ザ・グッド・プレイス (The Good Place)

放送局: NBC 

プレミア放送日: 9/19 /2016 (Mon) 22:00-22:30 

製作: 3アーツ・エンタテインメント、ユニヴァーサルTV 

製作総指揮: マイケル・シューア、ドリュウ・ゴダード 

出演: クリスティン・ベル (エレノア・シェルストロップ)、テッド・ダンソン (マイケル)、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー (チディ・アナゴニエ)、ジャミーラ・ジャミル (タハニ・アル-ジャミル)、ダーシー・カーデン (ジャネット)、マニー・ジャシント (ジェイソン・メンドーザ) 

 

物語: エレノアが目覚めると、そこへマイケルがやって来て歓迎の辞を述べた。まったくわけがわからないエレノアにマイケルは、ここはいわゆる死後の世界であり、選ばれた者たちのみが集められた「グッド・プレイス」であることを告げる。どうやらエレノアは、なんらかの理由で死んだものらしかった。マイケルはエレノアにグッド・プレイスを案内して回り、新しい住居をあてがい、さらにはソウルメイトとして割り当てられたチディを紹介する。しかしチディと二人きりになったエレノアは、これは何かの間違いで、名前以外はまるっきり赤の他人の過去の人生になっていることを告白する‥‥


_______________________________________________________________

The Good Place


ザ・グッド・プレイス  ★★★

クリスティン・ベルが「グッド・プレイス」の主人公エレノアとして番宣に出ているのを見た時、あれ、ショウタイムの「ハウス・オブ・ライズ (House of Lies)」は最終回を迎えたのかと思った。共演のテッド・ダンソンが出演していたCBSの「CSI」が最終回を迎えたのは知っていたが、「ハウス・オブ・ライズ」も終わっていたとは知らなかったので、驚いたのだ。 

 

ベルは今やヴェテラン女優だが、やはり出世作のUPNの「ヴェロニカ・マーズ (Veronica Mars)」の印象がいまだに強い。一方そういう、幼い、とか一途、純情、というレッテルを嫌う俳優、特に女優は多い。マイリー・サイラス、ヒラリー・ダフ等々、番組が終わった途端、露悪的になって行った例は後を絶たない。特にディズニー番組経験者にこの傾向が強いのは、なんとなくわかるような気がする。ベルが「ハウス・オブ・ライズ」に出たのも、同様の心境だったかもしれない。 

 

さて「グッド・プレイス」は、何かの手違いで、死んだ後、「グッド・プレイス」と呼ばれる死後の世界で目覚めた女性エレノアを描く話だ。しかしエレノアには死んだという記憶がない。この場所を主宰するマイケルによると、ちょっと酷い死に方をした者の場合、記憶を操作して消してしまうことがあるという。マイケルが言うにはエレノアは、スーパーマーケットで流れてきたショッピング・カートに押しつぶされそうになって、間一髪でそれは免れたがそのまま車道に押されて、走ってきた勃起不全用製薬のトラックに跳ねられて死んだそうだ。 

 

しかし何も心配することはない、とマイケルは言う。ここは選ばれたごく一部の者たちだけが住む世界だ。あんたは生前、世界中で困っている者たちを助けてきた善行が認められた。あんたが住む家は、大好きなピエロの絵やオブジェが満載だ。さらに一人ではなく、ソウルメイトもいる。しかし、その紹介されたソウルメイトのチディにエレノアは告白する。私は弁護士でもないし世界の貧窮している子供たちを援助したこともないし、ピエロなんか大っ嫌いだ。合っているのは名前だけで、何かのミスでここに来てしまった。 

 

驚いたチディはマイケルに相談しようとするが、エレノアは引き留める。今さら私はバッド・プレイスで苦しい目になんて遭いたくない。あんたは善人なんでしょ、私に手を貸してと詰め寄る。その夜のパーティでオードブルのエビを始めたらふく飲み食いしたエレノアが翌日、二日酔い状態で目覚めると、剝き身のエビが空を飛び、巨大化した昆虫やカエルが現れてグッド・プレイスを恐慌に陥れていた。チディはいち早く、これは本当はここにいるはずじゃないエレノアがこの世界に紛れ込んだための歪みが巻き起こした現象だと喝破するが、しかしさりとて、ではいったいどうすればいいのか‥‥ 

 

マイケルは、実はこの種の場所の管理者としてはまだ新米で、一人で一から作り上げたのはこのグッド・プレイスが初めてだ。おかげでエレノアのような手違いが起きる。そして実はこういう人違いはエレノアだけでなく、有徳の僧者ジェイソンも、間違ってグッド・プレイスに連れて来られたことが後日判明する。ジェイソンは無言の高僧などではなく、本当はマイアミのドラッグ・ディーラーだったと告白する。結構ミスだらけなのだ。いったいグッド・プレイスは、グッド・プレイスとして存続して行けるのだろうか。 

 

天使が登場したり、死後別人の身体を借りて復活したりするという作品は結構あるが、天上界そのものを描いた番組や映画となると、ほとんど記憶にない。たぶんすべてが円満で何ごとも瑕疵なく進んでいく世界では、ドラマの起こりようがないからだろう。実はそういう映画自体はあることはあり、毎年必ず数本はそういうクリスチャン相手の作品が公開されているが、私がまったく興味が持てないため、一度も見たことがない。 

 

しかしそういう作品は真面目な宗教映画と言っていいものであるため、コメディである「グッド・プレイス」とは別ものと考えていいだろう。そして真面目な天国映画が公開される一方、そういうのをおちゃらかす「グッド・プレイス」が放送されるのは、極めて健全な物ごとのあり方だと思う。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に当選し、世界中で極右や排他的民族主義が抬頭して来ている今、「グッド・プレイス」のような、世の常識に疑問を投げかけるようなコメディは、もっと出てきてもいい。 

 









< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system