわざジャッジにリアクションさせる間をとるパフォーマンスもあるから、そういう場合は一切構わない。というか、そのリアクションも含めてのパフォーマンスだ。歌の場合も、リアクションが挟み込まれたからといって、歌自体は聴こえているから、特に不都合は感じない。 

 

しかし、ダンス・パフォーマンスだけは別だ。見てないとわからない。だからこそSYTYCDは、本戦が始まるとリアクション・ショットなんか挿入しないでパフォーマンスは通しで全部見せる。それなのにWODは、必ずすべてのパフォーマンス中にいちいちくだらないジャッジのリアクションを見せて、パフォーマンスを削るのだ。しかもパフォーマンス中に何度も。これは許せん。見たくもないジャックのリアクションが映る一瞬に、あっと言わせるダンサーの動きがあるかもしれないのだ。それを見せないで番組の存在意義があるか。 

 

これはジャッジの一人であり、プロデューサーも兼ねているロペスの存在が大きいかもしれない。元々演出過剰の中南米のTVに親しいロペスは、かつてプロデュースしたFOXの「ケ・ビバ! ザ・チョーズン (Q’Viva! The Chosen)」でも要らずもがなの余計な演出を随所に挟み込み、むしろ逆効果になっていた。テレノヴェラ隆盛の中南米においてはああいう演出が受けるのだろうが、先進国の一般的な視聴者は、あれでは作り込み過ぎて逆に引くだけだと思う。それと似たようなメンタリティがWODにも見受けられる。 

 

一方番組のメリットは、これはもう、これまで知らなかったダンサーたちのパフォーマンスを見ることができることに尽きる。レ・ツインズやキンジャズの新パフォーマンスを見れるのは嬉しいが、それまで知らなかったダンサーを発見するのは、それにも増して楽しい。上述のアイゴにも感心したが、その他にもケオネ&マリ、クイック・スタイル、イアン・イーストウッド&ザ・ヤング・ライオンズらにも唸らされた。世の中にはまだまだ知られていないレヴェルの高いダンサーが大勢いる。 

 

私が記述したダンサーたちはジャッジ受けもよく、皆勝ち抜いて次のラウンドに進んでいったが、最も大きな事件は、途中でレ・ツインズの一人が足を怪我してしまったことだ。ダンサーだ。足の怪我は命とりだ。それが立つのも覚束ない。絶体絶命と言ってもいい。しかし撮影は待ってはくれない。無念のリタイヤか、という状態で見せた、発想の転換で車椅子を使って座りながら見せたダンスは、彼らのベストのダンスではなかったろうが、それでもお見事と唸らされた。 

 

日本でもダンス熱は盛んなようで、WODを日本で放送する可能性もありそうだから誰が優勝したかをばらすのは控えるが、まあ順当と言え、異存はない。番組は第2シーズン製作も決定したそうだから、また、知らなかったダンサーを発見するのが今から楽しみだ。 










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