Those Who Wish Me Dead


モンタナの目撃者  (2021年10月)

公開されたのはもう半年くらい前になるかと思うんだが、気にはなっていても、如何せん今年は映画館通いをまだ敬遠しているので見そびれていた、「モンタナの目撃者」を家見する。 

 

テイラー・シェリダンだからな、「ウインド・リバー (Wind River)」並びにTVの「イエローストーン (Yellowstone)」で、骨太作品の脚本だけでなく、演出家としてもやれることを証明したシェリダンの新作となれば、それは気になる。 

 

脚本でも演出でも、これまでほぼ中西部か中北部を舞台としてきたシェリダンの新作は、タイトルが示す通り、今回の舞台は北側がカナダと国境を接しているモンタナだ。寒いか砂漠か荒野という印象のあるシェリダン作品にしてはやたらと緑が横溢しているが、それでも広葉樹というよりは針葉樹であり、山の印象は開放感というよりも、どちらかというと人を拒むようなところがある。冬が寒いのは間違いない。 

 

周知のように、今年のアメリカ中西部の山火事は、史上最悪規模だ。東海岸はむしろ雨が多く、8月末のハリケーン・アイダの雨は、こちらもある種史上最悪レヴェルで、我がアパート・ビルも地下が洪水に見舞われたくらいだが、一方で何千kmも離れている西海岸の山火事の煙が、遠く離れたニューヨークで空を覆うことも一再ならずあった。映画の撮影は昨年だろうが、森林消防隊員を描く映画の内容は、時宜的には今とぴたりと一致している。 

 

主人公ハンナは森林消防隊員であるが、彼女の正式な職種はスモークジャンパーだ。これは山火事の際、ヘリやプロペラ機に乗って現場に駆けつけ、パラシュートで降下し直ちに消火活動を行うという専門職だ。さらに山の中には各地に見張り小屋のようなものが建てられていて、人が詰められるようになっている。国土や自然林の広いアメリカならではの体制と言える。 

 

ハンナに扮するのがアンジェリーナ・ジョリーで、かつて山火事で同僚を失い、救うべき人間を救えなかったことがトラウマとなっているという役どころ。見せどころを心得ているという感じ。他も皆、ヴェテランや実力派が脇を固めている。保安官に扮するジョン・バーンサルは近年テイラー組という印象で、妻に扮するメディア・センゴアと共に今回はなかなか儲けものの役。殺し屋兄弟に扮するエイダン・ギレンとニコラス・ホルトもいい。 

 

アクション、演出、いかにも骨太シェリダンという感じで共に申し分ないが、一つ気になるのがやはりCGの山火事だ。山燃やすのはさすがにできないだろうからCGというのはしょうがないとは思うが、火の回りが早過ぎたりして、本物さながらの迫力を与えるのは難しかったようだ。あるいは、これは家の42インチのTVスクリーンで見ているせいで、映画館のスクリーンで見たらまた違った印象を持ったかも知れない。とはいえ、今夏何度もニューズで見た本物の山火事には、TVで見ても恐怖感を感じたから、スクリーンの大きさのせいばかりとも言えない。シェリダンには、こちらとしてはやはり「ダイ・ハード (Die Hard)」ではなく、地に足のついたアクションを期待する。 

 














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モンタナ。森林消防隊員のハンナ (アンジェリーナ・ジョリー) は、かつて山火事で同僚を失い、若いキャンパーも救うことができず、そのことがトラウマとなっていた。一方、シングル・ファーザーの会計士オーウェン (ジェイク・ウェバー) は、政府高官の犯罪の真相に近づき過ぎたことで命を狙われていることを知り、まだ幼い息子のコナー (フィン・リトル) を連れてクルマで逃走を図る。しかしモンタナの山奥の路上で追っ手に襲撃され、オーウェンは命を落とし、コナー一人山奥に逃げる。コナーは山の中でハンナと出会い、ハンナはコナーが追われていることを知って助けようとするが、追っ手の殺し屋のペアも執拗だった‥‥ 


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