John Wick: Chapter 3 - Parabellum


ジョン・ウィック: パラベラム  (2019年5月)

2017年に公開された「ジョン・ウィック2 (John Wick 2)」は、さらにその2年とちょい前の2014年末に公開された「ジョン・ウィック」の続編も続編、時間軸上で「ジョン・ウィック」が終わった直後からの話になっていた。


今回の「3」こと「パラベラム」は、やはりというか、「2」からの直接の続きになっている。「2」のラストでハイ・テーブルによってお尋ね者になったジョン・ウィックに対し、ほとんどニューヨークの住民全員が暗殺者でジョンを虎視眈々と狙っているようなシチュエイションは、マンガではあるが、それなりにエキサイトさせ、これはこれでありかと思わせた。


そして「パラベラム」は、当然のように、懸賞金をかけられたジョンがニューヨーク中を追いかけ回されるというシチュエイションで始まる。つまり、かれこれ5年前に公開された「1」から、今回の「パラベラム」までは、時間的にはほとんど経っていない。そもそもの発端である「1」のオープニングから数えても、「パラベラム」まではせいぜい数か月、印象としては一か月くらいしか経っていない。5年半を費やしてこの時間の進み方の遅さは異常と言えるくらいだ。


これは、ニューヨークを舞台としているとはいえ微妙に本物のオーセンティックなニューヨークではない、たぶんこれはパラレル・ワールド的世界を描いていることとも関係していると思える。だいたい、冒頭近くで描かれるニューヨークの顔の一つであるパブリック・ライブラリにしても、一見してこれはパブリック・ライブラリじゃないと、ニューヨーカーなら一と目で見抜くに違いない。本気でパブリック・ライブラリに似せようとした努力もあまり感じられない。


前回の「2」でも、視覚的にはニューヨークであってニューヨークでない撮り方に、微妙な違和感と共に演出家の考え方に触れたような気がしたが、今回も当然そうだ。こんな大それた所業を平気で行うからには、これは確信犯で、要するにこのニューヨークは一種のパラレル・ワールドであり、そこでは時間の進み方も我々の世界とは異なるに違いない。


ところで今回の「パラベラム」では、日本的なものに多く目配せがあり、なんとも面映ゆい思いをさせられる。一方でそれが数多あるカン違いなんちゃって日本になって見るこちらが恥ずかしくなるのを免れているのは、やはりこれが「ジョン・ウィック」シリーズの一つであり、日本への目配せはあってもそれは演出のチャド・スタエルスキの目を通した、「ジョン・ウィック」の世界の中での日本であることを我々が納得しているからだろう。


さもなければ普段は頭に鉢巻きして寿司を握っている暗殺者なんて、噴飯ものというか、まともに見たら腹立ちそうだ。しかも演じているのが、一時アメリカ版「料理の鉄人」こと「アイアン・シェフ・アメリカ (Iron Chef America)」、および「アイアン・シェフ・ショウダウン (Iron Chef Showdown)」で、オリジナルでは鹿賀丈史が担当していた美食アカデミー主宰役を、鹿賀的な大仰さではなく、カンフー的振る舞いで演じていたマーク・ダカスコスとなるとなおさらだ。まあ、彼だと寿司を握っているというのはわからんでもないが。


こういうトンデモ展開が炸裂するのが「パラベラム」だ。しかしこれは「ジョン・ウィック」であるから、既に慣れてしまっている我々は、そのアクションを楽しんで見てしまう。しかし、実は今回は、うちの女房が職場のラッフルで当てたという劇場チェーンのタダ券を利用して、二人で見に行った。


「ジョン・ウィック」である。アクションを楽しむ作品だからして、これまでの2作品を見ている必要はない、あんたもキアヌのアクションに興味なくもないでしょ、と、私としては彼女もエンジョイするに違いないと読んでいた。そしたら、彼女、途中で寝てしまったらしい。


つまり、なんでジョン・ウィックことリーヴスが追われているのかわからず、追っ手が誰かもわからず、味方も力関係もわからない中でただアクションがあっても、話に入り込めない。その上、わけのわからんジャパニーズ・カンフー折衷アクションだ。考えると、これは確かに初心者にはハードルが高かったかもしれない。


アクションはアクションとしては楽しめる。一瞬なら。しかし一つの作品の中で連続して発生するアクションは、それがストーリーとして有機的に繋がっていないと、興味を持続させるのは難しい。それがたとえ「ジョン・ウィック」だとしても。











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ハイ・テーブルから懸賞金をかけられたお尋ね者となったジョン・ウィック (キアヌ・リーブス) は、追手の追撃をかわしながらパブリック・ライブラリで本の中に隠されていたマーカーを手に入れ、それを手にディレクター (アンジェリカ・ヒューストン) に会う。ディレクターによってカサブランカまでの道程を保証されたジョンは、カサブランカ・コンティネンタルのマネージャーをしているソフィア (ハリー・ベリー) に会い、ハイ・テーブルの上位者の一人であるエルダーに会う方法を求める。ソフィアは暗殺者のバラダを紹介し、砂漠で行き倒れになるほど歩き続ければ会えるかもしれないと謎めいたアドヴァイスを残し、結局ジョンとソフィアと撃ち合いになって死ぬ。砂漠で半死半生でやっとエルダーに会ったジョンは許しを請うが、エルダーは代償としてウィンストン (イアン・マクシェイン) を殺し、指を詰めることを迫る‥‥


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