放送局: ニコロデオン

プレミア放送日: 9/12/2004 (Sun) 20:00-20:30

製作: ニコロデオン・プロダクション

クリエイター/製作総指揮: スー・ローズ

監督: リンダ・メンドーサ、ジョー・メネンデス、他

脚本: イーディ・ガジリアン、ローラ・マクリーリー

出演: エマ・ロバーツ (アディ・シンガー)、メリース・ジョウ (ジーナ・ファビアーノ)、ジョーダン・キャラウェイ (ザック・カーター-シュワーツ)、モリー・ヘイゲン (スー・シンガー)、マーカス・フラナガン (ジェフ・シンガー)、タディーグ・ケリー (ベン・シンガー)


物語: アディは13歳の女の子。親友はザックとジーナ。趣味はなんでもかんでも歌にしてしまうこと。新学期も始まり、今年は変身したアディを皆に強調したいと考えている。そのチャンスであった新学期パーティのホスト役の子が怪我をしたために、アディは親の都合も聞かずに新しくパーティ・ホストに立候補するが‥‥


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ハリウッドやTV業界で活躍する若手の俳優やシンガーは多い。最近はその中でも、既に知られた歌手や俳優、その他セレブリティの血縁がデビューしたり注目されたりするという例がことの他増えている。最近、そういうトレンドにうまく乗っかって最も成功したのが、ジェシカの妹であるアシュリー・シンプソンと、彼女の番組「アシュリー・シンプソン・ショウ」だろう。


元々そういう血筋を持っているわけだから、ただ単によくできた父や母、兄や姉の尻馬に乗っただけではないのはもちろんで、実力もあるからこそ、歌もヒットすれば人気も上がる。もちろん多少はブームにうまく乗っかったという傾向は、このような2世/血縁デビューを果たした者なら多かれ少なかれ誰でも持っているが、それでも本人のポテンシャルを過小評価するわけにはいくまい。


ただし、こういう風潮に乗っかりすぎると、「シンプル・ライフ」みたいな、番組の質としては屑同然の番組も生まれてくる。実は、私はニコール・リッチーはともかく、意図せずとも時代の半歩先を行くパフォーマー、あるいは時代のシンボルとしてのパリス・ヒルトンという存在は侮れないと思っているのだが、番組としての「シンプル・ライフ」は金輪際認めるわけにはいかない。


「アンファビュラス」は、こういった血縁コネクション番組に連なる最新のコメディ/ドラマ番組である。番組の主人公、13歳のアディに扮するのはエマ・ロバーツ、彼女の芸能界における血縁と言えば、もちろんかのジュリア・ロバーツだ。コネとはいえ、その後光は強烈である。要するにエマは、ジュリアの兄のエリックの娘なのであり、つまり、ジュリアから見て姪っ子の間柄になる。


実際よく見ると、エマもジュリアやエリック同様の大きなよく動く目と口を持っている。目はともかく、口というものはあまり大きすぎるとマイナスにしかならないと思うが、ロバーツ家を見る限り微妙にバランスがとれており、ジュリアの場合、それが積極的にチャーム・ポイントになっている。そのことはエマにもちゃんと受け継がれており、くりくりとよく動く目と表情豊かな口は、かなりポイント高い。


しかし、こういうコメディ・ドラマ・シリーズではありがちなことだが、たぶん誰が見ても思わず可愛いと口から洩らしてしまいそうなエマが、あまり人気のない、あるいは男の子からもてないキャラクターとして設定されてたりする。番組のプレミア・エピソードがまんまそうで、いよいよジュニア・ハイに進むアディ (エマ) が、これまでの格好悪くて人気のない自分にさよならして劇的な中学デビューを果たすために、自宅でパーティを開いて皆に自分のことを印象づけようとするというのが大まかなストーリーだ。しかし私の目から見ると、あの顔で人気ないって言うんだったら、本当に可愛くないその他大勢の子たちに未来はないなと思ってしまう。


ティーンエイジャーの日常の悩みやら成長やらを描く番組だと、どうしても普通のティーンと等身大のキャラクターを主人公として造型せざるを得ないが、もちろん本当にどこから見ても普通の子だと、ありきたりすぎて誰も番組を見てくれなくなるので、やはり主人公に抜擢される子は、それなりに可愛かったり魅力的だったりハンサムだったりする。そのため、こういった矛盾が起きる。可愛くないのは論外だが、あまり可愛すぎるのもダメなのだ。そういうアンビヴァレントな設定をうまく処理しないと、この手の番組は成功しない。


あの、人形のように可愛いオルセン姉妹が、同様にもてないというほとんど理不尽なまでに言語道断な設定にしてしまったために、視聴者から反感を買ったとしか思えないくらい人気のなかった「ふたりはお年ごろ (So Little Time)」を思い出してみてもそのことがわかる (もちろんこの番組はそれ以前に、単純に番組としても面白くなかったが。) その点、特に主人公が可愛いかったというわけではないが、その年頃の女の子が抱える心情をうまく切りとって提出して見せてくれた「アンジェラ 15歳の日々 (My So-Called Life)」や、今のようにけばくなる前のメリッサ・ジョーン・ハートが主演していた「クラリッサ・エクスプレインス・イット・オール (Clarissa Explains It All)」、さらに最近の例ではヒラリー・ダフ主演の「リジー・マグワイア (Lizzie McGuire)」が、いかにうまく番組を製作していたかがわかる。


また、こちらはドラマではなくリアリティ・ショウであり、歳も既にハイ・ティーンに達してしまっていたアシュリー・シンプソンをとらえた「アシュリー・シンプソン・ショウ」では、アシュリーはかなり可愛いが、この場合、ドラマではなくて本人の生の姿をとらえるリアリティ・ショウということで、その開けっ広げさが視聴者の好感を呼ぶことに成功した。一方、今人気のFOXの「O.C.」のように、いわゆるソープ的設定のドラマになると、今度は逆に、視聴者は格好いい登場人物に理想の自己を投影して感情移入して見るようになるために、今度は出演俳優は見映えがよくないと始まらない。つまり、番組としての力点をどこに置くかによって当然キャスティングも変わってくる。


いずれにしても「アンファビュラス」は、アディを演じるエマが、人気ないというわりにはちょっと可愛過ぎるという問題点があることはあるが、その他の点ではああいうもんじゃなかろうか。自分の身の回りで起こったことをなんでもかんでも歌にしないと気が済まないというキャラクターのため、番組の中でもばんばんギターをかき鳴らして声を張り上げるのだが、これまたジュリア同様、歌はそれほどうまくはない。もちろん、それでかまわない。ここで「アメリカン・アイドル」に出てくる参加者並みのレヴェルで歌われたら、逆に興醒めになってしまう。因みに番組中でエマが歌う歌はすべて、ジル・ソビュールが書いている。「クルーレス」の主題歌の「スーパーモデル」を歌ってた人だが、私は「アイ・キスト・ア・ガール (I Kissed a Girl)」の方がなぜだか耳に残っている。一時期それなりに人気があったが、ブレイクするというまでにはいかなかったという記憶がある。この名前を聞いた時はちょっと懐かしかった。


アメリカの血縁コネクション番組で、現在発表されている番組でまだ放送が始まってないのは、これでブリトニー・スピアーズの妹、ジェイミー・リンが主演するコメディ・ドラマ「ゾーイ101 (Zoey 101)」を大トリに残すのみとなった。本当なら今秋ニコロデオンで放送開始予定だったんだが、どうも来春まで放送は延びたようである。その番組をもって一応、今年なにかと話題になったコネクション・デビューの小ブームは一区切りつくようだが、もし「アンファビュラス」や「ゾーイ101」が予想外のヒットになったりすると、業界はさらに同様の血縁コネクション探しに血眼になるだろう。


実際、デビュー済みの父母兄姉おじさんおばさんだかと同じ血がその子にも入っているわけだから、才能や見場という点では最初からかなり信頼がおけるし、既に先発の知名度があるため、宣伝も楽に違いない。一方、最初から注目度だけはやたらと高かったりして、そのことが本人にとって必ずしもプラスになるとも限らない。デビューまでのお膳立ては人より恵まれているかもしれないが、いったんデビューしてしまったら、やはり頼れるのは本人の実力のみなのだ。というわけで、私は別にコネクション・デビューに反対はしない。要は本人の歌やドラマが面白ければいいのだ。これで完全に終わりじゃないだろう今後のコネ新人の登場が楽しみである。





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アンファビュラス   ★★1/2

 
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