ついに、たぶん我々夫婦もコロナウイルスに感染した。たぶん、というのは、こういう経緯による。日曜の夜、女房が調子が悪いというので、かねてから政府から無料支給されていた簡易キットを使って検査したところ、陽性反応が出た。本当か、まずいじゃない、PCR検査受けないと、ということで、本当に女房が陽性だとすると外に出るわけには行かないので、翌日、私が近所の検査所に行ってPCR検査を受けた。
翌々日の水曜に結果が出て、私は陰性だった。一緒のベッドに寝ていて私だけ陰性ということは到底考えられず、ということは、女房も偽陽性だったのではと思ったが、聞くところによると、簡易キットで陽性を陰性と間違って結果が出ることはあっても、陰性を陽性と間違うのはほとんどないという。
では、私が陽性でないのはなぜか。考えられるのは、私が女房より前に感染していて、無症状だったために知らずに女房に伝染し、女房に症状が出た時には私自身は既に治っていたという場合で、これならありうるかもしれない。
いずれにしても、私の陰性結果が出た時点で既に女房も回復し、念のために他人様に迷惑をかけないよう、その週は彼女は家から一歩も出ずに過ごした。これまで2年間鍛えられているので、1週間くらい家から一歩も外に出なくても、普通に滅入ることなく生活できる。パンデミック前に、1週間家から一歩も外に出ずに生活できるかと訊かれたら、そんなことできるわけないと即答したに違いない。
そんなこんなで、医者にかかったわけでもないので、実は本当に女房がコロナに感染したかはうやむやのまま終わってしまった。いずれにしても、二人共ブースターまで接種済みなので、たとえ本当に感染してたとしても、重症化することはないだろうと結構余裕だった。私たち夫婦のような家庭がどのくらいいるかは知らないが、こうやって人々はコロナと共存して行くのだろうと思った。
さて、本題であるが、「ロウ&オーダー」の帰還を、果たして喜んでいいのか悪いのか、よくわからない。現在、スピンオフ番組の「性犯罪特捜班 (Law & Order: Special Victims Unit)」が史上最長の第23シーズンを放送中だが、その基幹番組である「ロウ&オーダー」自体は、2010年に最終回を迎えている。
そもそものオリジナルは最終回を迎えたわけだが、その後も新しいスピンオフ番組が製作され続けた。昨年も最新スピンオフの「オーガナイズド・クライム (Law & Order: Organized Crime)」の放送が始まっている。そのため、現在の木曜夜のNBCの編成は、8時「ロウ&オーダー」、9時「性犯罪特捜班」、10時「オーガナイズド・クライム」と、ニューヨークを舞台にした「ロウ&オーダー」尽くしだ。
実はそれだけではなく、水曜夜は、プロデューサーのディック・ウルフがこちらはシカゴで製作している「シカゴ・メッド (Chicago Med)」、「シカゴ・ファイア (Chicago Fire)」、「シカゴ・P.D. (Chicago P.D.)」の「シカゴ」フランチャイズが編成されている。NBCはウルフの番組発表の場となりつつある。
「ロウ&オーダー」の場合、10年前に番組が最終回を迎えた時に、既に番組はこれで終わりではないかもと囁かれていた。ウルフも、ネットワークも、誰も復活の可能性を否定していなかった。とはいえ、さすがにこれだけスピンオフが増え、10年以上も間が開いてから復活してこようとは、私は考えていなかった。
しかもそのキャラクターのメンツを見ると、「ロウ&オーダー」の顔と言える、サム・ウォーターストン演じるジャック・マッコイ検事がちゃんといる。ケヴィン・バーナード刑事役のアンソニー・アンダーソンもいる。思わず、もしかして番組の生き字引きと言えるS・エパサ・マーカーソンまでいたりしないかと探してみたりしたが、さすがにそれはないようだ。
というか、アンダーソンはABCで主演のコメディ「ブラッキッシュ (Black-ish)」がまだ放送中だろう、ネットワークのシリーズ番組レギュラーを掛け持ちなんてできるのかと思っていたら、「ブラッキッシュ」は今放送しているのが最終シーズンで、アンダーソンはこれが終わったら「ロウ&オーダー」に専念するものと思われる。
新たに登場するメンツで気になるのが、ヒュー・ダンシー扮するノラン・プライス検事補と、ジェフリー・ドノヴァン扮するフランク・コスグローヴ刑事だ。ダンシーはNBCの「ハンニバル (Hannibal)」のFBIのプロファイラー、ウィル・グレアム、ドノヴァンはUSAの犯罪ケイパー・ドラマ「バーン・ノーティス (Burn Notice)」の主人公マイケル・ウェスティンとして、共にかつてTVで、記憶に残る印象的な役を演じている。彼らが「ロウ&オーダー」にすんなり収まるだろうか。
という期待というか不安を持って見始めたのだが、これが結構行ける。ダンシーは立派に検事に見えるし、いささかやさぐれたドノヴァンも、こういう刑事、いかにもいそうだという気にさせる。本人たちの力量もあるだろうが、それよりもどんな俳優でも取り入れてしまう歴史のある番組の底力という気がする。彼らとは逆に、サマンサ・マルーン検事補に扮するオデリヤ・ハルヴィは、こちらは新人なのにすんなりと役に溶け込んでいる。要するに、どんな俳優でも飲み込んで番組の一部としてしまう。
一方で、意外にこんなもんかと思わせたのが番組内容で、いいのか悪いのか、10年前の「ロウ&オーダー」とほとんど変わらない。特に番組の構成や体裁、テーマ音楽やダン・ダンという効果音は、視聴者が期待している部分もあるので変えてしまっては元も子もないのかもしれないが、単純に番組のできとして、このくらいのストーリーの捻りや問題提起の仕方は、せいぜいかつての番組の水準かそれ以下という感じで、特に感心はしなかった。要するに、なぜわざわざ今番組をリブートするのかという意義を見出せない。
とはいえ人種問題はやはり旬だし、差別や虐待、レイプ等、このテーマを復帰第1話に持ってきたのはわからないではない。私がこれは第2シーズンはなさそうだなと思っていた「オーガナイズド・クライム」が現在でも続いているところから見ても、むしろ復活した「ロウ&オーダー」こそ、今後に期待が持てる。
一番の気がかりは、放送時間帯がこれまでの午後10時から8時に繰り上げになったことだ。9時台の「性犯罪特捜班」および大人の視聴者向けの「オーガナイズド・クライム」のどちらかを8時台に編成するよりは、題材が広範に及ぶ「ロウ&オーダー」の方がまだ8時に適しているという判断だと思うが、しかし、やはり「ロウ&オーダー」は子供向け題材とは到底言い難い。8時台で子供も見るからということで甘い番組作りにならなければいいが。