The Ice Road


ジ・アイス・ロード  (2021年6月)

いくつになってもアクション映画に出演し続けるリーアム・ニーソンは、一時、中年の星という印象があった。それがもう孫いますというのがしっくりくるような年齢になって、ほとんど老体に鞭打って、という感じになってきたが、それでも依然アクション作品の絶えないニーソンは、今では初老の星だ。しかしよく身体が保つ。 

 

さらにいうとニーソンは、雪や氷が背景の、寒い季節が舞台だと映える。たぶん西洋人としても背が高く、大柄で、どちらかというと口数の少なく寡黙という印象のあるニーソンが持つイメージが、そういう背景のイメージとよく合致するんだろう。近年でもニーソンの出演作で最も印象に残っているのは、「THE GREY 凍える太陽 (The Grey)」「スノー・ロワイヤル (Cold Pursuit)」といった極寒ものだ。 

 

そしてもちろん、「ジ・アイス・ロード」もその例外ではない。タイトルの「アイス・ロード」は、ヒストリー・チャンネルで放送されていた「アイス・ロード・トラッカーズ (Ice Road Truckers)」を連想させる。そして基本「アイス・ロード・トラッカーズ」を映画化したのが、「アイス・ロード」に他ならない。 

 

いったい、冬期に凍った湖の上をトラックで走って物資を輸送するという職業があることを聞いた時は、本当か、と絶句した。もしタイヤの下の氷が割れたりしたら一巻の終わりだ。凍った湖の上に乗り入れる時、一瞬氷の軋む音が聞こえる。それだけで私ならパニクりそうだ。 

 

途中、トラックの調子が悪くなっても、湖の上で立ち止まることは許されない。長時間同じ場所でエンジンのアイドリングを続けると、そこから氷が割れやすくなるからだ。もちろん映画ではそれをやってトラックが一台氷の下に沈む。とにかく危険なことに間違いなく、危険な職業の上位に来るのは間違いないのが、アイス・ロード・トラッカーだ。. 

 

ちょっとサスペンスの方向が違うが、トラックでの危険な道行きというと、アンリ-ジョルジュ・クルーゾーの傑作サスペンス「恐怖の報酬 (The Wages of Fear)」を思い出さずにいられない。あれは揺れると爆発するニトログリセリンを運び、こちらは揺れると氷の下に落ちる。さて、いったいどちらがより怖いか、と思いながら見ていた。 

 

一方、体臭が臭ってきそうなほど男臭かった「恐怖の報酬」とは異なり、「アイス・ロード」では女性のトラック・ドライヴァーもいるところが今風だ。実際の話、アメリカには女性のトラック・ドライヴァーは結構いる。街なかを走っていて、お前、今に事故るぞと思わせる危ないドライヴァーもだいたい女性だったりするが、私がは決して運転できないなと思わせるエイティーン・ホイーラーを、バックでドックに一発で着ける女性ドライヴァーもいる。その他、湾岸戦争のせいで後遺症のある元米軍兵というニーソンの弟、段々マッチョ化していく最初は一見軟弱な保険屋等、色々と考えている。 

 

かつて「アイス・ロード・トラッカーズ」を見た時には、これ、映画になる、と思った訳だが、その時自分が書いたものを読み返してみると、007や「ダイ・ハード (Die Hard)」シリーズにうってつけみたいなことを言っている。「ダイ・ハード」も後半はブルース・ウィリスが老体に鞭打ってみたいな感じになっていたから、ニーソンの起用は当たらずとも遠からずと言ったところか。しかし、「アイス・ロード・トラッカーズ」を見たのが2007年。映画化されるのに10年以上かかってしまったわけだな。 

 












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マイク (リーアム・ニーソン) は大型トラックのドライヴァーだが、一緒に仕事している弟のガーティ (マーカス・トマス) は湾岸戦争の後遺症に悩まされるヴェテランで、職場でいじめの対象になりやすく、それが元で二人の仕事はどこでも長続きしなかった。一方、マニトバの炭鉱で落盤事故が起きる。閉じ込められた鉱夫を救出するには炭鉱入り口の蓋を取り替える必要があったが、それを炭鉱まで輸送するには、既に厳冬期を過ぎ、氷の緩み始めた湖の上をトラックで走らなければならなかった。ゴールデンロッド (ロウレンス・フィッシュバーン) にスカウトされたマイクとガーティは、女性ドライヴァーのタント (アンバー・ミッドサンダー)、保険会社から派遣されたヴァーネイ (ベンジャミン・ウォーカー) と共に、トラックを凍った湖の上に乗り入れる‥‥  


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