ポートランディア   Portlandia

放送局: IFC (Independent Film Channel)

プレミア放送日: 1/21/2011 (Fri) 22:30-23:00

第6シーズン「ヌードル・モンスター」放送日: 3/24/2016 (Thu) 22:00-22:30

製作: ブロードウェイ・ヴィデオ、IFC

製作総指揮: ローン・マイケルズ、ジョナサン・クリセル

出演: フレッド・アーミセン、キャリー・ブラウンスタイン、カイル・マクラクラン (市長)


物語: 「ヌードル・モンスター (Noodle Monster)」第6シーズン第10話

ピーター (アーミセン) とナンス (ブラウンスタイン) はジャパニーズ・レストランでつけ麺をオーダーするが、食べ方を知らない二人は、つけ麺だというのに麺をスープに浸して普通のラーメンのように食べてしまう。しかも食べ残しを持ち帰ったナンスは、容器に麺とスープを一緒にして冷蔵庫に仕舞う。その夜、正しく食べられることのなかったつけ麺はヌードル・モンスターとして顕現し、街行く人々の服にスープを撥ね飛ばして染みを作って歩く。非常事態に市長は軍の出動を要請するが‥‥    


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Portlandia


ポートランディア  ★★1/2

最近、やたらと日本をTVで目にする機会が多い。別に伊勢志摩サミットが開催されるからとか、オバマ大統領が広島訪問するからとかではない。それ以前の、今年の年明け以降からの話だ。


ことの発端は春先のトラヴェル・チャンネルの「プラネット・プライムタイム (Planet Primetime)」だったと思う。世界各地のTV事情を紹介するこの番組の第1回に登場したのが何あろう日本で、ホストが日本のリアリティ・ショウ、つまりはゲーム・ショウに参加して色々と紹介していた。


とはいえ日本のゲーム・ショウが面白いというのは、今では和製番組の数々が輸入されてリメイクされているアメリカにおいては既に自明のことであり、「プラネット・プライムタイム」はそのことを再確認させたに過ぎない。しかし「プラネット・プライムタイム」をきっかけに、後から後から日本が関係する番組、日本がストーリーに絡んでくる番組が増えたという事実は残る。


「プラネット・プライムタイム」が放送されてすぐ、ショウタイムのサイバー・ワールドをとらえるドキュメンタリー・シリーズ「ダーク・ネット (Dark Net)」では、仮想空間の女の子に恋してしまった引きこもり気味の東京の若い男性がフィーチャーされ、CBSの「クリミナル・マインズ: ビヨンド・ボーダーズ (Criminal Minds: Beyond Borders)」では、東京で行方不明になったアメリカ人が描かれる。それにしてもこないだ「ザ・フォレスト (The Forest)」で青木ヶ原が舞台になったと思ったら、また青木ヶ原だ。日本の三大ツーリスト・スポットは、渋谷新宿青木ヶ原になりつつある。    


HBOの「ガールズ (Girls)」では、主人公の一人ショシャンナが、東京で職を見つけて海を渡るし、実際に日本が出てくるわけではないが、ネットフリックスの「マスター・オブ・ナン (Master of None)」のシーズン・フィナーレでも、主人公のガールフレンドが東京に行って働くと言っていた。「ガールズ」は表現に規制のないペイTVのHBOの番組ということもあり、番組内で結構裸が出る。ショシャンナは同僚の子とどうやらスーパー銭湯に行くのだが、後ろを行き来したり湯につかる者たちは当然裸だ。おっぱいもちゃんと映る。


これは、と私は思った。これは東京放送の「時間ですよ」だ。かつて日本の民放でプライムタイムに堂々と浴場で湯につかる女性の裸を放送していた「時間ですよ」が、HBOの「ガールズ」に形を変えて目の前に現れた。思わず感動する。


さらにその後ショウタイムでタワー・レコードの盛衰を描くドキュメンタリー「オール・シングス・マスト・パス: ザ・ライズ・アンド・フォール・オブ・タワー・レコーズ (All Things Must Pass: The Rise and Fall of Tower Records)」を見ていたら、なんでも倒産してしまったタワー・レコードで店舗がまだ残っているのは現地法人化した日本しかないらしく、やたらと日本のタワー・レコードが出ていた。さらに深夜ニューズのABCの「ナイトライン (Nightline)」を見ていたら、片付けのカリスマことこんまりが出ていて、その数日後には朝のトーク・ショウ「レイチェル・レイ (Rachael Ray)」でまた出てきて片付け勝負をしていた。アメリカでもこんまりを崇める者は多い。ヴァイスランドの「ゲイケイション (Gaycation)」のそもそもの第1回は日本行きだった。


とまあ、短期間にやたらと日本、日本人の話題をアメリカのTVで目にする機会があったのだが、その中でも私的に最も興味深かったのが、「ポートランディア」の一話である「ヌードル・モンスター」だ。「ポートランディア」はIFC (インディペンデント・フィルム・チャンネル) で放送されており、既に第6シーズンを迎える。NBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」出身のフレッド・アーミセンと、ミュージシャン兼俳優のキャリー・ブラウンスタインが、オレゴン州ポートランドというスノッビーな奴ばかりが住む街の住民たちを茶化すコメディだ。


6シーズンも続いているのだから人気がないわけではないが、どちらかというとカルトだ。私も気になってはいたがこれまで見たことはない。それで今回、日本が絡む「ヌードル・モンスター」でもあることだしと思って、DVRに録画しておいて見てみた。


つけ麺を出すジャパレスで、食べ方がわからずにどうでもいいと麺をつけずに浸して食ったところ、巨大なヌードル・モンスターが出現して街に混乱をもたらすという話だ。知らなかったのだが、番組ではアーミセンとブラウンスタインは一人二役どころではなく、一人多役だ。一つのエピソードで何人もの役を演じている。最初意味がわからなくて戸惑った。


ラーメンは今ではアメリカでも普通名詞で、誰でも知っている。こないだニュージャージーの日系スーパーのミツワで買い物していたところ、若い白人アメリカ人の男がインスタント・ラーメンのコーナーで、連れの女性に、これがラーメンだ、オレは学生時代にこれで生き延びることができたんだと力説していた。洋の東西を問わず、金がない一人暮らしの男がラーメンに活路を求めることには変わりない。しかしあんまりそればっかり食ってたら鳥目になるよ、ちゃんと栄養になるものもとらないとね、と思った。


一方、耐窮乏食品のインスタント・ラーメンと、グルメ食品としてのつけ麺とでは、同じラーメンでも立ち位置がまったく違う。いくらラーメンが一般名詞になったといえども、一般的なアメリカ人が、惑わずにつけ麺を食えるかは話が別だ。そのつけ麺をアメリカ人がそれ相応の薀蓄をたれて食うところからして、いかにもスノッビーな奴の多いポートランドだと思わせる。


「ヌードル・モンスター」では、企業誘致に熱心なカイル・マクラクラン扮する市長が、ノキアを日本企業とカン違いして日本式挨拶を勉強してノキア幹部を迎えるというサイド・ストーリーもある。ノキアという単語はちょっとエキゾティックに響くんだろう。


ヌードル・モンスターが巨大化して住民を襲うというシチュエイションは、明らかにゴジラ系怪獣映画からの連想だろう。しかしそのモンスターがやることが、服にラーメンのスープをかけて染みにすること、というのがちまい。通常のラーメンを食する時に最もネックとなるのが、スープが撥ねて染みになることというのもまた、洋の東西を問わないのだった。


というわけで、今日の晩メシは我が家では定番の中華三昧の塩味に、昨秋、アップステイツの知人の家に遊びに行った時にもらってきて冷凍してあった甘ーいコーンをバターで炒め、ゆで卵、湯がいたほうれん草、刻みねぎと海苔と共に載せ、コショウを振ってはふはふと頂く。へっへっ、こいつは美味いぜ。服に撥ねて染みになっても構うか。










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