Ugly Americans  アグリー・アメリカンズ

放送局: コメディ・セントラル (COM)

プレミア放送日: 3/17/2010 (Wed) 22:30-23:00

製作: トゥーキー・ウィルソン・プロダクションズ

クリエイター/製作: デヴィン・クラーク、デイヴィッド・スターン

声の出演: マット・オバーグ (マーク・リリィ)、ナターシャ・レゲロ (カリー・マゴットボーン)、カート・メツガー (ランドール・スケフィントン)、ラリー・マーフィ (グライムス)、ランディ・パールスタイン (レナード・パワーズ)、マイケル-レオン・ウーリー (トワイン)、デヴィン・クラーク、デイヴィッド・スターン


物語: ニューヨークのソーシャル・ワーカーのマークの仕事は人々の手助けをすることにあるが、あろうことかマークの周りにいるのは、人間ではない異形の者ばかりだった。マークは今日も、死神か鬼のような女性上司のカリーに迫られたり苛められたりしながら、失業中や失恋中、その他もろもろの悩みを抱えるモンスターたちの相談に乗るのだった。


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私にとってコメディ・セントラルといえば、一にも二にも「サウス・パーク (South Park)」だ。放送が始まったのが1997年だから、いつの間にやら放送13年目を迎えるチャンネルを代表するヴェテラン番組になってしまった。一時「シャペルズ・ショウ (Chappelle’s Show)」という、「サウス・パーク」の後釜を継げるかという番組もあったが、本人が嫌気を差して辞めてしまった。


「サウス・パーク」では、登場する小学生たちは、スタンもカイルもカートマンも今でもクソガキの小学生のままだし、今でも同様に放送禁止すれすれの危ない話題、危ない発言を繰り返している。今では「サウス・パーク」でおちょくられないことにはまだまだ知名度は全米規模じゃないという認識が一般的になっているほど、視聴者に根づいている。


だいたい、アメリカのネットワーク放送のシリーズ番組は年間20本内外製作されるのだが、ケーブルではその概念が曖昧で、1年で10本程度しか製作されないこともあれば、比較的簡単に製作できるリアリティ・ショウだったりすると、既に放送は終えているがTLCの「ジョン・アンド・ケイト・プラス・エイト (Jon and Kate Plus 8)」のように、年間4、50本製作される場合もある。


「サウス・パーク」の場合、春7本、秋7本、計年間14本の新エピソードを放送するという形態がここ何年も定着している。年間14本だけでいいのかというのもあれば、そういう、製作者側がしたいように番組を製作する要求が通るということにも驚かされる。要するに人気があるのだ。いずれにしても、「サウス・パーク」で徹底的にバカにされることは、全米規模のセレブリティというお墨付きを得たことに他ならない。


他にコメディ・セントラルといえば、ジョン・スチュワートの「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」とスティーヴン・コルベールの「ザ・コルベール・レポート (The Corbert Report)」という、2本の深夜トーク・ショウを忘れてはならない。スチュワートの時事ネタ、コルベールのハイパーなギャグは、これまたコメディ・セントラルを代表するものと言える。


それ以外では実を言うとコメディ・セントラルをよく見ているわけではなく、それが特に得意でもないアニメーションともなるとなおさらなのだが、それでも「アグリー・アメリカンズ」には、なにやらそそられるものがあった。番組はニューヨークのソーシャル・ワーカーのマークの日常を描くものだが、彼の回りにいるのは、死神妖怪吸血鬼、狼男にろくろ首 (がいるとは実は思えないが) という異形の者ばかり。実はニューヨークは、人間ではない者ばかりが住んでいるという設定で描くアニメーションなのだ。


番組の冒頭、寝ているマークの部屋にフランケンシュタインもどきの怪物が乱入してくる (と思ったら彼はフランケンではなくゾンビだった。カン違いするのも絵がヘタクソなせいだ。) すわ一大事と思いきや、このゾンビ、実はマークのルームメイトで、ちゃんとランドールという名前がある。ゾンビだってちゃんと固有名詞があるのだ。文字通り頭に角のある死神女の上司キャリーとできてしまい、昨夜のSMのおかげでベッドに裸に縛られたままのマークを、わざわざ助けにやってきたのだ。


ランドールは元々は普通の青年だったが、バーで一目惚れした女性が新し物好きで、ちょっと怖可愛いゾンビが、連れて歩き回るボーイフレンドにはいいと言ったために、わざわざ自らゾンビ化した。そしたら、その時は飽きっぽい彼女は既にゾンビには愛想を尽かしており、ランドールはデートするまでもなく振られ、以来ゾンビとして生きて (死んで?) いるのだった。


ランドールの欠点は、これはゾンビだからしょうがないとも言えるが、ちょっとでも気を抜くと身体のあちこちが腐り落ちて原形を留めなくなってしまうことにある。そのためいつもその辺のゴミを身体のあちこちにつぎはぎしながらやりくりしている。一応まだ本人とわかるだけましな方だ。


世知辛い昨今、シティは違法滞在の異形の者の取り締まりに厳しい。特に人間で偉業の者を憎んでいるグライムスは、何かと彼らに厳しく当たる。マークはシティを歩き回ってそういう者に救いの手を差し伸べている。タイラーはそうやってビルの窓を清掃する職を斡旋した一人だが、しかしマークはそのビルが人間の脳の研究所ということを知らなかった。そのことを知ったマークが慌ててビルに駆けつけると、時既に遅く理性を失ったタイラーは、保管してあった脳を片っ端から食い散らかした後だった。そんなこんなで今日も苦労のわりには実りは少なく、結局また、キャリーとベッドでSMごっこでマークの一日は終わるのだった。


他に出てくる主要なキャラクターとしては、魔法使いのマークの同僚のじいさんレナード (イメージとしては「アメリ (Amelie)」で国外で写真を撮っていた三角帽子のノームだ)、職場の上司トワイン (赤鬼)、おっぱいがいくつもあって顔が下腹部についているアンジー、イカ男のビリー、スライム状のブロブ、何でもかんでも食べてしまう緑の袋みたいなバート、脳みそが足つけて歩いている (浮かんでいる?) グレイト・ブレイン、一つの胴体に頭が二つあるマーティン、目が真っ黒のゾンビ、タイラー・メイソンという面々がいる。本人として人間のセレブリティであるクリス・エンジェルやラリー・キングも出てくるが、違和感なく妖怪異形の中にはまっているのがおかしい。


この番組、見て思い出すのは、かなりの部分トッド・ブラウニングの「フリークス (Freaks)」だったりする。先頃エイドリアン・ブロディ主演の異種生命ものとの交感を描く「スプライス (Splice)」を見たばかりなのだが、このような妖怪化け物でも、情が移ると可愛く見えたりする。そういうものなのだ。それにニューヨークって、時々確かにこいつとオレが同じ人間かと思えるくらいものの考え方の違うやつらはいるからな。あながち「アグリー・アメリカン」に描かれている世界も特にまったくの絵物語とも言えないかもと思うのであった。








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アグリー・アメリカンズ   ★★1/2

 
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