After the Wedding


アフター・ザ・ウェディング  (2019年8月)

本当は先週、ケイト・ブランシェット主演の「ウェア'ド・ユー・ゴー、バーナデット? (Where'd You Go, Bernadette?)」を見に行こうとしていたのだ。そしたら、クルマを出したら普段は混まないフリーウェイに入る前の道が大渋滞、上映時間に間に合わず、諦めて帰った。 

  

そしたら今度こそ、と仕切り直して出かけた今回は、劇場に着いてみると、今度は上映そのものがない。普段はIMDBだけでチェックしてだいたいOKなのだが、稀に直前に変更された予定が反映されてない場合がある。そのため本来なら劇場のサイトでも確認すべきなのだが、面倒くさいので怠ったらこれだ。 

  

さすがに2週連続で何も見ずに家に帰るというのも業腹なので、何か他にやっている面白そうな映画はないかと見渡して、10分後から上映開始予定だったのが、この「アフター・ザ・ウェディング」だ。既に何週間か前から映画のタイトル自体は見ていたが、なんとなく私のアンテナに引っかからず、注意を払ってなかった。しかし主演は私が好きなミシェル・ウィリアムズだ。これも何かの縁と、今回はこれに決める。 

  

ウィリアムズ演じるイザベルは、インドで孤児のためのシェルターの運営に尽力している。しかし金策はうまく行かず、経営は厳しかった。そこへ大口の寄付をしてもよいという棚ぼたみたいな話が持ち上がる。イザベル本人がニューヨークまで来てインタヴュウを受けるというのが条件なため、イザベルはインドを後にする。 

  

しかし寄付を申し出た富豪のテレサ(ジュリアン・ムーア) は、実は特にインドのシェルターに関心があるようには見えず、インタヴュウもおざなりで、それなのに週末に予定されている娘の結婚式に是非出席するよう固執する。テレサの機嫌を損なうわけにもいかないイザベルは式に顔を出し、そこでかつての自分の恋人であったオスカー (ビリー・クラダップ) が今のテレサの夫であることを知る。そして結婚式を挙げるグレイスこそ、かつて自分が産み、育てられずに養子に出したはずの娘に他ならなかった。これが偶然であるはずもなく、イザベルはテレサの真意を確かめようとする‥‥ 

  

と、ここまで書いて、実はこの作品が2007年のスザンネ・ビエール演出のデンマーク映画「アフター・ザ・ウェディング (After the Wedding (Efter Brylluppet))」のリメイクだと気づいた者は、なかなか鋭い。というか、まんまのタイトルで、気づかない方がおかしいという意見もあるに違いない。 

  

とはいえ、私は気づかなかった。その理由の第一が、オリジナルを見たのが既に12年前で、記憶が薄れかかっていた。「アフター・ザ・ウェディング」なんてタイトルも、あまりにもベタでどこにでもありそうなタイトルなため、特に何の注意も払ってなかった。 

  

しかしそれよりもすぐに気づかなかった最大の理由は、登場人物のジェンダーの交代による、作品の印象の差のせいだと思う。オリジナルで今回ウィリアムズが演じている主人公に扮していたのはマッツ・ミケルセンで、男性だ。それだけで作品の肌触りはがらりと変わる。特に今回、養子に出したはずの娘が実は前夫 (妻) が引き取っていたという展開は、実際に自分のおなかを痛めて産んだ母親とそうではない父親というのは、見る方にとっても受ける印象が大きく異なる。 

 

さらに、結婚式を挙げる娘が自分の娘だと確信するまでが、オリジナルと今回でまた異なる。オリジナルでは、主人公が娘を見て、まさかオレの娘かと煩悶する時間が長い。一方今回は、イザベルはグレイスを見た瞬間に、この子は自分が生んだ子だと確信する。自分の腹を痛めて産んだかどうかの差なんだと思うが、この、瞬時に自分の子とわかるかそうでないかとでは、その後の展開で受ける印象が大きく異なってくる。これによって主人公のとる態度が大きく変わってくるからだ。 


また、オリジナルではミケルセンが主人公であり、話は彼を中心に発展していくが、今回はウィリアムズが主人公とはいえ、女性富豪役のムーアにもかなり焦点が当たり、彼女の立ち位置に寄り添う描写も多い。これはムーアが今回プロデュースも兼ねており、夫のバート・フレインドリッチが演出していることとも関係があろう。

  

等々の理由のため、冒頭でウィリアムズが孤児園の運営に奔走しているというシチュエイションから既になんとなく既視感を覚えてはいたのだが、それが何なのかははっきりとしないまま見ていたのだった。 

  

ついでに言うと、それが何なのか釈然としないまま、最後まで見た。これがミケルセンの「アフター・ザ・ウェディング」のリメイクだということに気がついたのは、実は映画が終わってエンド・クレジットが始まり、一番最初にオリジナル作品の表示が出たからだ。 

  

そのデンマーク語表示のオリジナルのタイトルなんて実はさらさら記憶してなぞいなかったが、その北欧っぽいスペルを見た瞬間、北欧? スウェーデン、フィンランド、デンマーク‥‥と来て、いきなりミケルセンのオリジナルが脳裏に甦った。なんてこった、リメイクだったのか。 

  

映画をリメイクと知らずに見て最後の方でやっと気づくというのは他にも何度かやっており、近年ではアルゼンチン映画の「瞳の奥の秘密 (The Secret in Their Eyes)」をジュリア・ロバーツ主演でリメイクした「シークレット・アイズ (Secret in Their Eyes)」も、映画が終わる寸前にリメイクだと気がついた。そういやこちらも、やはり男性から女性へと主人公のジェンダーが変更されていた。とはいえ、どちらかというと今回の方が、ジェンダーを交替したことがより効果的だったとは言える。それにしても、エンド・クレジットが始まるまで気がつかないか。この分だと、次は知らずにリメイクを見終わっても気がつかなそうだ。何度でも楽しめて得だと言えるか‥‥どうか。 











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インドで孤児のためのシェルターで働いているイザベル (ミシェル・ウィリアムズ) に、ニューヨークのメディア・コングロマリットを経営する女性富豪テレサ (ジュリアン・ムーア) から大口寄付の可能性がもたらされる。インタヴュウのためにニューヨークを訪れたイザベルは、そこで数日後に催される一人娘のグレイス (アビー・クイン) の結婚式への出席も要請される。気は進まないもののスポンサーの機嫌を損ねるのもなんなので式に顔を出したイザベルは、そこでかつての恋人、オスカー (ビリー・クラダップ) がテレサの現在の夫であることを知る。そして結婚式を挙げるグレイスこそ、イザベルがかつて産みはしたものの育てられず、養子に出したはずの娘に他ならなかった‥‥ 


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