The Exterminators  ジ・エクスターミネイターズ

放送局: A&E

プレミア放送日: 2/4/2009 (Wed) 22:30-23:00

製作: セプテンバー・フィルムスUSA

製作総指揮: ジェフ・コリンズ、シェルドン・ラザルス、エレイン・ブライアント

出演: ビリー・ブレサートン、リッキー・ブレサートン、メアリ・ブレサートン、ドニー・ブレサートン、ビリー・ブレサートンSr.


内容: ルイジアナ州の親族経営の害虫駆除会社ヴェクスコン (Vexcon) の活動に密着する。


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Arts & Entertainmentがチャンネル名の由来のA&Eは、近年はアーツというよりもエンタテインメント、それもドラマやコメディではなく、専らリアリティ・ショウが編成の中心だ。ベンジャミン・ブラット主演の「ザ・クリーナー (The Cleaner)」やパトリック・スウェイジ主演の「ザ・ビースト (The Beast)」なんていうアクション・ドラマや、「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」の再放送といったものもないことはないが、やはり人が覚えているのは、各種中毒患者に密着する「インターヴェンション (Intervention)」、賞金つき犯罪者捕獲を生業とする男をとらえる「ドッグ・ザ・バウンティ・ハンター (Dog the Bounty Hunter)」、マジック・ショウ「クリス・エンジェル・マインドフリーク (Criss Angel Mindfreak)」あたりのドキュメンタリー/リアリティだろう。


そのリアリティ・ショウも、上記番組を別として、犯罪実録ものが編成の中心だ。「アメリカン・ジャスティス (American Justice)」、「コールド・ケース・ファイルズ (Cold Case Files)」、「クライム360 (Crime 360)」、「ザ・ファースト48 (The First 48)」、「マンハンターズ: フュージティヴ・タスク (Manhunters: Fugitive Task)」、「ジャックト: オート・セフト・タスク・フォース (Jacked: Auto Theft Task Force)」、「ルーキーズ (Rookies)」と、本当に数が多い。現在はそれに超常現象系の「パラノーマル・ステイト (Paranormal State)」、「サイキック・キッズ (Psychic Kids)」なんて番組が登場してきたが、それでも犯罪実録リアリティの優位は動かない。


「ジ・エクスターミネイターズ」は、系統としてはそのどれでもない、かなり脱力が入ったリアリティ・ショウだ。感触としては元KISSのジーン・シモンズの活動をとらえる「ジーン・シモンズ・ファミリー・ジュエル (Gene Simmons Family Jewel)」に近いが、本当に「エクスターミネイターズ」が近似しているのは、既に放送はされてないが、やはり同様に同族経営事業に密着した「ファミリー・プロッツ (Family Plots)」だろう。


「ファミリー・プロッツ」は、同族経営の葬儀社に密着したリアリティ・ショウだった。毎日死と隣り合わせでありながら、なおかつそこはかとないユーモアが漂っていたことが特色で、むろん遺族と相対する時にギャグを飛ばすわけではないが、こういう仕事であるからこそ時に仕事の上でユーモアは欠かせないんだろうと思わせられた。葬儀社がドラマになるのは既にHBOの「シックス・フィート・アンダー (Six Feet Under)」が証明済みだが、「ファミリー・プロッツ」にも捨て難い味があった。


「エクスターミネイターズ」の場合は葬儀社ではなく、番組タイトルが示す通り、その舞台は害虫駆除を業務としている同族経営会社ヴェクスコンだ。ヴェクスコンのある南部ルイジアナは沼沢地が多く、自然と多くの生物が棲息している。そのうちのいくつかは、人間にとっては害虫、もしくは共存が不可能な中大型の動物だ。つまり、白アリやゴキブリ、ネズミ等の比較的小型の害虫だけでなく、時にヴェクスコンには、その辺を歩き回っているワニをどうにかしてくれという依頼が寄せられることもある。


番組はヴェクスコン代表のビリーに密着して、彼がどうやって害虫駆除業務を遂行するかをつぶさに見せる。しかしそのビリー、一見しての印象はどこからどう見てもパンク、へヴィメタ系のロッカーなのだ。既にどう見ても中年だが、たぶんわりと年中暖かめのルイジアナで、常に革ジャンっぽい黒ずくめの服に身を包んでマツダのトラックを運転して仕事の場に赴く。服と車にはどくろのマーク入りだ。声も歌いすぎと飲みすぎで一度のどを潰したんじゃないかと思えるかすれた声で、一時その辺りにどっぷり漬かっていたことは間違いあるまい。


このポリシーは仕事上にも遺憾なく発揮されており、例えばプレミア・エピソードでは、ビリーは乞われてだいぶ辺鄙なところに建つ一軒家の壁の中に巣食ったハチの除去を求められる。通常、この種の仕事ではなにやら宇宙服みたいな防護服に身を包んで仕事するものと相場が決まっているのだが、あれは動きにくいからとビリーが取り出したのは、ほとんど「スクリーム」の敵役が被っていたあのマスクのような被りものだ。それを被って黒ずくめの服に鎖等の光り物じゃらじゃらで、手には特製の防虫スモーク・マシーンを持って壁穴からスモーク入れてハチを除去する。遠目では害虫駆除というよりも、放火しようとしている危ない輩にしか見えない。


またある時は、これまた田舎の一軒家のネズミをなんとかしてくれという依頼を受ける。早速出かけてみると、ちょっと目の届かないところは家の中じゅうネズミのフンだらけで、これでは病気にならないのが不思議なくらいだ。そこでクローゼットの中を見ようと懐中電灯で中を照らしたビリーが、わっと叫んで灯かりを落として後ろに飛びずさる。なんと中にいたのは鎌首もたげていたヘビだった。これはびっくりするわ。


またある時は動物園の屋根裏で子供を育て、夜な夜な降りてきてはニワトリを襲って餌にしてしまうアライグマの撤去を求められる。さらにある時は野球場の軒下に大挙して巣食うコウモリをなんとかしてくれという依頼が来る。ビリーは仕事だからそういう依頼にいちいち応えるのは当然だが、どうしてもなんか、どこかピントのずれたのほほんとした雰囲気になってしまうのは、本人のキャラクターのせいか、それともそこが南部という土地柄のせいか。依頼してくる方も仕事する方も、結構大変なのだがあまり切迫感がないのだ。


害虫がいるから駆除しないとこちらも生活に支障が出るのだが、でも、あんたらも生きて生活してるんだからね、とでもいうようなのんびりムードがそこかしこに漂っている。実際ビリーは、確保したアライグマやヘビは殺さずに、奥地に連れて行ってそこで逃がしてやるのだ。アライグマの子供たちなんて可愛いもので、おかげで害虫駆除というよりも、癒し系の動物番組を見ているみたいな気持ちにすらなる。


もちろん実際にはビリーたちはそうのほほんとしてばかりもいられない。実は害虫駆除よりも大変なのは、社に戻っての人間関係だったりする。ビリーの弟リッキーには別れた妻のパムがいるが、彼女がことある毎にヴェクスコンに顔を出し、経営に口出しするのだ。経済的には良好 (かなり上等の一軒家の社屋がある) のヴェクスコンの分け前にありつこうとしているのがありありで、別れたくせにまだ左手には結婚指輪をはめている。ビリーは結構それが気に入らないが、最もいらついているのは母のドニーだったりする。口数少ないが父のビリーSr.もあまりそのことを快く思っていないのは明らかだ。


ところが当のリッキーの態度が煮え切らないのだ。どうもまだパムに未練たらたららしい。要するにこの男は振られたのだな。いずれにしてもリッキーががんとした態度に出ないから回りの者もあまり口出しできず見守っているしかないが、それでもなんか意見しようものならリッキーが切れそうになるのが見てとれる。当人も状況をなんとかしようとは思っているが、かといって身動きとれないところに口出されるとむっとするんだろう。ビリーにしてもこれならよほど害虫を相手にしている方が楽に違いない。


実は私は最初「エクスターミネイターズ」を、昨年ディスカバリー・チャンネルが放送した「ヴァーミネイターズ (Verminators)」と混同していた。これまた害虫駆除会社の活動に密着するリアリティ・ショウで、タイトルも語感がほとんど同じとくれば、混同しない方が無理というものだ。最初、「エクスターミネイターズ」をこの「ヴァーミネイターズ」の第2シーズンだとばかり思っていたのだ。しかし、内容もほとんど同じだとはいえ、「ヴァーミネイターズ」はもっとシリアスなドキュメンタリー・タッチで、「エクスターミネイターズ」が持っているキッチュなテイストは皆無だ。「ヴァーミネイターズ」の場合、駆除、駆除、駆除といった感じで、ネズミやなんやらの死骸ばかり見せられて、なんとなく憂鬱な気分になった。私にとっては「エクスターミネイターズ」の方がかなりポイント高いのだった。








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ジ・エクスターミネイターズ   ★★1/2

 
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