The Transporter

トランスポーター  (2002年10月)

ジョニー・ノックスヴィル率いるジャックアス軍団が、今度は舞台をTVから映画に移してパワー・アップした意味なしいたずらを繰り広げる「ジャックアス: ザ・ムービー」を見に行くか、それともアクション・シーンが見どころの「トランスポーター」にするか、結構迷った。それ以外にもアメリカ版リメイクの「ザ・リング」も結構興行成績がよく、気になってはいるし、ナオミ・ワッツも見たいとは思っているのだが、なにせオリジナルの「ザ・リング」を既にヴィデオで見てるし、ハリウッド版「ザ・リング」は「バニラ・スカイ」のようにほとんど忠実にオリジナルをなぞったものっぽい。それで悩んだ挙げ句、とにかく格好よさそうな「トランスポーター」を見に行くことにした。


運び屋 (トランスポーター) フランク (ジェイソン・ステイサム) の仕事は、文字通り荷物をある場所からある場所へ運ぶこと。運ぶのは人間のこともあればそうでないこともある。それが何かには関係なく、頼まれたものを決まった時間に決まった場所に届けるのが彼の仕事だった。ある日、依頼された荷物を運ぶ途中、もぞもぞと動くバッグが気になったフランクは、ルールを曲げて中を覗き、猿ぐつわをされている女の子レイ (スー・チー) を発見する。それでもレイを目的地に運んだまではよかったが、中を覗いたことがばれ、消されかける。フランクは復讐戦を開始、しかし現場から逃げるフランクの車にはレイが忍び込んでいた‥‥


出だしは好調、自分で決めたルールをストイックなまでに守るフランクのプロフェッショナリズムと、ハリウッド・アクションに勝るとも劣らないカー・チェイスの連続で滅茶苦茶興奮させる。ガイ・リッチー作品出身のステイサムはヨーロッパ版ヴィン・ディーゼルという感じで、ディーゼルほどマッチョじゃないが、カンフー・アクションを次々とこなして八面六臂の活躍を見せる。しかし、最近、ガイジンさんがカンフー・アクションをやるようになっても別に違和感を感じなくなってきた。アメリカ人よりも心理的に日本に近いヨーロッパ人のステイサムだからということもあろうが、しかし、やはり「マトリックス」が世界映画に与えた影響は大きい。


とはいえ、「トランスポーター」が本当に面白いのは、殺されかけたステイサム (フランク) がお城に乗り込んでレイを救い出すまでの前半の20分間のみで、レイがストーリーに絡むようになると、もうダメである。この女はいったい何なんだ。一応可愛いっぽいところはあるが、しかし、二流の香港カンフー映画にありがちの単なるお飾りヒロインで、なんだか昔の松田聖子を思い出した。これでホウ・シャオシェンの新作に主演しているというのがまったく信じられない。


後半は先が読めまくるご都合主義のオン・パレードで、一気に下り坂である。悪役として登場するマット・シュルツも、最初は切れた悪党としてがんがん行ってくれるかと思ったらどんどん普通の悪役になっていってしまうし、ドーランベタ塗りで出てくるレイの父親にいたっては何をかいわんやである。プロデュース兼脚本のリュック・ベッソンは、他人の作品ということで手を抜いてないかあ? 最初の20分は最高だったんだけどなあ。ヨーロッパを舞台とした映画であれだけのカー・アクションは、007シリーズと「RONIN」、それに「ボーン・アイデンティティ」以外では見たことがない。というわけで、冒頭のカー・アクションを見た後は、満足して家に帰って急ぎの仕事をやっつけるというのがこの映画の正しい見方でしょう。でも、しかし、こういう映画だからこそ、半年後にヴィデオを買って、最初のシーンばかり何度も見てしまいそうな気がする‥‥







< previous                                      HOME

 
inserted by FC2 system