タムロン・ホール (Tamron Hall) 

放送局: シンジケイション (ABC系列) 

プレミア放送日: 9/9/2019 (Mon) 10:00-11:00 

製作: サマーデイル・プロダクションズ 

製作総指揮: ビル・ゲディ 

ホスト: タムロン・ホール 

 

ザ・ケリー・クラークソン・ショウ (The Kelly Clarkson Show) 

放送局: シンジケイション (NBC系列) 

プレミア放送日: 9/9/2019 (Mon) 14:00-15:00 

製作: NBCユニヴァーサルTV 

製作総指揮: ブランドン・ブラックストック 

ホスト: ケリー・クラークソン 

 

内容: シンジケイションの日中トーク・ショウ2本。 


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9月のレイバー・デイの休日も終わり、学校の新学期が始まると、アメリカTV界ではまず新シーズンの先頭を切ってシンジケイションの新番組が投入される。今年投入されたシンジケイションの注目番組が、日中トーク・ショウの「タムロン・ホール」と「ザ・ケリー・クラークソン・ショウ」だ。 

 

「タムロン・ホール」は、元NBCパーソナリティのタムロン・ホールがホストのトーク・ショウだ。ホールは元々NBCの「トゥデイ (Today)」で共同ホストを務めていた。メイン・ホストではなかったが、アメリカの朝の最も人気のあるトーク/ヴァラエティ番組の主要パーソナリティの一人であり、知名度は全国区だった。 

 

しかし2017年秋、彼女がメインだった「トゥデイ」の9時からの時間帯が、NBCがメギン・ケリーを起用して編成した「メギン・ケリー・トゥデイ (Megyn Kelly Today)」によって消滅してしまう。閑職に追いやられることを嫌ったホールはNBCを辞め、次の職を探した。 

 

運がいいのか悪いのか、ホールは単独ホストのトーク・ショウを企画し、そのプロデューサーになったのが、ハーヴィ・ウェインステインだ。あの、元ハリウッド・モーグルの一人であり、ミラマックスの重鎮だったウェインステインだ。強力なサポートと言っていいだろう。その時は。 

 

しかし間もなくしてウェインステインのセクハラ・スキャンダルが勃発する。しかもこの上ない規模で。何十人もの女性から一斉に告発されたウェインステインは玉座から滑り落ち、今でも時折り新しい告発者が現れては弾劾するため、今でもいつ裁判が始まるのか、もう始まっているのかわからない泥沼状態がずっと続いている。もちろん、ホールのトーク・ショウのプロデュースなんかやっている暇はなくなった。 

 

新しいプロデューサーを見つけて始まった「タムロン・ホール」は、ABC系列で毎朝10時枠に編成された。この枠は、これまで長らく「レイチェル・レイ (Rachael Ray)」の指定席だった。とはいえ「レイチェル・レイ」がキャンセルされたわけではなく、午後2時枠に移動になった。ホールは以前「トゥデイ」で朝9時からの枠を担当していたため、朝のパーソナリティという印象が強い。そのためどうしても番組を午前中に編成したく、結果として「レイチェル・レイ」は午後に移動になったんじゃないかと思う。 

 

私個人の印象を言うと、「タムロン・ホール」は視覚的印象、端的にオレンジのカラーで強く色付けされた番組という、その印象がまず内容よりも先に来る。なんでこんなに全部がオレンジオレンジしてないといけないんだと思うくらい、画面がオレンジ、もしくは明るい茶系色で覆われている。 

 

これはホールが黒人パーソナリティであることと関係あるだろう。黒人の肌の色は、オレンジ、茶系の色を当てると肌目細かく見える。それを意識してのライティングだと思う。とはいえ私個人の意見では、あまりにもすべてが人工的にオレンジオレンジしているので、ショウの内容よりもそのことの方が印象に残る。番組を見た後で、何を話したかではなくてオレンジに彩られた画像の方が印象に残っている。つまり、要するに内容はその他のトーク・ショウと特に違いは見られず、ゲストも観客も黒人主体で黒人女性視聴者を念頭に置いた構成になっているので、アジア系中年男性の私には、特にアピールするものはほとんどない。 

 

また、オレンジオレンジした画面は、その直後に編成されている女性トークの「ヴュウ (View)」も連想させる。「ヴュウ」の場合は、こちらはウーピ・ゴールドバーグのような黒人もいるが、オレンジ主体のカラー・バランスではなく、こちらすべてがブルーがかっている。いずれにしても、こちらもかなり人工的という点は一緒で、無理なカラー・バランスという印象が強く、さらに「ヴュウ」は「タムロン・ホール」にも増して男性の視点から見るとどうでもいい話が多いため、個人的には積極的に避けたい番組の一つだ。「タムロン・ホール」といい「ヴュウ」といい、なんでこんなどぎつい画面構成にするのか、頭を捻らざるを得ない。それとも女性は原色、単色の強い色が好きという統計でもあるのか。 

 

ところで、ホールがNBCを辞めるきっかけとなった「メギン・ケリー・トゥデイ」は視聴率不振によって既に番組はキャンセルされ、ホールの元の定位置だった「トゥデイ」の9時枠が、「サード・アワー・トゥデイ (3rd Hour Today)」として復活している。ホールはNBCを辞めなければまた元の鞘に収まってホストを続けられたと思うが、それでもよかったかそれとも単独ホストの自分の番組を持つ現在の方がいいか、外野の意見はともかく、本人がどう思っているのか知りたいところだ。 

 

一方「ケリー・クラークソン・ショウ」ホストのケリー・クラークソンは、もちろんFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」初代ウィナーのケリー・クラークソンだ。既にヴェテラン・シンガーであり、ヒット・ソングを連発している、あのクラークソンだ。 

 

別にクラークソンはシンガーとして今後も食っていけただろう、というか、既に普通の人の一生分の金は稼いだろう。そのクラークソンの転機は、2018年のNBCの勝ち抜きシンギング・リアリティの「ザ・ヴォイス (The Voice)」の第14シーズンのコーチとして抜擢されたことにある。 

 

クラークソンが飾らない人柄だというのは、既に「アイドル」時代から知っていたが、「ヴォイス」では、さらに、喋りだしたら止まらない超お喋りということも知った。とにかく、いったん喋りだすと相手に口を挟む隙を与えない。弾丸のように喋りまくる、こんなにお喋り、口が立つとはさすがに知らなかった。その時の同性コーチのアリシア・キーズの10倍は楽に喋っていた。プロデューサーの立場から見ればコスト・パフォーマンスが高いと言えるか。これだけ喋れるなら、確かにトーク・ショウのホストにも起用できるだろうと考えるプロデューサーがいてもおかしくなく、そして製作されたのが「ケリー・クラークソン・ショウ」だ。 

 

番組第1回のオープニングは、様々な職業のユニフォームに身を包んだクラークソンが、ドリー・パートンの「ナイン・トゥ・ファイヴ (9 to 5)」を歌って幕を開ける。なんでいくつもヒット曲を持っている自分の歌じゃないんだと思ったが、「ナイン・トゥ・ファイヴ」はクラークソンの最も好きな歌の一つであり、パートンは最も尊敬する人物の一人であるそうだ。 

 

そしてカメラはステュディオに切り替わり、ドアが開いて入ってきたのはクラークソンではなくスティーヴ・キャレルで、彼がマイクを掴んでクラークソン登場をアナウンスする。番組の最初のゲストはプロレスター/アクターのロックことドウェイン・ジョンソン。後半は40年もの間地域のホームレスに食を提供してきた女性をステュディオに呼んで話を訊くと共に顕彰する。 

 

因みに毎回オープニングではクラークソンが自分な好きな曲を歌う事になっており、第2回冒頭で歌う歌はジョナス・ブラザーズの「サッカー (Sucker)」、第3回はレディ・ガガの「バッド・ロマンス (Bad Romance)」、第4回はアレサ・フランクリンの「シンク (Think)」、第5回はシアの「シャンデリア (Chandelier)」。  

 

番組第2回のゲストはエレン・デジェネレスとジョン・レジェンド、第3回はジェニファー・ガーナーと「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー (American Ninja Warrior)」ホストのマット・アイスマン、第4回はジェイ・レノとラッパーのブライス・ヴァイン、第5回はチャンス・ザ・ラッパーとコメディアンのジリアン・ベルというのが、番組プレミア第1週の布陣だ。 

 

総じて「タムロン・ホール」より「ケリー・クラークソン」の方がゲストは見栄えがするが、それはそういうもんだろう。元より一般視聴者向けのセルフ・ヘルプを基調とした情報・ヴァラエティと、セレブリティ・ゲストを毎回呼ぶヴァラエティ・トークという位置づけの違いだ。それでも、黒人視聴者が主要視聴者の「タムロン・ホール」より、より一般的な「ケリー・クラークソン」の方が、個人的には親近感を持って見やすいとは言える。 

 


 








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