リトル・ビッグ・ショッツ   Little Big Shots

放送局: NBC

プレミア放送日: 3/8/2016 (Tue) 22:00-23:00

製作: ア・ヴェリー・グッド・プロダクション、イースト・ワントウェルヴス・プロダクション

製作総指揮: スティーヴ・ハーヴィ、エレン・デジェネレス

ホスト: スティーヴ・ハーヴィ


内容: 子供のタレント・ショウ。


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Little Big Shots


リトル・ビッグ・ショッツ  ★★

私はあまり子供が好きではない。小さいガキはすぐ泣くし、甘やかすとつけ上がる。女の子なら可愛いければまだ遠くから見る分には構わないが、コミュニケイションをとろうとすると、とたんにイライラさせられることになる。これがエナジーに溢れた男の子だとなおさらで、うるさいぞお前ら、喚くな、と怒鳴りたくなる者ばかりだ。


NBCの勝ち抜きタレント・リアリティ・ショウ「アメリカズ・ガット・タレント (America's Got Talent: AGT)」では、よく、まだ幼い子たちが出場する。大人顔負けの歌とダンスができる子たちがエントリーしてくる場合が多い。特に多いのがラテンやボールルームのダンサーで、ペアだったり団体だったりと、わらわらと出てくる。大人も混じった混成チームだと、まず間違いなく子供が最前列でスポットライトを浴びる。


そしてこれもまず間違いなく、女の子は過度にケバケバしい化粧をしている。だいたい、ガキに化粧して似合う子なんてまずいない。これは東洋人だろうが西洋人だろうが一緒だ。「タクシー・ドライバー (Taxi Driver)」のジョディ・フォスターのように、子供だからこそ可能な微妙なエロティシズムを発散する場合も稀にはあるが、ほとんどはただのませた気色の悪いガキにしかならない。


そしてこれまた例外なく、そういうガキは大人に媚びる。そうしなさいと周りの大人たちから教育を受けているのかもしれないし、本能かもしれない。アメリカの多くの大人は、それをまあ背伸びしちゃって可愛い、と受けとる者が多いものだから、ガキの方もまた図に乗る。しかし私は、何が嫌いかって媚びるガキほど嫌いなものはないのだ。ほとんど鳥肌立つくらいイライラさせられる。


てなわけで、私は「リトル・ビッグ・ショッツ」も本当のところを言うと特に興味を持っていたわけではない。がしかし、この番組、今シーズンの新番組では1、2を争うヒット番組になってしまったのだ。それで遅まきながらDVRに録画しておいたプレミア・エピソードを見てみた次第。


冒頭に登場する4歳の坊やは、バスケットボールの天才と既に言われている。とにかくシュートがうまく、どこからでも決める。アパートの6階だか7階だかのヴェランダから地上に置いてあるリングにも過たず入れる。とはいえこれはヴィデオだからな、決めるまで録画すればいいことではある。


と皆思っているのは間違いないので、会場の観客を前に実際に子供用のバスケット・ポストを立て、シュートさせる。だいたいバスケットまで7、8mといったところだろうか。プロでも3ポイントのレンジくらいある。それを実際にぽんぽんとシュートを放ち、全部成功させた。まだ力がないので全部両手で抱え持ってのシュートだが、それでも確かに、ちょっと感心した。NBAのスティーヴン・カリー並みだ。


その後ゴンドラに乗せて吊り上げ、ビルの階上を模した状態からもシュートさせる。10mくらいか。こちらは惜しくも一本外したが、それでも都合10本くらいシュートを放ってミスったのはこの一本だけだった。素直に感心する。このまま順調に育てば、本当にNBAのスター・プレイヤーになれるかもしれない。


2番目に登場したのはスペリング・ビー、要するに英単語の綴りを何万語も覚えている坊や。スペリング・ビーはアメリカの伝統的な行事で毎年TV中継もされるのだが、近年は最後まで勝ち残る少年少女はインド系が多い。この坊やもインド系で、笑ったのは壇上でいきなり鼻クソをほじくり出したこと。話の途中だったのでそこだけカットするというわけにもいかなかったようだ。


次に出てきた兄妹はデュエットし、確かにこれだけ歌える者は大人でもあまりいないと思わせる。その次はちょっとぽっちゃりとした女の子がタップのようなダンスを踊るが、これははっきり言ってお世辞にも上手と言えるものではなく、単にキャラクターだけのようだ。この回の最後はわざわざ日本から呼んだと思われるブルース・リーまがいのヌンチャク使いの坊やで、実はこれまた特に感心はしなかった。どっちかっつうとこれもキャラクター重視か。しかし通訳として登場したこちらもまだせいぜいミドル・ティーンの女の子は、とても可愛かった。


今回登場した子供たちは、順に白人 (東欧系?)、インド系、中国系、ラテン系?、日本人と、人種も多種多様。ちらと見た次回予告では黒人も出ていたし、あらゆる人種を揃えることに気を使っていることが窺える。


確かに世の中には色々な才能を持っている子供たちがいることを否定はしないが、しかし、第1回を見ての感想は、やはり子供のタレント・ショウ以上のものではないなというものだ。タレント発掘番組としてはどう見てもAGTの方がレヴェルが上だ。バスケットボールを見るなら、うまい子供よりNBAのバスケットボールを見る方がエキサイティングだし、歌もダンスもヌンチャクも、やはり子供にしてはうまいというレヴェル、あるいは子供がやっているのを囃して見て楽しむ以上のものではない。神童も二十歳超えればただの人かもしれないし。


唯一異なるのはスペリング・ビーで、元々スペリング・ビーは子供のためのイヴェントであることもあり、今回登場した子は、もしかしたら本当のスペリング・ビーでもかなりいい線行くかもしれない。


それよりも番組が成功した理由としては、子供キャラと、ホストのスティーヴ・ハーヴィとの掛け合いの要素が大きいと思われる。何を言うか、どういう行動に出るかわからない子供に合わせて、ハーヴィが臨機応変に対応してうまく観客の笑いをとっている。人気の理由はこの辺にあると思う。


ハーヴィは黒人で、髭のあるユニークな顔をしている。ここ数年でシンジケイションの長寿ゲーム・ショウ「ファミリー・フュード (Family Feud)」の新ホストに就任しただけでなく、自身のトーク・ショウ「スティーヴ・ハーヴィ (Steve Harvey)」も人気があるなど、現在、飛ぶ鳥を落とす勢いという印象がある。しかしアメリカ以外の国の者にとっては、それらの番組よりも、昨年末のミス・ユニヴァース・ページェントにおいて、優勝者の名前を間違えて発表してしまったあのホスト、という方が通りがいいかもしれない。


キャリアとしては最大の汚点とも言える大きな失敗だったが、ハーヴィの場合、平謝りに謝った後、なぜ自分が間違ったアナウンスをしてしまったかを釈明し、「スティーヴ・ハーヴィ」にも当事者のコロンビア代表を呼んで真摯に謝った。こういう態度が評価されて、キャリア最大の危機から、あいつもなかなか悪くないと、逆境を逆にプラスに変えることに成功している。要するに、そういうホスティング技術や態度が業界からも評価されている。


「リトル・ビッグ・ショッツ」では、子供たちを相手に当意即妙の受け答えを見せ、会場を沸かす。子供相手に話を聞き会話を進めるというのは、話術、頭の回転の速さというよりも、本人のキャラクターによる部分が大きい。現在、斯界で子供相手に話をさせてうまいと感じさせるのは、ハーヴィと、エレン・デジェネレスが双璧という感じがする。「リトル・ビッグ・ショッツ」において、ハーヴィがホストを担当し、製作がデジェネレスが代表のア・ヴェリー・グッド・プロダクションというのを聞くと、さもありなんと思う。










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