ワールド・ニューズ・トゥナイト・ウィズ・デイヴィッド・ミュアー

World News Tonight With David Muir 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 9/1/2014 (Mon) 18:30-19:00 

ホスト: デイヴィッド・ミュアー 

  

内容: 新ホストが就任したABCのワールド・ニューズ。


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World News Tonight with David Muir


ワールド・ニューズ・トゥナイト・ウィズ・デイヴィッド・ミュアー  ★★1/2

3大ネットワークのABC、CBS、NBCを代表するキャスターがアンカーを務める毎夕のワールド・ニューズは、番組が各ネットワークを代表する顔であるだけに、以前はアンカーの交代は一大事件であった。 

  

かれこれ10年ほど前にネットワークのワールド・ニューズのアンカーが揃って代替わりした時は、明らかに時代は変わったという空気が感じられた。その後さらにマイナー・チェンジが施され、今回、ABCの「ワールド・ニューズ・トゥナイト」のアンカーのダイアン・ソウヤーが一線を退き、新しくデイヴィッド・ミュアーがその任に就くことが発表になった。やはり事件なのだが、それでも以前ほどマスコミや人が話題にしなくなった。 

  

つまり、現代に生きる我々は、既にTVからニューズを取得しなくなっている。iPhoneやiPad等の、常に手を伸ばすとそこにあるモービル機器から情報を得ることが最も簡便で早いとなれば、TVに 固執する理由はない。特にニューズのように、大画面で精細な画像を提供することよりも即時性の方が重要視される番組である場合なら、なおさらそうだ。今で もニューズ番組の最高峰がネットワークのワールド・ニューズであるという事実に変わりはないが、人々の生活スタイルの変化が、ニューズ番組も含め、TVの視聴の仕方を変えている。 

  

ワールド・ニューズでは、この10年で3大ネットワークではABCとCBSが最も大きな改革を経験した。CBSは史上初の女性アンカーのケイティ・コーリックを起用して番組刷新を試みたがかなわず、既にコーリックはいない。逆に女性起用では後発のABCのソウヤーの方が、無難に仕事をこなしてきた。 

  

一方そのABCも順風満帆だったとは言えず、2006年にボブ・ウッドラフとエリザベス・ヴァーガスの2人体制で挑んだもののすぐにウッドラフが取材先の戦場で負傷して離脱、ヴァーガスも今でこそ明らかになっているが、その頃多大なストレスでアルコール依存症になったことを後日告白している。 

  

その後のチャールズ・ギブソン-ソウヤー時代は小康状態で安定していたとはいうものの、共に既に御年60代で、いったんアンカーに着いたキャスターが長く安定して居座ることが好まれるワールド・ニューズにおいては、60代からのアンカー就任というのはいかにも遅過ぎた。ABCが番組若返りを模索していたのは明らかで、まだ40歳でしかない今回のミュアーの就任は、そのことを如実に物語っている。 

  

ただし40歳は、ワールド・ニューズのアンカーとしては若いけれどもレコードではなく、かつてのABCのワールド・ニューズのエース、ピーター・ジェニングスが1965年に最初にアンカーに就任した時は、なんと26歳だったそうだ。さすがにこの年齢はワールド・ニューズの重鎮を任せるには若過ぎて、ジェニングスはその後いったん番組を離れることになる。ジェニングスが再度、今度はヴェテランのアンカーとしてワールド・ニューズに返り咲いたのは1980年、42歳の時で、その後ガンで死亡するまで、25年に及ぶジェニングス時代がこの時から始まった。 

 

今でこそ報道のABCみたいな言われ方をするが、1960年代当時のABCは報道チャンネルとしてはネットワークで最も弱く、だからこそなり振り構わず26歳のキャリアのない青二才をワールド・ニューズのアンカーに引っ張ってくるなんてことが可能だった。今ならネットワークで20代の素人をワールド・ニューズのアンカーに据えるなんてアイディアは、口にしただけで乱心を疑われてクビが飛ぶ。 

  

さて、今回のミュアー就任に先立ち、まずソウヤーの最後のエピソードが8月27日水曜に放送された。さすがにソウヤーが「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」を辞めた時のような、みんなで歌って踊ってみたいな別れ方ではなく、控えめで、最後の数分間は番組を作ってきた裏方を紹介、その後懇ろに挨拶を述べて終わった。ソウヤーはワールド・ニューズからは退くとはいえ完全にリタイヤしたわけではなく、まだABC内にオフィスを持って、しばらくは単発みたいな形で仕事は継続するそうだ。先頃「ザ・ヴュウ (The View)」を勇退したライヴァル女性アンカーのバーバラ・ウォルターズだって、引退したと思ったらやはりABC内にまだオフィスを持っていて仕事しているそうだから、もしかしたらここでもまたライヴァル意識が火花を散らしているのかもしれない。 

 

その週の木曜と金曜のエピソードはエイミー・ローバックがピンチ・ヒッターを務め、ミュアーは翌週9月1日月曜から正アンカーに就任した。正アンカーとしての最初のエピソードの最初のニューズは、イエメン沖に墜落した米軍機の救助活動の報道で、次が東西両海岸を襲う異常気象、ISIS、毎年アメリカに留学している何千人もの留学生が消息不明になるという事実、中東の子供レイバー、アイスランドの噴火、AK47を所有する強盗等のニューズが採り上げられた。 

 

締め括りは、レイバー・デイの後、新年新学期を迎える子供たちに焦点を当てたヴィデオ日記の類いで、新アンカーに就任した自分の境遇と重ね合わせているのだろう。とはいっても、ミュアーはそれまでにも何度も代打アンカーを経験しており、特に気負いや初々しさといったものは感じられない。多少は緊張というか意気込みを感じないこともないが、もう既に自分の番組という感じで、根拠ない直感だが、彼は長くやれそうだ。 

 










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