Angel Has Fallen


エンド・オブ・ステイツ  (2019年9月)

まったくなんの違和感もなく見始めたのだが、実は、「エンド・オブ・ステイツ」では、さり気なく大きな役の上の変更がある。もちろん、今回アメリカ大統領に扮するモーガン・フリーマンのことだ。 

 

フリーマンが米大統領に扮するのは、私の印象ではもうほとんどお約束というか、当然みたいなことになっている。ところが、実はフリーマンが彼の全キャリアを通して大統領に扮するのは、1998年の「ディープ・インパクト (Deep Impact)」以来、今回が2回目でしかない。「エンド・オブ... (... Has Fallen)」シリーズでフリーマンが扮していたのは副大統領で、大統領ではない。 

 

ところが、映画が始まってだいぶ経つまで、私はそのことを思い出さなかった。それがある瞬間、あれ、違う、フリーマンは大統領じゃなかったと気づいた。前2作で大統領を演じたのはアーロン・エッカートだ。そうだ、彼だった。しかも彼は前作の「エンド・オブ・キングダム (London Has Fallen)」で別に死んだわけじゃない。ちゃんと生還したはずだ。なのに今回はエッカートの影も形もなく、まったく言及されない。誰も話題にもしない。 

 

なんでだろうと思って調べてみると、単純に、今回は最初からエッカートは脚本に組み込まれていなかったそうだ。ギャラの問題があったかもしれないし、単にエッカートにその気がなかっただけかもしれない。いずれにしてもエッカートは乗り気ではなく、作り手の側から見ても、そろそろ大統領は任期切れで新大統領が就任しているはずということで、あっさりと、今回の大統領はエッカート演じるアッシャーではなく、フリーマンのトランブルということに相成った。 

 

しかも、実は俳優が代わったのは大統領だけではない。マイクの妻リアも、前2作に出ていたラーダ・ミッチェルに代わり、今回はパイパー・ペラーボが扮している。名前はリアのままなので、離婚して別人と再婚したというのでもないだろう。それでも、当然同一人物だろうと思っていた妻が実は別人だったというのに気づくと、一瞬ホラーだ。もっとも、印象ではリアの出番は今回が最も少ないので、ミッチェルが飽きたのだろうと推測はできる。とはいえ、USAの「コバート・アフェア (Covert Affairs)」で4シーズンにわたってスペシャル・エージェントを演じてきたペラーボは、アクションさせてもいいものができそうなものを、ここでは家を守る母親以上のものではなく、ちょっと残念。次回に乞うご期待というところか。

 

それにしても、「エンド・オブ・ホワイトハウス (Olympus Has Fallen)」、「エンド・オブ・キングダム (London Has Fallen)」と来て、今回の邦題が「エンド・オブ・ステイツ」というのは解せん。「ホワイトハウス」と「ロンドン」はいい。オリジナル・タイトルの「Olympus」はホワイトハウスの隠語だし、ロンドンはユナイテッド・キングダムの一部だ。しかし、今回の「ステイツ」は何だ? 

 

もっとも、私も最初、原題の「エンジェル」が意味していることがわからず、調べてみた。なんでも大統領専用機のエア・フォース・ワンの愛称がエンジェルであるそうで、そのため多くの者が今回の話は大統領の乗ったエア・フォース・ワンが撃墜される話だと思っていたそうだ。しかしところがそうではなく、エンジェルとは、大統領を守るガーディアン・エンジェルであるマイク自身を指しており、彼が絶体絶命の窮地に陥ることを意味しているそうだ。ホワイトハウスやロンドンと同列で今度は生身の人間が来るとはまったく思ってなかった。 

 

いずれにしても、それなのに邦題が「エンド・オブ・ステイツ」というのは、さすがに今回ばかりは的を外している。それとも、邦題を考える者もエンジェルとはエア・フォース・ワンのことだと思っていて、そこから想像が膨らんだとか? 

 

等々、前2作から若干の変更が見られる「エンド・オブ・ステイツ」、新キャラとしてマイクの父クレイが登場、演じているのはニック・ノルティだ。ノルティが扮する、窮地に陥った息子を助ける、山奥に隠遁している気難しい親父というキャラクターは、助けるのが息子か弟かという違いがあるとはいえ「ラン・オールナイト (Run All Night)」とほとんど同じ設定で、事実そういう役がかなりしっくり来る。 

 

演出はスタントマン上がりのリック・ローマン・ウォーで、実際アクション・シーンは私見ではこのシリーズでは最もいいと感じた。同じく前身がスタントマンのチャド・スタエルスキが演出する「ジョン・ウィック (John Wick)」フランチャイズみたいに、「エンド・オブ‥‥」も、満身創痍のマイクがシークレット・サービスを辞めない限り、魅せるアクション・シリーズとして続いていけるかもしれない。 

 











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これまで何度もアメリカ大統領の命を救ってきたシークレット・サーヴィスのマイク・バニング (ジェラルド・バトラー) は、今では満身創痍で、片頭痛や不眠、腰痛等に悩まされて薬を常用していた。そんな時、マイクは新大統領のアラン・トランブル (モーガン・フリーマン) と共に訪れた休暇の川釣りの場で、シークレット・サーヴィス・ディレクターへの登用を打診される。そこへ攻撃用ドローンが多数襲来し、シークレット・サーヴィスはマイクを除き全員死傷、大統領も大怪我を負う。当然一人だけ助かったマイクに疑惑の目が向けられ、拘束される。敵の罠に嵌ったことを知ったマイクはなんとか脱出し、隠遁していた父クレイ (ニック・ノルティ) に助けを求める‥‥ 


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