Paranormal Activity 3


パラノーマル・アクティビティ 3  (2011年11月)

1988年。ウェディング・ヴィデオグラファーのデニス (クリストファー・ニコラス・スミス) はケイティとクリスティ姉妹の母ジュリー (ローレン・ビトナー) と同居しており、ガレージを利用して編集作業を行っていた。ある時デニスはジュリーとのセックス・ヴィデオを撮ろうとして、画面に何か理解不能のものが映っていることに気づく。その後も家の中には説明不能な現象が次々と起こる。デニスは何が起きているのかを記録しようと、家中にヴィデオカメラを設置する‥‥


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何を血迷ったか、私が今週は「パラノーマル・アクティビティ3」を見に行くと言うと、普段ならホラーにはまず食指を動かさない女房が、今回に限って私も見に行くという。どうやらTVで見た予告編で、テーブルに着いた男が頭をがんがんテーブルに打ちつけているシーンを見て、逆受けして笑えそうな話だと思ったらしい。


要するに幽霊とかそういう心霊現象というものは、ストーリーが付随しないとお笑いの対象になってしまう。恐怖という感情が、かなりの部分自分自身の内部で増殖して捏造されているものだという証拠だろう。結局、自分で勝手にああなりそうこうなりそうだと想像して自分で怖がっているだけなのだ。


私も「パラノーマル・アクティビティ」は「1」しか見ていないが、少なくとも金がないのを色々と知恵を絞って怖がらせようとした作品というのは知っているので、もしかしたら「2」では多少進路を変更したか、あるいはこの「3」からギャグ・ホラーを狙っているのかもしれないと思った。


唐突に、どう見ても自分から進んでテーブルに頭がんがん、なんてシーンを見せられたら、普通は笑ってしまう。むろん「1」を見てこの手のチープなホラーはもういいと思った私がまた見てみようかなと思ったのもまさしくその点にあったので、めったにないことだが、女房と一緒にホラーを見に劇場に足を運ぶ。


「3」は話のそもそもの発端を描く、「1」の前日譚とでも言うべき話で、「1」の主人公ケイティの幼い時を描く。時は1988年、ケイティの母ジュリーは、ウェディングのヴィデオグラファーとして小金を稼いでいるボーイフレンドのデニスと同居していた。ある時、ジュリーとのセックス・ヴィデオを撮影しようとしたデニスは、家の中で大きな音がしたために撮影を中止する。後で見てみると、そのヴィデオには得体のしれないものが映っていた。その後もなにやら説明不能の現象が続くため、デニスは家中にヴィデオカメラを設置して、何が起きているかを記録しようとする。


逆受けギャグ・ホラーなんかではまったくなく、堂々ホラー路線を貫いている作品だった。笑えるものと期待した、あのテーブル頭がんがんシーンなんてのは一瞬たりともなく、どうやらあれは「2」でそういうシーンがあったというのを観客に思い出させようとしたというだけのようだ。こちらは「2」を見てないのでまったく気づかなかった。


今回特筆すべきは「1」のロウ・テクさ、インディっぽさを維持していながら、作品の製作レヴェルは上がっていることで、素直に「1」よりこちらの方ができがいいと感じた。ところどころ屋外に出るとはいえ依然舞台は基本的に家の中で、超常現象を小出しにすることで、見る者の興味を持続させる。その辺の技術や巧さは明らかにこちらの方が上だ。特に扇風機を改良して自作した自動首振りカメラのシーンは上出来で、ゆっくりとパンを繰り返すカメラの映像に、次が何が映っているかを見せるシーンはどきどきした。


今年、「パラノーマル・アクティビティ」の設定をいただいて、こちらも多くが一軒家の中で展開する「インシディアス (Insidious)」が話題になったが、さすがに「パラノーマル・アクティビティ」はこちらが本家ということもあって、色々考えている。今回もほとんどCGや特撮は使ってないこともあって、予算的にはたぶん「インシディアス」の3分の1程度くらいで撮れていると思う。やっぱりホラーはアイディアか。


「1」を見た時あまりもの粗さにがっかり来て、もう続編ができてもまず見まいと思った画質も、見れる程度まで向上している。今回も民生ヴィデオカメラで撮影しているという設定なのだが、この3年でHDTVは撮る方にも定着しているし、HDTVでなくともデジタル・ヴィデオの質は向上している。むろん時代設定としては「3」の方が古いので、本来ならこちらの画質の方が粗いはずなのだが、この際こういう矛盾には目をつむる。いずれにしても、素人がヴィデオカメラを使って撮影するというギミックは、もう既に使い古されて機能しなくなりつつあると思っていたが、なかなかどうしてまだまだ使えるんだなと思った。


今回演出を担当しているのはヘンリー・ジューストとアリエル・シュルマンで、どこかで名前を聞いたことがあるが思い出せない、さてどこで、と考えたがまったく記憶が甦ってくる気配がないので諦めてIMDBに当たったら、実はジューストの方は「ニューヨーク・エキスポート: オーパス・ジャズ (NY Export: Opus Jazz)」を演出していた。監督で見たわけではない「オーパス・ジャズ」の演出家の名前をかすかに覚えていたというだけでもよしとするべきか。


あるいは、実は二人の名は、ドキュメンタリーの「キャットフィッシュ (Catfish)」で耳にしたのを覚えていただけかもしれない。「キャットフィッシュ」はインターネット・ロマンスを扱って昨年サンダンス映画祭でなかなか話題になっていた。私は映画自体は見ていないが、その評判を聞きつけたABCのニューズ・マガジン「20/20」が特集を組んで放送したのを見ている。


シュルマンの弟がネット・ロマンスで親交を得た女性に会いに行く行程を綴った「キャットフィッシュ」は、写真では音楽を愛する美人だったその相手が、実は本当は子持ちのデブだったというショックと恐怖をとらえるもので、ある意味「パラノーマル・アクティビティ」に匹敵するというか、それに勝る怖さがある。どうもホラーと親和性の高い人たちのようだ。そうするともしかして「オーパス・ジャズ」もホラーだったのかという疑問が頭をよぎる。


「パラノーマル・アクティビティ」がまだ続いていくのかどうかはわからない。今なら、私なら、出てきたばかりの民生用3D撮影ヴィデオカメラ・テクノロジーを利用しない手はないと思う。堂々と、これは素人が撮っている作品だからという言い訳を利用して、思う存分やりたいことがやれるはずだ。ここまで来て「パラノーマル・アクティビティ3D」を撮らない理由はどこにもないと思う。


なかなかどきどきさせてくれるじゃないかと感心して帰ってきたのだが、うちの女房はほとんどギャグを期待していたものだから、感心どころか心臓ばくばくだったそうだ。しかしホラーは途中まで見て仕舞いまで見ないと、後であれはどうなったんだろうと想像して自分で自分自身をもっと怖がらせることになるので、いったん見始めたら最後まで見ないといけない。それでとにかくこえーっと思いながら最後まで見たそうだ。あー怖かった、やっぱりホラーはもう二度と映画館では見ないと言っていた。









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