Taken 3


96時間/レクイエム  (2015年1月)

実は「96時間 (Taken)」2作目の「96時間/リベンジ (Taken 2)」は見てないのだが、こないだたまたまTVを見ている時にやっていて、途中からではあるが、ふうん今度はイスタンブールが舞台か、それはそれで面白いなやっぱり、今やニーソンは不良アクション中年の星だなと思いながら見ていた。しかしまあいくらなんでも次はないだろうなと思っていたら、3作目の「レクイエム」の公開だ。


ニーソン自身、「リベンジ」公開後に3作目はないだろうと公言していたのだが、製作の20世紀FOXがドル箱シリーズになりそうなチャンスをほっておくわけがなく、急転直下製作が決まったそうだ。いずれにしても、おお、これはと思って、巷ではアカデミー賞に絡む作品の熱い戦いが繰り広げられているのだが、これはニーソンを応援しなくてはと、それらの作品はひとまず置いといて、「レクイエム」を見にいく。


それにしてもニーソン、近年の出演作は「96時間」シリーズ以外でも、「ザ・グレイ (The Grey)」「フライト・ゲーム (Non-Stop)」と、場所と設定こそ違え、基本的に中年男の哀愁と強さを演じる作品ばかりだ。でも、よく考えたらそれ以前から、若い時ですらニーソン作品というと、「ダークマン (Darkman)」を筆頭に孤独な男の肖像を描くものが多かった。というか、ニーソンは若い頃からおっさんくさかった。


本当に歳とった現在では、苦みばしったヒーローというにはちょっと甘さも感じられるところが「96時間」で娘離れのできないダメおやじ的キャラ付けをされる理由でもあるが、一方で強いだけのスーパーヒーローではない人間くささもあって、より感情移入しやすくもなっている。「96時間」が3作目まで作られたのもわかる。


一方、娘思いの父親というと微笑ましくもあるが、娘の立場から見た場合、かなり鬱陶しいだろう。成人した娘に大きな縫いぐるみをプレゼントするという発想は、迷惑この上ない。実際結構うざいと思っている節もあるが、それでも最後には父を頼ってしまうのは、結局はこの父にしてこの子ありだったかと思ってしまう。彼女のボーイフレンドは、結婚して子供ができても、この二人の関係に割り込むのは簡単なことではなさそうだ。ちょっと喧嘩するとすぐ父の所に戻って行ってしまい、またかとうんざりする旦那の姿が目に見えるようだ。


他方、元妻のレノーアは、ブライアンがそういう性格だから窮屈に感じて、今では金持ちの別の男と再婚している。それでもたまにブライアンと連絡をとり合っていたりするが。実際「リベンジ」ではキム共々一緒にイスタンブールにいたりする。レノーアを演じているのはファムケ・ヤンセンで、「ウルヴァリン (The Wolverine)」で死んでも成仏できない役かと思えば、「96時間」でも結局殺されてしまうのか。しかしもしかしたら「96時間」でもブライアンの心の中では死なず、また出てくるかもしれない。「96時間」は3作目はなかったはずがいつの間にかトリロジーになった。4作目が作られない保証はない。あの終わり方では作ろうと思えばいくらでもまた作れるはずだ。


ところで、実はレノーアが再婚したスチュアートの顔と性格を覚えてなくて、そうか、ダグレイ・スコットが演じてたんだったっけ、まったく覚えてなかった、と調べてみたら、第1作でスチュアートを演じていたのはザンダー・バークリーで、やっぱり違う役者だった。第1作でも「レクイエム」でも役名が同じスチュアートということは、レノーアが再々婚して違う男と結婚したということでもないだろう。


人気があると長く続くTVでは、シーズンが代わった時に同じ役を違う役者が演じるということはままあるが、映画では、ジェイムズ・ボンドやバットマンやスパイダーマン等のスーパーヒーローを別にすると、まあないことはないだろうが、最近の例ではすぐ思い出せるのは「X-メン (X-Men)」シリーズで共にミスティークを演じたレベッカ・ローミンとジェニファー・ロウレンスくらいだが、ああこれもスーパーヒーローの部類に入るか。そうするとクラリス・スターリングを演じたジョディ・フォスターとジュリアン・ムーアがいたが、ハンニバル・レクターだってリドリー・スコット作品以外でTVでブライアン・コックスやマッズ・ミケルセンが演じていたりもする。これはスーパーヒーローとは言えないだろうが少なくともアンチヒーローって感じだろうか、などと色々連想したりする。


思うに「96時間」シリーズがヒットした理由は、娘を拉致された、家族を脅かされた父が立ち上がって家族を守るために奔走するという、単純で感情移入しやすい構図が多くの人、とりわけブライアンと同世代の人間、特に男性にアピールしたからだろう。父を演じるのがニーソンと聞くと、その姿がありありとイメージできるのだ。単純明快質実剛健。プロットをどんなに捻ってあろうと、イメージは単純だ。そのシンプルなわかりやすさが心地いい。


演出は「リベンジ」に続いてベッソン組のオリヴィエ・メガトンだ。実はメガトンはベッソン原作の「Taxi (Taxi)」をアメリカでNBCがリメイク放送しているニューヨーク版TVシリーズ「Taxi ブルックリン (Taxi Brooklyn)」のパイロットも演出している。主人公は髪を切って「グレイズ・アナトミー (Grey's Anatomy)」からがらりと印象変わったカイラー・リーだ。


このパイロットはしかし、ポイントとなるアクションが今ひとつで感心しなかった。後で調べて演出がメガトンだったことを知ったわけだが、やはりTVと映画では金と時間のかけ方が違うからこんなに印象変わってくるのだろうか、それに較べれば「レクイエム」はそこそこ楽しめてよかった。しかし、やはり「レクエイム」でも拳銃対マシンガンで、マシンガンぶっ放されても主人公にだけは一発も弾が当たらないという演出は頂けない。やっぱり「96時間」シリーズはこれで打ち止めがいいのかもしれない。特に邦題の「96時間」というのは既に意味を成してないし、などと思うのだった。











< previous                                      HOME

元CIAエージェントのブライアン (リーアム・ニーソン) は一人やもめ暮らしで、たまに成長した娘のキム (マギー・グレイス) と会うことが数少ない楽しみの一つだった。しかしそのキムもやがて結婚して永久に自分の手元を離れていってしまうと思うと、気分が沈む。一方ブライアンの元妻で金持ちのスチュアート (ダグレイ・スコット) と再婚したレノーア (ファムケ・ヤンセン) は最近スチュアートとうまくいってないようで、ブライアンを訪れて相談事があるような素振りを見せる。ある朝、レノーアが来るためにコーヒーを買いに外に出たブライアンが戻ってくると、レノーアがベッドの上で殺害されていた。すぐに警官が現れ、嵌められたと知ったブライアンは、警官を振り切って逃げる。果たしていったい誰が何のためにブライアンを嵌めようとしているのか‥‥


___________________________________________________________

 
inserted by FC2 system