Edge of Tomorrow


オール・ユー・ニード・イズ・キル  (2014年6月)

「オール・ユー・ニード・イズ・キル (Edge of Tomorrow)」は、桜坂洋原作の「All You Need Is Kill」の映像化だ。近年、和製SFが翻訳されて海外に紹介される機会が増え、それがハリウッドの目に留まった。この調子で本格ミステリも映画化されると面白くなるのだが。


「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、タイム・トラヴェル系のSFだ。さらに細分化して言うと、いわゆるタイム・ループもので、主人公が同じ時間の枠の中に閉じ込められ、何度も同じ体験を繰り返す。100%何から何まで同じというわけではなく、その中で主人公は学習し、少しずつ状況を向上させていく。


この設定で近年最も印象に残っているのは、ジェイク・ジレンホールが主演した「ミッション: 8ミニッツ (Source Code)」だ。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」でも「「ミッション: 8ミニッツ」でも、主人公は意図せずその円環の中に巻き込まれる。それからなぜ自分がエンドレスのループに絡めとられたのかを考え、理由を見つけ出し、脱出の方法を模索する。


「オール・ユー・ニード‥‥」の場合、彼らが何百回同じことを繰り返そうとも、圧倒的にパワーとスピードが勝るエイリアンを倒すことは不可能だ。あるところまで行くと、どうしてもそれから先に進むことができない。力の差があり過ぎて絶対勝てないのだ。無限に続くループであるだけに、これは地獄だ。何百回何千回何万回と、ただエイリアンに殺されるために毎回目覚めなければならない。果たして打開策を見つけることはできるのか。


一方で「ミッション」のジレンホールは、ループは実は普通の時間軸上の現実世界と繋がっており、たとえループの内側にいようとも、現実にはテロリスト・アタックのタイム・リミットが刻一刻と迫っている。それを回避すべく、無限ループの中で現実のタイム・リミットに間に合わせなければならないというギミックが斬新だった。


ジレンホールは、「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 (Prince of Persia: The Sands of Time)」、「ミッション」と、時間を遡る作品に間を置かずに出演し、もしかしたら最後には必ず勝つ史上最強の戦士になるのではと思われた。しかし実は、「アジャストメント (The Adjustment Bureau)」「ルーパー (Looper)」と来て、ついに女性戦士として登場したエミリー・ブラントこそ、史上最強の戦士かもしれない。


「アジャストメント」、「ルーパー」においては、ブラントは正直言って部外者だ。時間を操作する何者かに振り回され、そもそも自分がなぜそういう立場にいるかもよくわからない。それなのに実は世界は、時間は彼女を軸に回っており、何も知らないからこその世界最強兵器であると思わせた。それが「オール・ユー・ニード‥‥」ではついにブラントは最初から史上最強の女性兵士として登場してくる。「アジャストメント」も「ルーパー」も、「オール・ユー・ニード‥‥」の布石に過ぎなかった。「ルーパー」について書いた時、人類の未来はブラントを説得できるかどうかにかかっていると書いたのだが、どうやらそれがかなり現実味を帯びてきた。


「オール・ユー・ニード‥‥」のTVでの予告編で、何度も何度もループに巻き込まれてはやられるクルーズは、仕舞いには「I’m not a soldier」と音を上げる。それに対してブラントは、「No, you’re a weapon」と返すのだが、そのブラントがやたらと格好いい。それでこのシーンをでかいスクリーンでもう一度見ようとわくわくして待っていたのだが、実はこのシーン、本編では使われていない。どうも流れが合わずカットされたようだ。しかしこのシーンのブラントが様になっているのは間違いないので、捨てるには忍びず、予告編に使われたんだろう。


ところで「アジャストメント」と「ミッション」においては、コーヒーが時間を巡る重要な小道具として登場する。そしたら「オール・ユー・ニード‥‥」でも、クルーズがブラントにコーヒーを淹れてあげるというシーンがある。ブラントの好みなど知らないはずのクルーズが何も訊かずに砂糖を3つカップに入れることから、ブラントは既に何度もこれを体験済みということを察知する。やはりコーヒーなのだ。もしかしたら「ルーパー」でも何か重要なシーンでコーヒーが使われているたのを、私が見逃していただけかもしれない。「プリンス・オブ・ペルシャ」では、きっとあまりに人がペルシャ・コーヒーばかり飲んでいて、コーヒーが目に入らなかったに違いない。してみると、もしかしたら未来に最も影響があるのは、スターバックスの値上げとか。










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近未来。ケイジ少佐 (トム・クルーズ) はエイリアンとの戦いにおいて、装着用の戦闘スーツの広報宣伝を担当していた。しかしロンドン行きを要請されたケイジは、そこで前線に立つことを命じられる。実戦の経験のないケイジは逃げようとし、ほとんど反逆者も同然の対応で前線に送り込まれる。上官のファレル (ビル・パクストン) は有無を言わさずケイジを戦場に送り込み、まるで戦闘力のないケイジはあっという間にエイリアンにやられ死亡する‥‥と、そこで目覚めたケイジは、基地に着いたばかりの自分を発見する。そこからは以前の経験をまた繰り返して戦場に向かい、そして殺されてまた同じ場所で目覚めることを繰り返すのだった。ただし一度経験したことは学習するため、少しずつ危険を回避して死ぬまでの時間は伸びていった。そしてケイジは英雄視されている女性戦士のリタ (エミリー・ブラント) と出会う。リタはケイジの境遇を理解し、エイリアンを倒すにはケイジの力が必要なことを確信する。二人は協力して、新しく生き返る毎に少しずつマザー・エイリアンに近づいていくが‥‥


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