Where'd You Go, Bernadette


ウェア'ド・ユー・ゴー、バーナデット?  (2019年9月)

先週、先々週と見そびれていたケイト・ブランシェット主演の「ウェア'ド・ユー・ゴー、バーナデット?」を、やっと見てきた。もう今週見れなかったら、たぶん縁がなかったものとして諦めるしかないだろうと思っていたら、今回はすんなり見れた。それにしても、やたらもったいつけられたな。 


マリア・センプルの同名原作の映像化で、気鋭の女性建築家だったが、今では一線を退いたバーナデットが主人公だ。男性ばかりに周りを囲まれた紅一点の仕事環境で、バーナデットは気張り過ぎた挙げ句、仕事の失敗も重なり、心の病気になって一線を去る。今では老朽化した一軒家に、夫のエルジンと娘のビーと住んでおり、人付き合いが嫌いの変人おばさん化していた。 

  

もちろんバーナデットに扮するのがブランシェットだ。美人のくせにどこか常識が欠けているという役をやらせると、ぴたりとはまる。顔の各々のパーツがでかくて、ちょっとした表情の変化でもかなり強い印象を残す。この特長を生かしまくって見事オスカーを獲ったのが、「ブルー・ジャスミン (Blue Jasmine)」だった。この特長は殴られて脅える時も効果を発揮するが、それはまた別の話だ。「ウェア'ド・ユー・ゴー、バーナデット?」はもちろん、「ブルー・ジャスミン」に連なるブランシェットの魅力発現系の作品だ。 

  

だいたい、天才美人建築家というキャラクターからして、大いに演じられる俳優を選びそうだが、ブランシェットの場合、そういう肩書きがいかにもすんなり納得できる。実際に頭がよさそうにも見えるだけでなく、頭空っぽの白痴系美人も両方演じられて甲乙つけ難い。やはり得難い俳優なのだった。 

 

いずれにしても、どんなに頭がよくても、こんな自己中は社会の爪弾き者で友達なんかできないだろう。バーナデットに振り回される隣人に扮するクリスティン・ウィーグの方が、こちらも見栄張りだとはいえ、現実には共感や肩入れを得やすそうだ。バーナデットみたいな隣人がいたら、間違いなく村八分になると思う。まあ、本人は気にしないだろうが。それなのに、特筆すべきは見ている限りでは、結構バーナデットに感情移入させられて、共感してしまうのだ。 

 

そのバーナデットの夫エルジンに扮するのが、先週見た「アフター・ザ・ウェディング (After the Wedding)」にも出ていたビリー・クラダップ。あちらでは芸術家、こちらではIT専門家と、こちらも何やら頭よさそうな役回りが続く。それよりも、あちらでもこちらでもものわかりがよさそうなやさしげな夫という役柄が持ち味と言える。 

 

話は後半、バーナデットが使っていたヴォイス・コントロールのパーソナル・アシスタントが、ロシアのハッキングに利用されていた悪意アプリだったことが発覚、隣人と諍いどころか国家反逆罪的な罪に問われそうになってパニクったバーナデットが国外脱出、しかも逃げた先は南極だったという展開を見せる。無論バーナデットはそこで本来の自分を取り戻す。ブランシェットも楽しそうに演じていて、思わず応援したくなるのだった。 











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かつて新進の天才的女性建築家として将来を嘱望されていたバーナデット (ケイト・ブランシェット) は、心の病気になって消耗し、現役を退いて、今ではカリフォルニアの老朽化した一軒家を微々たる歩みで改装しながら、ITエンジニアの夫のエルジン (ビリー・クラダップ)、娘のビー (エマ・ネルソン) と共に暮らしていた。自分の家族以外の者とはほとんど全員敵対するバーナデットは、隣人のオードリー (クリスティ・ウィーグ) と家の境界でいざこざを起こした挙げ句、彼女の行動が原因で隣家に壊滅的打撃を与えてしまう。さらに悪いことにはバーナデットが利用していたヴァーチャル・アシスタントのマンジュラはロシアが開発したハッキング・アプリで、マイクロソフトで最先端技術開発に携わっていたエルジンの研究が盗まれたとなると国家機密に抵触するとして、FBIが捜査に乗り出してくる。パニクったバーナデットは、バスルームの窓から逃げ出して姿を消してしまう‥‥ 


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