デューティ・フリーTV (Duty Free TV)

放送局: G4

プレミア放送日: 2/4/2008 (Mon) 20:30-22:00



ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior: SASUKE/KUNOICHI)

放送日: 2/4/2008 (Mon) 20:30-21:00-21:30 (daily)


アンビータブル・バンヅケ (バンズケ) (Unbeatable Banzuke: 筋肉番付)

プレミア放送日: 2/4/2008 (Mon, Wed, Fri) 21:30-22:00


スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ (Super Big Product Fun Show: よしもとサンサンTV、上方芸能三国志、Super Golden Yoshimoto (吉本超合金?)、ジャングルTV)

プレミア放送日: 2/5/2008 (Tue, Thu) 21:30-22:00


内容: 日本製ヴァラエティ・ショウのラインナップ。


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「ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior)」の項でも書いたが、比較的新参のPCゲーム専門のケーブル・チャンネルG4の現在の看板番組は、東京放送の「SASUKE」、「KUNOICHI」こと「ニンジャ・ウォリアー」だ。G4は番組を30分1エピソードとして編集し直して毎夜放送しており、今ではプライムタイムの編成の中核を担っていると言っても過言ではない。


とはいっても日本でも基本的に不定期編成の「SASUKE/KUNOICHI」は、特にエピソード数が多いわけではなく、今では過去放送したエピソードを何度も再放送してお茶を濁している。新エピソードがないわけだからしょうがないのだが、しかしなんとか状況を打破したい。ではどうするか。他に日本から同様にキッチュな味付けの体力勝負系をなんか持ってこれないかとG4が考えたのは間違いなく、それを実現させたのが、今回の「デューティ・フリーTV」枠だ。


この「デューティ・フリーTV」、世界中から選りすぐったTV番組を編成しているとか言っているが、実は中味は全部日本製だ。まず8時半から9時半まで2コマ「ニンジャ・ウォリアー」を編成した後、10時まで日替わりでいくつかの番組を編成する。基本的に月、水、金が「アンビータブル・バンヅケ」で、火、木に「スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ」が放送される。


「アンビータブル・バンヅケ」は、「バンヅケ」というタイトルからも類推できるように、そもそもの「SASUKE/KUNOICHI」の生みの親である「筋肉番付」のことだ。「ニンジャ・ウォリアー」を見て以来、私も「筋肉番付」のことが気になっていたので、これを幸いとばかりに早速チャンネルを合わせてみた。番組の冒頭ではカトウ・ケイなる人物が登場して前口上を述べるのだが、そのイントネーションのおかしい日本語からして、この部分はG4が後から付け足したもののようだ。


番組では毎回、だいたい2、3種の競技がフィーチャーされる。また、多数ある競技のうち、「バンヅケ」ではこれまで私が見た限りではまだ5、6種の競技しかやっていない。「ハンドウォーク (Handwalk)」、「ライク・ア・ピエロ (Like a Pierrot)」、「おっとっと9 (Ottotto 9)」、「カンガルー (Kangaloo)」、「バンザイ90 (Banzai 90)」等で、番組の冒頭やCMでは「だるま7 (Daruma 7)」や「スーパーライダー (Super Rider)」、「ネコ デ・ドライヴ (Neko de Drive)」等が一瞬映るので、それらもやがては放送されるものと思われる。


それらを見て感じるのは、意外に地味ということだ。最初に見たのがそれらを総合した特番である「ニンジャ・ウォリアー」だったから、特にそう感じるのだと思う。屋外で自分の体力の限界に挑戦する「ニンジャ・ウォリアー」と異なり、「バンヅケ」では屋内での専門化した一種競技で、しかも全力で走ったり跳んだりする「ウォリアー」に対し、「バンヅケ」は、どれだけぶれる身体や器具をコントロールしてコースアウトせずにゴールまで到達できるかという競技が多い。どれだけ競技者の内面で焦りや興奮や葛藤があろうと、それは表に出さずに押し込めないとゴールまで到達できなかったりする。


特にその印象が顕著なのが指先に棒を立てて障害物の中を歩いていく「おっとっと9」で、競技者はすり足で歩いていく以外、ほとんど動きらしい動きがない。大きく動いて棒を落としてしまったら元も子もないから当然だ。落とさないように落とさないようにと慎重に歩を進める競技者を見るのは緊張感が伴うが、しかし、「ウォリアー」的な解放的なエキサイトメントはここにはない。競技のベクトルがまったく逆を向いているのだ。


一輪車競技の「ライク・ア・ピエロ」や倒立歩行の「ハンドウォーク」、ホッピングの「カンガルー」とかも多かれ少なかれそうで、受ける印象は、また玄人受けしそうな地味な自己完結競技だなということに尽きる。むろんオリジナルの「筋肉番付」ではもっと競技数もあり、「ウォリアー」的な派手な体力勝負もあるだろう。「バンヅケ」で一見地味な競技ばかりを選んでいるように見えるのは、「ウォリアー」とは印象の異なる競技を意識的に集めたG4の戦略によるものと思われる。


いずれにしても、私同様「ウォリアー」から見始めた視聴者は、「バンヅケ」にはちょっと物足りないものを感じると思う。例外的なのが派手さとキッチュさが微妙にマッチした「バンザイ90」で、こいつは見た目にも面白い。全力で人間を頭上に放り投げる体力勝負の面白さに加え、上に放り投げられたものが頭上のサンドバッグを掴み、そこで踏ん張る。それがなんか、競技者がサンドバッグに吸い付くように見えて面白いし、失敗して下に落ちるのを見るのは、当然「ウォリアー」的でこれまた面白い。


一方「スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ」は、実は元々こういう番組があるのではなく、吉本系の番組を4本勝手に繋ぎ合わせているだけだ。その4本とは、「よしもとサンサンTV」、「上方芸能三国志」、「Super Golden Yoshimoto (吉本超合金?)」、「ジャングルTV」の4本で、実は後の2本は英語表記からでは原題がよくわからなかった。「ジャングルTV」というのは吉本ではなく、たぶんタモリの「ジャングルTV」のことを指すのだろうが、その部分が放送されたのはまだ見たことがないので定かではない。「スーパー・ゴールデン・ヨシモト」もまったくわけがわからず、ちょっとグーグルで調べてみてたぶん「吉本超合金」だろうとあたりをつけたのだが、いずれにしてもオリジナルを見たことは一度もないので、もしかしたら違っているかもしれない。


「よしもとサンサンTV」は現実にホストの二人が立っているステージの後ろに「よしもとサンサンTV」というサインがかかっているし、「上方芸能三国志」は、番組の最後にちゃんとアルファベット綴りで「Kamigata Geino Sangokushi」と出てくるので、これらは間違いない。ただし番組を見ている限りでは、中味はずっと「サンサンTV」を映しているようでもあった。


だいたい吉本系のお笑いというと、若い芸人が身体を張る、的なノリのものが多い。時にもうちょっとおまえら頭も使えんのかとも思ったりもするが、しかしこれは実は、MTVの「ジャックアス (Jackass)」にかなりノリが近い。やっていることは程度の差こそあれほとんど一緒だったりする。「ジャックアス」の場合、やっている本人たちが自ら率先して色々なアクティヴィティに挑戦するのだが、吉本の場合は、だいたいがなんらかの罰ゲームとしてそれらの行為が用意されているというのが根本的な差と言えるか。


むろん無償の行為である「ジャックアス」と、罰ゲームで人が戦々恐々としながら行為に挑戦する吉本では、微妙に印象は異なる。人に腹いせやバツ、嫌がらせとして嫌な行為を強制する吉本の方が性格が悪いと言えるが、そのために逆に人をいじめる楽しみがあるとも言える。最近、アメリカではこの「バツ・ゲーム」、あるいは「バツ (batsu)」というのが普通名詞として定着しつつあり、若い子ではかなりの子が「バツ」というと、なんらかの代償としてヘンな行為を強制させられること、ということを理解している。新語として英語に定着するのもそう遠くはないかもしれない。


ただし私は、頭を使えないから身体だけ張る、みたいなものだとやはり飽きる。そこにやはりうまく、なんらかの気の利いたコメントの一つや二つは差し挟むだけの芸を見せてもらえないだろうかと思う。その点では「ジャックアス」だって同様だが、「ジャックアス」の場合は、ただヘンな行為に挑戦してげらげら笑うだけではなく、時にほとんど無目的的に、見物する者もいない、笑う者もいない場面でただ黙々と無償の行為に没頭する時があって、実はあれがなかなかよかった。人を無理に笑わせようとする、吉本的なあざとさがないのだ。「ジャックアス」がヴェテラン番組になるに連れて段々面白くなくなっていったのは、巷でよく言われているように、視聴者が慣れたこと、あるいは目ぼしいアクティヴィティが少なくなってきたからというよりも、出演者が視聴者の目を気にし過ぎるようになったからと私は思っている。


一方吉本では、視聴者ならびにスタジオの観客を笑わせることが至上命令だ。そのため吉本に限らず日本のお笑い系番組の場合、だいたいスタジオに客を入れて、いかにもここでディレクターが「はい、笑って」みたいなサインを出しているという感じの、自発的でない、おざなりの笑いが挟まるというシーンが多い。明らかに笑い声専門のスタッフと思える聞き覚えのある笑い声が聞こえることもままあり、そういう声が絶対に面白くないギャグと断言できるところで聞こえたりすると、見ているこちらとしては不快でいっそう笑えなくなる。


吉本系では基本的に客は若い子ばかりということもあり、スタジオ内のノリはいいようだが、問題はほとんどがティーンエイジャーの女の子、しかも可愛くない女の子が大勢を占めるということにある。近年、イケメンの男の子が増えたようだが、私は日本の女の子も充分可愛くなったと思っている。それなのに、この種の公開番組に来て前の方に陣取っている女の子がどうひいき目に見ても可愛いとは到底言えない子ばかりなのはなぜだ。なんでいきなりこういう閉鎖された世界で可愛くない子率が9割を超える。たぶん、学校では男の子に相手にしてもらえないからこういうところに来て、観客をよいしょしてくれる芸人相手に一時の楽しみを味わうんだろうな、なんて考えながら私は番組を見ていたのであった。








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Unbeatable Banzuke
アンビータブル・バンヅケ   ★★1/2
Super Big Product Fun Show
スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ   ★★

 
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