ディス・モーニング   (This Morning)   

放送局: CBS  

新ホストのファースト・エピソード放送日: 5/20/2019 (Mon) 7:00-9:00   

ホスト: ゲイル・キング、アンソニー・メイソン、トニー・ドコピル 

 

イヴニング・ニューズ・ウィズ・ノラ・オドネル (Evening News with Norah O'Donnell) 

放送局: CBS  

プレミア放送日: 7/15/2019 (Mon) 18:30-19:00  

製作:  CBS  

ホスト: ノラ・オドネル 

 

内容: 新ホスト/アンカーが就任したCBSの朝のトーク・ニューズと夕方のワールド・ニューズ。 


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一昨年暮れにジェフ・グロアがCBSの基幹ワールド・ニューズ「イヴニング・ニューズ」のアンカーに就任してから、まだ1年半しか経っていない。それなのに、新アンカーの就任が発表された。近年、長期滞在型が主流のネットワークのワールド・ニューズが、新しいアンカー就任に失敗したとは言わないまでも、アンカーが長期間コミットしない例が多く見られる。 

 

これは、いつどこでも見ることのできるインターネット・ニューズやSNSの隆盛といった、時代の趨勢に多く理由を負っている。昔ほどワールド・ニューズが絶対視されている時代ではない。とはいえ、一方でまだ多くの人々が信頼できるネットワークのニューズ・アンカーを求めているのもまた事実だ。ABCの「「ワールド・ニューズ・トゥナイト (World News Tonight)」アンカーのデイヴィッド・ミューアは完全に視聴者に定着したという印象があり、今後も長く続いていけるだろうと思う。そんな中で、ミューア同様若いグロアが、就任してこんなすぐ辞めることになろうとは思ってもいなかった。 

 

かつて報道のCBSと言われたほどニューズ報道に強かったCBSは、現在ではお株をABCやNBCに奪われ、モーニング・ニューズもイヴニング・ニューズも、3大ネットワークでは視聴率は最下位だ。それでも、グロア以前の「イヴニング・ニューズ」は、スコット・ペリーがつつがなくという感じで勤めており、一昨年は朝の「ディス・モーニング   (This Morning)」が上り調子で、今後が期待された。 

 

それをホストの一人であるアメリカ報道界重鎮のチャーリー・ローズが、セクハラ解雇で一人でぶち壊した。その後「ディス・モーニング」は、ローズ同様ハード・ニューズ出身のジョン・ディッカーソンを招き入れ、番組梃入れを図った。共同ホストとしてゲイル・キング、ノラ・オドネル、さらに後日ビアナ・ゴロドリガという、周りを3人の女性で固めたのは、どうしても硬い印象のあるディッカーソンとのバランスを考えたのだろうが、今となってはうまく行かなかったのは明らかだ。 

 

一方、グロアの「イヴニング・ニューズ」も、期待したほど若い新視聴者を獲得できなかった。要するに、ディッカーソンは朝の番組としては硬過ぎ、グロアはワールド・ニューズの重責を担うには若過ぎた。新規視聴者開拓が望めないならば、再度番組に手を入れるしかない。 

 

そういうわけで去った5月、グロア、ディッカーソン両者の退任が発表、「イヴニング・ニューズ」のグロアの後任にはオドネルが任命された。ディッカーソン、およびオドネルが去った後の「ディス・モーニング」は、キングをメイン・ホストに、アンソニー・メイソンとトニー・ドコピルが加わった。ディッカーソンはその後、再度ワシントンDCに戻って「60ミニッツ (60 Minutes)」を中心に活動、グロアは「イヴニング・ニューズ」のウィークエンド・エディションやコレスポンデントとして、一歩退いた形で現在では活動している。 

 

キングは、望めば、実は彼女が「イヴニング・ニューズ」のアンカーに就任することも可能だったと思える。かつてアメリカの女性から絶大なる支持を得ていた黒人パーソナリティ、オプラ・ウィンフリーの盟友であり、キング自身、今年「タイム」誌が選ぶ毎年恒例の「今年最も影響力のある100人」の一人にも選ばれている。女性ジャーナリストとしての知名度は全米でもトップ・クラスだ。とはいえハード・ニューズの「イヴニング・ニューズ」は、彼女のこれまでのキャリアとは多少毛色が異なるのも事実だ。結局、オドネルが「イヴニング・ニューズ」に移り、キングは事実上「ディス・モーニング」のメイン・ホストとして留任した。 

 

キングの共同ホストに任命されたのが、メイソンとドコピルだ。メイソンはCBSに長いヴェテランで、かなり馴染んだ顔だ。一方ドコピルは、これまであちらこちらで目にしたことがあるとはいうもののその頻度は高くなく、若くもあって、ほとんど新人のような印象を受ける。ドコピルで最も印象的なのは、喋りではなく、スーツを着ていても常に足元はスニーカーを履いていることだ。 

 

スーツにスニーカーがダメというルールがどのネットワークでも条文化されているわけではなかろうと思うが、それでも、ホストが実際にスーツにスニーカーを合わせて履いている、それも毎日というのは、これまで見たことがない。ドコピルは元ベイスボール・プレイヤーで、それもそこそこいい線行ったプレイヤーであるそうだ。そのことを踏まえると、たぶん怪我で引退を余儀なくされ、それも膝をやって革靴を履けないのではないか。まるっきりの想像だが、そう的を外してもいないと思う。どこかの国では社内でしか活動していないのに女性がハイ・ヒールが義務付けられているとして、時代遅れとしてニューズ・ネタになっていたが、社会の進化に逆行しているとしか言いようがない。いずれにしても、ヴェテランのキングとメイソン、若くハンサムなドコピルというのが、CBSが打ち出した朝の新しい布陣だ。 

 

このメンツでの「ディス・モーニング」は、新体制発表のあった5月中に発足したが、オドネルがメイン・アンカーに就任する「イヴニング・ニューズ」が始まったのは、7月15日だ。グロアは5月半ばには番組を去り、以降はCBSのキャスター陣が、交替でアンカーを務めた。 

 

オドネルのアンカー就任で思い出すのは、かれこれ十数年前、同じくCBSでネットワーク史上初めて単独の女性アンカーとして就任したケイティ・コーリックだ。コーリックがいたからこそ、その後ABCでダイアン・ソウヤーが続き、そして今、オドネルがメイン・アンカーに就任するという発表があっても、誰も驚きもしない。たかだか10年ちょい前までは、ネットワークで女性単独アンカーでのワールド・ニューズというのは、誰も想像すらできなかった。 

 

オドネル版「イヴニング・ニューズ」は、当初ニューヨークのステュディオから放送されていたが、12月にはワシントンDCに移動することが発表されている。ハード・ニューズが基本のワールド・ニューズが、ニューヨークではなくDCから放送されるのは納得できる話であり、番組がより政治色を強めることが予想される。果たしてオドネルが、ABCのミューア版「ワールド・ニューズ・トゥナイト」、NBCのレスター・ホルト版「ナイトリー・ニューズ (Nightly News)」のワールド・ニューズの2強体制に楔を打ち込むことができるか。まだまだワールド・ニューズ界の変貌は終わらない。 

 









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This Morning

ディス・モーニング   ★★1/2

Evening News with Norah O'Donnell

イヴニング・ニューズ・ウィズ・ノラ・オドネル   ★★1/2

 
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