America’s Got Talent   アメリカズ・ガット・タレント

放送局: NBC

プレミア放送日: 6/21/2006 (Wed)

第6シーズン・プレミア放送日: 5/31/2011 (Tue) 20:00-22:00

製作: フリーマントル・メディア・ノース・アメリカ、サイコTV

クリエイター: ケン・ワーウィック、サイモン・コーウェル、ジェイソン・ラフ

ホスト: ニック・キャノン

ジャッジ: ピアース・モーガン、シャロン・オズボーン、ハウイ・マンデル


内容: 歌やダンスだけに限らず、突出した何かを表現するあらゆる才能の発掘を目指す勝ち抜きタレント・コンペティション。優勝賞金は100万ドル。


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America’s Got Talent


アメリカズ・ガット・タレント   ★★1/2

「アメリカズ・ガット・タレント」は、ここ数年、シーズンの境い目に当たる夏にネットワークで放送される番組としては、最も人気のあるリアリティ・ショウだ。2006年から放送が始まり、今夏、第6シーズンを放送中だ。元々は英国で放送された番組のリメイクであり、番組クリエイターの中には、FOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」のサイモン・コーウェルの名も見える。


第1シーズンはホストをABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire?)」のリージス・フィルビンが担当、第2-第3シーズンを日中の煽情系トーク・ショウ「ジェリー・スプリンガー・ショウ (Jerry Springer Show)」のホストとして名高いジェリー・スプリンガーが、第4シーズンから現在までは、コメディアンのニック・キャノンが担当している。


ジャッジは第1シーズンがピアース・モーガンとデイヴィッド・ハッセルホフ、ブランディで、第2シーズンにブランディの代わりにシャノン・オズボーンがレギュラーとなり、2010年からはハッセルホフの代わりにハウイ・マンデルがジャッジを担当している。


この手の番組は、英国よりも人口も多く、ヘンな人密度も高いと思えるアメリカでの方が、面白そうな番組を作れそうだなとは思う。実際、第1シーズンから奇矯な人物が出没して、それなりに話題になったりしていた。


歌なら「アメリカン・アイドル」、ダンスなら「アメリカン・ダンスアイドル (So You Think You Can Dance)」とMTVの「アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー (America’s Best Dance Crew)」があるとはいえ、歌とダンスだけが才能を表現する媒体ではないだろう。他にも絵や映画や作曲、彫刻、その他の様々なパフォーマンスや表現分野があるはずであり、その才能を発掘するという発想自体は、むしろ歓迎できる。


ところが、ではその番組を熱心に見るかというと、私の場合そんなことはなかった。その最大の理由は、番組の構成にある。タレント発掘リアリティ・ショウだ。私としてはこれまで見たこともない新しい芸や才能を見たい。しかしこの番組、とにかくやたらと芸と芸の間の間隔が長い。参加者が出てきて芸を披露するより、それに対してジャッジやホストがコメントを発したり、愚にもつかない寸芸もどきのやり取りをしている時間の方が圧倒的に長いのだ。正直言って私はほとんどうんざりして、番組を見なくなった。新しい才能が発掘されるのはまことに喜ばしいが、私が見たいのは芸そのものであって、それに対する他人の反応や評価ではない。


現在、だいたいネットワークにおける1時間番組は、正味42-43分程度だ。「アメリカズ・ガット・タレント」では、その上にジャッジやホストのコメントが必要以上に長い。そのため、計算してみると、実際に番組中で参加者の芸を映している部分は、1時間中15分あるかないか程度でしかない。いくらなんでもこれはあんまりだ。「アメリカン・アイドル」や「アメリカン・ダンスアイドル」でも、番組が進んでファイナルに近くなってくると、参加者が減ってくるためどうしても実際のパフォーマンス部分は目減りするが、しかしほとんど最初からどうでもいいジャッジのおしゃべりばかりが目につく「アメリカズ・ガット・タレント」は、どうしても見る気になれなかった。


それが今回、こうやって番組を追っかけて見てこの欄を書いているのは、ひとえにテクノロジーの進歩の賜物だ。つまり、私は今春から番組プロヴァイダを値上げが嵩むコムキャストからヴェライゾンのFIOS (ファイオス) に替えたのだが、その時、DVR (デジタル・ヴィデオ・レコーダー) も導入した。これが超便利モノなのだ。


これまでは見たい番組は録画しておいて後で見る場合も多かったが、DVRの場合、現在放送中の番組を一時停止したり、巻き戻し早送りもできる。もちろんデジタルだから物理的にテープを巻き戻したりするわけではないが、とにかくそのせいで、不必要な部分やコマーシャル等を飛ばして見るという作業が、飛躍的に楽になった。


私はコマーシャルはTV放送が無料であるための必須条件であると思っているので、フリーTVという媒体が生き残るためにも、実際に視聴者が見る見ないはともかく、コマーシャルは必要だと思っている。しかし、番組そのものの中で不要な部分があるのは我慢できない。その部分が圧倒的に長い「アメリカズ・ガット・タレント」は、だからこれまで見ていなかったわけだが、DVRだと、その余計な部分飛ばしが、リモート操作でボタンを数回押すだけであっという間にできるのだ。こいつは本当にありがたい。逆に言うと、1時間番組を15分で見れて時間を節約できる。そういうわけで、5年ぶりに今回、番組を見ているのだった。


今回番組を見て初めて、今年いきなり時代の寵児的な扱いで各地で引っ張りだこの12歳のクラシック界の少女シンガー、ジャッキー・エヴァンコが、「アメリカズ・ガット・タレント」出身だということを知った。昨シーズンのファイナリストで、ファイナルで敗れ惜しくも2位になったそうだが、1位になった者を見た記憶はないのに、エヴァンコは最近あちこちで目にする。PBSでは既に自分の特番を持ってコンサートを中継していたし、こないだ「ジ・オプラ・ウィンフリー・ショウ (The Oprah Winfrey Show)」の最終回でも出てきて歌っていた。その他にも様々なトーク・ショウの類いに出てきて美声を披露しており、本当によく目にする。


彼女が「アメリカズ・ガット・タレント」出身というのは、考えれば納得できる。クラシックでは「アメリカン・アイドル」に出ても評価されないだろうし、第一、彼女の歳ではまだ資格条件年齢に達してないだろう。その辺の垣根を取り払い、老若男女すべてにあまねく門戸を開いた「タレント」は、確かに存在価値はあるだろう。世界的センセーションとなったスーザン・ボイルも、本家英国版の「タレント」出身であるわけだし。


さらに見てみると、世の中には色々な芸/パフォーマンス/才能がまだまだ埋もれているということもよくわかる。歌とダンスだけではなく、マジック、スタンダップ・コメディ、サーカス系の誰もが思い浮かべそうなものから、それらを融合した様々なタイプのパフォーマンスがある。それらは確かに「タレント」がなければ日の目を見ることなく、誰にも知られることなく消えて行ったに違いない。


番組進行としてはかなり「アイドル」にも近く、まず全米各地の予選で、玉石混交で参加者がパフォーマンスを行う様を見せる。この時点ではかなりカン違い参加者によるお笑いが挟まるというところも、「アイドル」と同じだ。


予選を通過した参加者はラスヴェガスに集められて最終予選に挑む。その中から54人 (グループ) がジャッジによって選ばれ、晴れてLAで収録される本選に進む。それから後は、ジャッジはコメントを差し挟むものの、勝ち抜いていけるかどうかは視聴者の投票次第だ。


前半での私の贔屓は二人おり、最初出てきてジャスティン・ビーバーそっくりの容姿でビーバーの曲を歌ってバカ受けしたものの、次ではオリジナル曲を歌って今度は酷評され、一度は落ちたものの慈悲でセカンド・チャンスを与えられ、しかしやっぱり落ちた女性シンガーのダニ・シェイと、製作に気が遠くなるほど時間がかかると思えるドミノ倒しのキネティック・キングだ。単なるドミノ倒しではなく途中で様々なトリックやギミックを取り入れ、視覚的にダイナミックなドミノ倒しを創造してみせた。


しかしキネティック・キングは、ライヴ放送のドミノ倒しで予定通りにドミノが倒れなかった。これが一発勝負のライヴの恐ろしさでもある。どうやってもうまく行かず、結局最後はたぶん製作に一晩はかかったであろうと思われるドミノをホストのニック・キャノンと一緒に踏み倒して鬱憤を晴らさざるを得なかった。事がうまく運ばなかったキネティック・キングは当然結果発表で落ちたのだが、そこでまた、思いもかけずジャッジの判断による敗者復活で息を吹き返した。


最もバカげている、しかし目が離せないのがプロフェッサー・スプラッシュで、単純に数メートル上の飛び込み台からゴムボートに張った水の中に飛び込む、いや、腹から落ちるという単純かつバカげている上に非常に危険な一瞬芸で、もう、本当に、なんでこんなのに命かけているのかまったくわからない。しかし本人は大真面目なのだ。


ここまでで今シーズンの優勝候補の筆頭は、ずばり上にリンクを張ったティーム・イルミネイト (Team iLuminate) だろう。こんなパフォーマンスがあるのかと目から鱗の芸だ。今のところ彼らに対抗できるティーム/パフォーマーはいないと思う。


ところで、第1シーズンのジャッジを務めたブランディ、および第4シーズンまでジャッジを務めたデイヴィッド・ハッセルホフだが、実はこの二人、番組を降りた後に共に彼ら自身の私生活に密着するリアリティ・ショウに出演している。それらの番組、ブランディの「ブランディ・アンド・レイ・J: ア・ファミリー・ビジネス (Brandy and Ray J: A Family Business)」とハッセルホフの「ザ・ハッセルホフス (The Hasselhoffs)」は、「ブランディ・アンド・レイ・J」はともかく、「ハッセルホフス」は2話放送だけですぐキャンセルされた。誰もハッセルホフのプライヴェイトな生活まで見たくはなかったということか。


というか、ハッセルホフというと、誰でも彼がぐでんぐでんに酔っぱらって床に落ちたサンドイッチを拾って食ってたYouTubeセンセーションの動画をよく知っているので、それ以上は興味がなかったからではないかと思う。ついでに言うとブランディとハッセルホフは、昨シーズンのABCの「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」で二人ともダンサーとして参加、こちらでもハッセルホフは最初に追放された参加者となった。しかしそのハッセルホフ、今では本家「ブリテンズ・ガット・タレント (Britain’s Got Talent)」のジャッジとなっている。番組参加者だけでなくジャッジだって、人生どう転ぶかわからない。



追記:

勝つのはティーム・イルミネイト、もし外したとしてもその場合はシルエッツで盤石と思っていた今回の「タレント」だが、予想に反して勝ったのは、一見ホームレスのレゲエのおっさん、実はフランク・シナトラ張りのクルーナーであるランドー・ユージーン・マーフィJr.だった。なんといっても見かけといったん歌い始めた時の落差が大きくて印象強烈というのが大きかった。彼は実際に一時はホームレスでもあったそうで、その辺のアメリカン・ドリーム的な要素も視聴者が後押しした理由の一つだろう。










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