ハール!

放送局: G4

プレミア放送日: 7/15/2008 (Tue) 21:00-21:30

製作: トゥ・メニー・ティース

製作総指揮: トム・クレハン、デイル・ロイ・ロビンソン


内容: 食ったものを吐き戻さずにどこまで我慢できるかを競う勝ち抜きリアリティ。


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「ハール」を放送しているG4といえば、今では広く「SASUKE」こと「ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior)」の放送で知られている。さらに「ニンジャ・ウォリアー」人気にあやかって今では「筋肉番付」こと「アンビータブル・バンヅケ (Unbeatable Banzuke)」の放送まで始めており、元々PCゲーム等のオタク専門チャンネルだったこともあり、親日性は非常に高い。


そのG4が放送を始めた新番組がこの「ハール」だ。この番組、基本は大食い競争である。大食いというと、これまた日本の生んだ大食いスタータケル・コバヤシがいる。因みにコバヤシは昨年、7連覇をかけて挑んだアメリカ最大の大食い競争である独立記念日のホット・ドッグ大食い競争でジョーイ・チェストナットに敗れた後、確か引退を表明したはずだが、今年の大会にも登場し、チェストナットと再度対戦、同数となってプレイオフの後、雪辱を果たせずに再度涙を呑んだ。


話が逸れたが、G4はなんだかこのように日本と親和性が高いということを言いたかったのであった。しかし、そこはさすがアメリカというか、「ハール」の場合、大食い競争でもただ大食いには留まらない。まず参加者を大食いで競争させて足切りをした挙げ句、その後彼らを回転する乗り物に乗せ、気持ち悪くなって吐こうとするのを最後まで我慢した者が勝ちという言語道断の番組が、「ハール!」なのだ。


番組は毎回最初に5人の参加者を集め、まず大食いで競争させる。因みに番組第1回の最初の大食いの食材はマカロニ・チーズで、それが大量にボウルに盛られているのを見ただけで私なら既に食欲が減退する。なんでまた、わざわざこんな胸がつかえそうなものをと思うが、それこそが狙いであるわけだろう。この5分間のマカロニ・チーズ競争の後、食った量が少なかった下の二人がまず足切りで落ちる。


残った3人がどうなるかというと、3人とも人間ボウリングと題した人身大程度の大きさの球状の容器の中に入れられ、5分間転がされ続ける。あー、もう既に書いているだけで気持ち悪い。むろんそこで吐いたら失格だ。彼らを転がし続ける番組スタッフはというと、いつ吐かれても大丈夫なように、軍事施設か細菌施設で働く者のように全身をすっぽりと防護スーツで覆っており、毒ガス用と思えるマスクまでしている。これならどんな病気にかかっているかわからない者のゲロが飛んできても大丈夫だろう。しかし意外にも残った3人は3人とも5分間我慢し続け、よろよろになりながらも無事次のラウンドに進む。


次の勝負はパイ勝負で、何のパイかという説明はなかったが、色から見てあれはパンプキン・パイだろう。これまた胸につかえそうだ。これを4分間の勝負で食べた量が最も少なかった者が一人落とされる。結局落とされた黒人の彼は、勝負が終わった後でげーげー吐いていた。盛大にげーっとやる段階になると、アメリカ人だってやはりそんなのをマジで直視したくはないのだろう、その部分に積み重なったコップの絵が被さってその部分を覆い隠す。だったらまじまじと撮るな、そんなの。つられてこちらも吐きそうになるだろ。


最後の二人となった白人の彼とアジア系の彼は、その後また人間ボウリングで今度は4分間転がされ続ける。二人はこれにも耐え、ついに球状容器内でのサドン・デスのプレイオフで、今度は3分間のパイ食い勝負に入る。さすがにここまで来ると二人共ほとんど目を白黒させており、パイを見ただけでげろっぱゲロゲロしそうになっている。見ているこちらもなにやら胃の辺りが締めつけられる。あー、気持ち悪い。


そしてここでついに食っている途中でアジア系の彼がこらえ切れなくなって、涙目になりながら盛大にぶはーっとそこらじゅうに吐き散らかし、勝負に決着が着いた。勝った白人の彼はこの回の賞金1,000ドルを現金で手にしてご満悦の体だったが、いい歳した男が顔中パイだらけにして喜んでいてもなあ、あんまり見てくれはよくないぞ。あー、しかし気持ち悪い。


番組第2回では食材も変われば場所も変わる。因みに第1回が収録されていたのはどこぞのトンネルの中だったが、第2回は遊園地だ。最初の食材はほうれん草のスープで、むろんリッチでとろとろしたクリーム状のスープで、これまた大量に食える代物ではなかろう。そして上位3人が乗せられるのは‥‥そう、あの、だいたいどこの遊園地にもある高速で回転する乗り物だ。ここではフレイムスロウアー (Flamethrower) と呼ばれていたが、途中で上下逆さまになったまま停止するところなんかがよけいいやらしい。


これに乗せられた一人は、鼻をつまみながら必死にこらえていたんだが、あと残り10秒というところでついにたまりかねてライドの途中でぶふぉーっと吐き戻した。遠心力のついたライドから吐いたものが弧を描いて飛び散らかる。見物客もきゃーきゃー言いながらあとずさって逃げている。TVで見ていても思わずあとずさる。わざわざこんなのをスロウで再生するなーっ。


残った二人は今度はツナ・キャセロールを食べさせられるのだが、正直言ってツナ・キャセロールってどんな食い物かよくわからない。見た感じではマカロニ・チーズにツナが入ったものという風に見えた。これはアメリカ人でも同じなようで、残っていた二人のうちの一人の母が現地に応援に来ていたのだが、ツナ・キャセロール、なに、それ、でもあんたならやれると声援を送っていた。おいおい、普通、まともな母なら息子がこんな番組に出るのを応援するかとも思うのだが、それがどんなものであろうと息子が自分からやるといったのを応援するのは正しい母の姿かとも思う。


いずれにしても息子の方は、キャセロールの中にスプーンを突っ込んだきり、既に気持ち悪くなってスプーンを動かせない。既に咽喉元辺りまでせり上がってきているものがあるのが見てとれ、思わずこちらもげふっとしてしまう。それでもなんとか気力を奮い起こして一口口にしたまではいいが、その直後にやはりこらえ切れなくなってぐえーっと吐いた。ああ、うえーっ、書いていてこっちも気持ち悪くなってくる。


こういうのを見物客はきゃーきゃー言いながら結構喜んで見ているのだが、しかし、これはたまらんわ。MTVの「ジャックアス (Jackass)」を超えた究極のゲテモノ番組がついに現れたという気がする。この手の愚劣下劣系番組というと、FOXのリアリティ・ショウがこれまでは他と一線を画していたという感じだったが、それを一気に超える番組が現れてしまった。


「ジャックアス」でも番組が始まる前には、危険だから番組でやっていることを決して真似しないようにという注意というか警告が挟まったが、「ハール」の場合、放送前に「究極のバカげたアクティヴィティであり、あんたも、あんたのバカな友達も絶対に真似しないように」という強い調子の警告が入る。私なら頼まれても金くれるといっても絶対にやらないが、アメリカ人ならやるやつは結構いるような気がする。コバヤシだって、食うだけならともかく、よけいなアクティヴィティのついたこの番組に出たら、どこまで持つか疑問だ。やはり肉食民族には勝てないと思うのであった。あー気持ち悪い。歯磨いてこよっと。







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ハール!   ★★1/2

 
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